米国本社IBMプレジデントを説得できた
英語学習法
【元日本IBM代表取締役会長 北城 恪太郎 様 インタビュー】
北城 恪太郎 様
- 1967年 3月 慶應義塾大学工学部管理工学科卒業
- 1967年 4月 日本アイ・ビー・エム入社
- 1972年 6月 カリフォルニア大学バークレー校大学院修士課程修了(コンピューター工学修士号取得)
- 1983年 7月 米国IBM Corporation会長補佐
- 1986年 3月 同 取締役
- 1988年 3月 同 常務取締役
- 1989年 3月 同 専務取締役
- 1991年 3月 同 取締役副社長
- 1993年 1月 同 代表取締役社長
- 1999年12月 IBM Asia Pacific(AP) President兼代表取締役会長
- 2007年 5月 同 最高顧問
- 2012年 5月 同 相談役
- 2017年 4月 同 名誉相談役
- 2004年 4月~2007年 5月 経済同友会代表幹事、旭硝子やオムロンの社外取締役、国家公務員倫理審査会委員を兼務
- 2010年 6月~2019年 5月 学校法人国際基督教大学理事長
- 2010年 6月 男女共同参画社会づくり功労者内閣総理大臣表彰受賞
- 2011年 2月~2015年 1月 文部科学省中央教育審議会委員
トライズが提唱している1年1,000時間の英語学習で本当に英語が話せるようになるのか疑問に思われる方や、1年間も英語学習を継続できるのか不安という方もいらっしゃると思います。
そこで、今回弊社トライオン株式会社の社外取締役でもあり、日本IBMの代表取締役社長、IBMアジア・パシフィック・プレジデント兼日本IBM代表取締役会長など輝かしい経歴をお持ちの北城様に、ご自身の英語学習法を振り返ってトライズの英語学習法についてどう思うのか、また、英語ができることでどのようなキャリアを歩むことが出来たのかなど、英語学習やビジネスでの英語の重要性についてインタビューさせていただきました。
この記事を読んで、実際に英語ができることでどれだけビジネスの幅を広げることができ、チャンスを掴むことができるのかご理解いただけると思います。英語が苦手だけれど英語を話せるようになりたいと思った方は、ぜひトライズの無料カウンセリングにお越し下さい。
年間1,000時間超の猛勉強
北城さんが英語の勉強に本腰を入れることになった、きっかけについて聞かせてください。
きっかけは恩師の一言でした。中学校を卒業したときのことです。尊敬していた担任の先生に「北城君は英語の成績が良くないね」と言われたんです。いま振り返ると、それほど悪くなかったと思うのですが、ほかの教科と比べると確かに良くはなかった。
先生の言葉に発奮し、高校3年間、必死で英語を勉強することにしたのです。
授業やクラブ活動の時間を除く、ほぼすべての時間を英語の勉強に費やしました。通常の授業はもとより、テレビやラジオの英会話講座を視聴したり、「グレン・ミラー物語」「渚にて」といった英語の映画を、字幕を見なくてもヒアリングできるようになるまで繰り返し見たり、カセットテープを使って聞き取りの学習をしたり、英会話学校に通いネイティブの先生の手ほどきを受けたりと、毎日4、5時間は勉強していましたね。
半年間も集中して勉強すれば、考えていることや思っていることを少しずつ話せるようになってきます。そうなると、ますます面白くなってきますから、さらに勉強に身が入る。その繰り返しでした。
高校卒業後も猛勉強を続けられたのでしょうか?
いやいや。大学は工学部に進学したのですが、専門分野の勉強が忙しく、英語の勉強はやめてしまいました。ただ、高校時代の勉強が無駄になったわけではありません。
大学卒業後に入社した日本IBMには当時留学制度があり、選考に応募したところ合格。カリフォルニア大学バークレー校で2年間、電気工学とコンピュータを勉強する機会を得ることができました。
また、その後、米国のIBM本社で仕事をするチャンスを獲得できたのも、高校時代の猛勉強の賜物と自負しています。米国で生活し、仕事をするなかで、教科書には載っていない日常表現やスラング(俗語)を学ぶことができたのは大きな収穫でした。
英語の学習が仕事で役に立ったことはありましたか?
