映画で英語を学ぶには?おすすめのタイトルと学習法について
好きな映画やお気に入りの映画は、何度見ても楽しめます。ですから、反復が重要な英語学習において、映画はとても優れた教材といえるでしょう。
ここでは、映画を使って英語力を伸ばしていくには、どのように作品を選べばいいのか。また、どのように勉強を進めていけばいいのかについてご紹介しましょう。
監修:TORAIZ語学研究所 所長 西牧健太
目次
英語学習に映画を使うメリット
英語学習に映画を使うメリットは、まず「リアルな英語が学べること」。そして、「楽しいので飽きずに長く続けられること」「1本の映画でよく使われる言葉の約8割を学べる」の3つが挙げられます。
リアルな英語が学べる
日本の英語教育で使われている教材は、そのほとんどが文法的なミスはありません。しかし、日本語での日常会話を考えればわかるように、実際に言葉を話すときには、言い間違えや言い直しもあり、文法的に完璧な英語ばかりではありません。そういう「リアルな英語」を学ぶために、映画は最適な素材なのです。
映画のスクリプト(台本)を見ると、「これは文法的におかしいのでは?」と思う箇所もありますが、そのような映画に出てくる言い回しこそ、実際にネイティブが使っているリアルな英語です。これに慣れなければ、TOEICのようなきれいな“教科書英語”はわかっても、生きたビジネス英語はわからないということになります。
また、日本の英語教育で使われている教材の音声は、プロのナレーターが吹き込んでいる、雑音のない「作られた英語」の音声です。
ナレーターがきれいに吹き込んだ英語と実際の英語では、音のつながり方にも違いがあります。
例えば、映画「プラダを着た悪魔」に「I tried to ask her」という一文が出てくるのですが、この短い文の中には、下記のような音の変化があります。
・「I」は、はっきり「ai」とは発音されず弱くなる
・「tried to」は子音同士がくっついて「d」の音が落ちる
・「to」には「tu」「tə」「tu:」といくつか発音があるが、ここでは「tə」
・「ask her」は子音同士がくっついて「h」の音が落ち、「アスカー」のように聞こえる
この変化を理解していないと、セリフを聞いても「I tried to ask her」のことだと認識できません。
つまり、映画を使った勉強は、この英文と実際に聞こえる音の紐付けを知るために最適なのです。紐付けされた知識がどんどん増えていけば、自分が読める英文に関しては、聞き取れるようになります。
楽しいので飽きない
英語を身につけるためには、英語の知識が自動化されるまで繰り返し復習する必要があります。
例えば、「Hello」と言われた時、多くの人は深く考えることなく意味を理解できるはずです。
これが脳の処理が自動化されている状態です。できるだけ多くの英語知識を復習によって自動化することが大切です。
その点、映画はストーリーがあっておもしろいので、楽しみながら飽きずに勉強できます。勉強が楽しければやる気になりますし、長続きしやすいので、これは見逃せないメリットです。
1本の映画でよく使われる言葉の約8割を学べる
映画は1本あたり2時間くらいあります。2時間の映画の内容をしっかり身に付けようとすると、1本学習するのに4ヶ月~6ヶ月ほどかかります。
次々に教材を探す必要がないので、負担が少なくて済みます。
また、実は1本の映画に、生の英会話でよく使われる言葉の約8割が登場するといわれています。
もちろん映画によって多少の違いはありますが、1本の映画の学習で、本当に必要とされている多くの英単語を学ぶことができるのです。
映画を使ったおすすめの学習法
映画を使った学習方法は、どんな力を伸ばすことに重点を置くかによって変わってきます。ここでは、リスニングの強化を重視する場合のやり方をご紹介します。
リスニングを強化したい場合の学習方法は、全部で5つのステップを順番にこなしていくのが基本です。
まず、映画を12~15分ごとに8~10くらいのチャプターに分けます。そして、チャプター1についてステップ1~5を実践。終わったらチャプター2についてまた1~5を実践、という風に進めます。
1つのチャプターを勉強する期間は、1日2時間×週6日勉強するとして、2週間が目安です。
ステップ1 準備運動
まずは準備運動として、スクリプトを見ずに一度音声を聞きます。意味がわからない部分があっても構いません。
ステップ2 マンブリング
スクリプトを見ずに音声を聞きながら、聞こえたとおりに小声でつぶやいてみます。「聞き取れた音を頭の中で再生し、その音が唇からもれ出ている」というイメージです。スクリプトを見ないで行うのは、音に集中することが目的で、このステップを行うことによって「聞き取れて意味がわかる部分」と「意味がわからず呪文のように聞こえる部分」が明確になります。
自分がどの部分が聞き取れないのかがあぶり出せたら、次のステップへと進みます。
ステップ3 スクリプトをチェック
スクリプトを見て、聞き取れなかった部分で何と言っていたのかをチェックします。わからない単語や表現があれば、解説を見たり辞書を引いたりして調べましょう。
1~3のステップを終えた段階で、音も意味もわかった状態になります。ここまで終われば、本格的にリスニングの訓練に移る準備完了です。
ステップ4 シンクロリーディング
スクリプトを見ながらシャドーイング(聞き取った英語を、すぐにそのまままねして復唱する)を行います。これを、シンクロリーディングといいます。