仕事のために英語を勉強したわけではありませんが、キャリア形成には大いに役立ちました。
36歳で営業部門の管理職になったとき、最初に担当したのが大手都市銀行へのシステム提案の仕事だったのですが、この銀行は当時のIBMのグローバルな営業方針とは合わない施策を求めていたんです。
私は「われわれの方針を変えなければ、商談が成立しない」と判断し、日本IBMの上司や取締役に相談したのですが、「米国本社が決めたルールなので、日本IBMの一存では変えられない」と。
では、どうすれば変えられるのかと聞いたところ、「本社の事業部のプレジデントなら変えられるかもしれない」というので、私は日本IBMの社長の了解を取り、米国本社へ出張したんです。
幸いにもミーティングの結果、プレジデントを説得し、大手都市銀行との商談成立に漕ぎ着けることができました。この件をきっかけに、私は社内で認められ、多くのチャンスを与えてもらえるようになったのです。
日本IBMの社長や会長、IBMのアジア・パシフィック地域の責任者、さらには経済同友会の代表幹事を務めることができたのも、あのときプレジデントを説得できたからだと思っています。長年にわたって築き上げてきた英語力あってこそだということはいうまでもありません。
徹底的な準備と努力
英語力向上に向けたオススメの上達法について聞かせてください。
よく使われる文章を徹底的に覚え込むこと。あらゆる機会を積極的に活用し、勉強を続けること。この2点に尽きると思います。
ビジネスで使われる英語は、場面ごとにある程度パターンが決まっています。こうした表現を繰り返し復習し、頭に叩き込んでおけば、いざというときにも、単語を入れ替えることで対応できるようになるのです。
ポイントは、単語ではなく文章を覚えるという点にあります。私はいまでも「この表現は別の機会にも使えるな」という文章に出合うたびに、カードにメモを取って記憶するようにしています。
大切なのは、一にも二にも「継続」です。少なくとも半年は勉強を続けないと英語はうまくなりませんし、少し上達したからといって、そこで努力を怠ってしまったら意味がありません。また、長く勉強を続けていると必ずや伸び悩む時期があるのですが、そこで心が折れるようではいけない。
つまり、一定の成果が出るまで集中して、愚直に勉強を続ける。これが上達のいちばんの秘訣だと思います。
この点、「TORAIZ」のプログラムは、専属のコンサルタントやネイティブ講師のサポートを受けながら、1年間、英語学習を継続する仕組みになっています。非常に理に適っていると思います。
「あらゆる機会を積極的に活用する」とは、どのようなことでしょうか?
私が高校生のときにしていたように、さまざまな手段を活用して勉強を進めるということに加えて、あらゆる出来事をチャンスとして捉え、常に前向きに挑戦し続けようという姿勢を持つことです。
最近の事例を挙げてみましょうか。新型コロナウイルスの感染拡大とともに、多くの人々が外出自粛や休業を余儀なくされました。コロナ禍は歴史的な危機には違いありませんが、視点を変えれば、英語を集中して勉強する絶好のチャンスとして捉えられると思うのです。
緊急事態宣言中の経験を、コロナ禍が一段落し、人と接する機会が増えてきたときに、新たなキャリアを切り拓くチャンスとして活かすことが大切でしょう。
コミュニケーションの手段としての英語
ネイティブを相手に英語でコミュニケーションを取ることを苦手に感じている人は少なくありません。充実したコミュニケーションを取るには、何が必要でしょうか?
英語はあくまでもコミュニケーションの手段だということを、あらためて見つめ直す必要があると思います。
コミュニケーションは、①自らの考えや思いを相手に伝える、②伝えたい内容を相手が理解し、行動してくれる――という2つの条件が満たされることによってはじめて成り立ちます。
したがって、充実したコミュニケーションを行うためには、まずもって、自分が何を伝えたいのか、その内容を熟考し、明確なかたちでまとめておかねばなりません。
多少、文法が間違っていても構わないので、自分の考えや思いをメモにして、自分の言葉で話せるようにしておく。そのうえで自信と熱意を持って話をするのです。
それと同時に、相手が何を考え、何を期待しているのか。どのような状況に置かれているかをきめ細かに汲み取る力にも磨きを掛けておかねばなりません。文化について調べたり、歴史を紐解いたりと、相手のバックグラウンドを知るための努力も大切です。
どんなに英語が上達しても、一方的な働きかけに終始している限り、充実したコミュニケーションを取ることはできないということでしょうか?
おっしゃる通りです。特に企業の役員など、非常に忙しい人と話す時間はなかなか取れません。大切なのは、一瞬のチャンスを生かすために、常日頃から準備を重ねておくことです。
例えば、いま、自分がどのような課題に直面しており、いかなる解決策があるのか。期待される成果とリスクはどの程度か。こうした情報を凝縮し、30秒から1分程度で話す練習を繰り返し行っておく必要があります。
いわゆる“エレベータートーク”のスキルですね。これを英語で行うわけですから、入念な準備が求められるのはいうまでもありません。
日本人同士でのコミュニケーションとの違いに戸惑う人も少なくないといわれますね。
そうですね。正直な話、グローバルビジネスの現場では、どうしても好きになれない人と仕事をしなくてはいけないケースが少なくありません。忘れてはならないのは、こちらが好意を寄せなければ、相手もこちらを好きになってくれるはずがないということです。
相手の良いところを一生懸命見つけて、“好意を持っている”、“信頼している”という気持ちをきちんと表現する。そうこうするうちに少しずつ信頼関係が生まれ、仕事もスムーズに進められるようになるはずです。
また、英語でコミュニケーションを取っていると、相手の言わんとすることがよくわからないケースもありますね。こうしたケースでは、「もう一度言ってもらえますか?」といって聞き直したり、「あなたの英語が良く分からないので、ゆっくり話してください」と正直に伝えればいいと思います。
いずれにしても、わからないことは、「わからない」と素直に伝えることです。「こういうことを言いたいのかな?」といった推測をもとにコミュニケーションを続けていると、会話がズレていってしまいますから。
それから、日本企業の社員を見ていると、どうみても実現不可能な要望に対して、「やってみましょう」とか「挑戦してみます」と応える方がいますが、どんなに頑張っても結果を出せなければ信頼を失うきっかけになります。
できないことは正直に「できない」と応える。あるいは「ご要望の通りには実現できませんが、ここまでは努力してみましょう」と応える必要があります。グローバルビジネスでは、とにかく誠実であること、嘘をつかないことが重要なのです。
英語でのスピーチや会議への参加に苦手意識を持っている人も少なくないと思います。
スピーチに関しては、できる限り原稿を暗記して、何も見ずに話せるようにしておくことが大切です。下を向いて原稿を読んでいては、聴衆に熱意が伝わりません。
聴衆の記憶に残るのは、何を話したかよりも、どのように話したか。
よほど感動的なスピーチは別として、話の内容を事細かに覚えている人はそれほどいないでしょう。自信を持って、そして、熱意を込めて聴衆に語りかけることが何よりも重要なのです。
ネイティブが集まる会議で下手に発言すると、場違いな雰囲気をつくりだしてしまうのではないかという不安はよくわかります。
しかし、だからといって何も発言しないでいると、会議に全く貢献していないという評価を下されてしまいます。こうした評価を避けるためには、会議に参加するときは思い切って、いちばん初めに発言すると良いと思います。
最初の発言であれば場違いな感じになりませんし、むしろ議論の流れをつくることができるからです。
国内外を問わず、ビジネスの世界では“根回し”といいますか、公式の会議の前に人間関係を構築し、自分の考えや思いを伝え、一定の理解を得ておくことがきわめて重要ですね。人間関係を育むには何が求められるのでしょうか?
豊かな人間関係は、食事をしたり、お茶を飲んだりしながら、ざっくばらんに会話をするなかで育まれます。その際、必要になってくるのが「教養」です。
さらに受講生さまには皆さん、お忙しい中で学習時間を確保していただく必要があるので、やはり厳しさも大切だと思っています。
あれもこれもやってあげる精神ではなくて、学習を習慣づけることができるようにうまく導ける強さ。
そして、たまには心を鬼にするといいますか、叱ることも必要かと思います。そういった緩急をうまく付けられる方、メリハリのある方は活躍されています。
豊かな人生のためにも「挑戦」を
英語を学習して世界に挑戦したいと思っている日本のビジネスパーソンにメッセージをお願いします。
グローバル化の進展とともに、海外で仕事をしたり、外国人を地域に迎えたりする機会はますます増えていくでしょう。国際社会を生きていくうえで、英語というツールを使いこなして、自らの考えや意見を表現する能力がこれまで以上に重要になっていくのは間違いありません。
キャリアの可能性を広げるためにも、そして、豊かな人生を送るためにも、自らチャンスを見つけて積極的に勉強してほしい。
海外旅行をするにしても、現地の人々と自らコミュニケーションを取って、その国や地域の歴史や文化を学ぶことができれば、人生の大きな糧になりますからね。
やはり、あらゆる機会をチャンスとして捉え、自らの成長のために徹底的に活かし切ろうという姿勢が大切だということですね。
人生のなかでチャンスは誰にでも巡ってくるものですが、それをモノにできるか否かは徹底的な準備と努力にかかっています。
私が日本IBMの社長を務めていたときのスローガンでいえば「ATM(明るく・楽しく・前向きに)」。常にポジティブな気持ちで挑戦し続けてほしいと思います。
皆さんの「挑戦」に期待しています。