スクリプトを見たほうがシャドーイングはしやすいですが、あくまで補助的なもの。テキストの音読にならないように注意して、耳からの音をまねすることに集中しましょう。
スクリプトなしで、音声だけでシャドーイングができる場合は、このステップは飛ばしてかまいません。
ステップ5 シャドーイング
音声だけを聞きながら、シャドーイングを行います。
意味がわかっている内容を何度もシャドーイングすることで、文字(意味)と音を紐付けるのが狙いです。シャドーイングは結構難しいので、最初からうまくいくことはまずありません。何度も繰り返し行ってください。
映画1本を勉強し終えると、英語はどれぐらい上達するのか
先に紹介したリスニング強化方法で勉強すると、1本の映画を勉強し終える半年後には、別の映画を見ても「すべてわかるわけではないけれど、だいぶ聞き取れるようになった」と実感が持てるようになります。
特に、読んでわかる英文については、聞いてもわかるようになります。また、語彙や表現も多少増え、発音も少し良くなることが多いです。
英語学習におすすめの映画選びのポイント
映画を使った学習では、数ヵ月~半年は同じ映画を見続けることになるので、作品選びがとても重要になります。ここでは、作品選びのポイントをご紹介しましょう。
スクリプトを読んで内容が理解できること
スクリプトを読んでもわからないものは、いくらシャドーイングをしても意味と音の紐付けがうまくできません。そこで、作品の英語レベルとしては、スクリプトを読めば内容が理解できるものを選びましょう。
難しいと感じる場合は、もっとやさしい英語が使われている作品に替えるか、映画ではなく、もっと簡単なリスニング教材などから始めるのがおすすめです。
おもしろいと感じるもの
何回も繰り返し見ることになるので、自然に続きを見たくなるような、自分がおもしろいと感じる映画を選びましょう。ただし、いくらおもしろいと感じる作品でも、スラングで話していたり、なまりが強かったりするような作品は、避けたほうが無難です。
なお、作品のジャンルとしてアニメを選んでも問題ありません。ただ、作中の表現を一般の会話でそのまま使うことは難しいので、映画を通して使える表現を学びたい人には向きません。
学びたい内容に合致しているもの
映画を通して使える表現も学びたい場合は、学びたい内容に合致している作品を選びましょう。
例えば、ビジネスシーンで使える英語を学びたいならビジネスがテーマの映画、日常会話を学びたいなら日常生活が主体の映画などです。
なお、「頭の中の知識と実際の英語の音を紐付ける」という主目標だけに集中したいなら、特に内容にこだわる必要はありません。
解説や日本語訳がついたスクリプト本が発売されているもの
音と知識の紐付けを行うにはスクリプトが必要です。日本国内で発行されているスクリプト本には、解説や日本語訳がついていますので、学習教材としておすすめです。特に、わからない部分の意味を確認するのに役立ちます。
なお、書籍として発行されていなくても、ウェブなどでスクリプトだけは入手できる映画があります。和訳などがないので学習効率は悪いですが、気に入った映画などがあれば、こちらを選ぶ方法もあります。
英語学習におすすめの映画5選
最後に、英語学習におすすめの映画を、ジャンル別に5本ご紹介します。トライズの英語学習でもよく使う映画なので、参考にしてください。
なお、映画の再生はパソコンやDVDプレーヤーなどでも行えますが、ネットサービスやアプリを使うことも可能です。例えば、映画を使った英語学習に特化した「超字幕」といったアプリもありますので、使いやすいツールを選んでください。
プラダを着た悪魔(The Devil Wears Prada)
ビジネス英語を学びたい人は、これを選んでおけば間違いないというほど人気の作品が「プラダを着た悪魔」です。純粋に映画としておもしろいですし、実際のビジネスシーンで使われる表現がたくさん含まれています。主人公を演じる、アン・ハサウェイの話す英語も、発音・内容ともに、聞き取りやすいです。
なお、同じくアン・ハサウェイ主演の「マイ・インターン(The Intern)」も内容的には非常におすすめなのですが、スクリプトと日本語訳をまとめた本が出版されていないので、「プラダを着た悪魔」に比べれば少しハードルが高くなります。
サンキュー・スモーキング(Thank You for Smoking)
禁煙ブームに立ち向かうタバコ業界のPRマンが主人公の映画「サンキュー・スモーキング」。
交渉シーンが多く、スピーチもあるので、交渉する英語を学びたい人にぴったりです。おしゃれな言い回しなども学べます。
ザ・ファーム 法律事務所(The Firm)
「ザ・ファーム」は、タイトルどおり法律事務所が舞台なので、法律用語のやりとりを学ぶのに適しています。専門用語が多いので、上級者向けです。
アバウト・タイム~愛おしい時間について~(About Time)
「アバウト・タイム」は、イギリス発のSF恋愛映画です。SF映画と聞くと科学用語が多くありそうですが、主人公が過去にタイムトラベルするだけなので、おもに日常会話を学べます。
一文一文は短く、会話の切り替わりがとても多くなっていますので、相槌の打ち方などを含め、カジュアルな会話フレーズを学べます。
食べて、祈って、恋をして(Eat Pray Love)
「食べて、祈って、恋をして」は、タイトルそのままに世界を旅して、食べて、恋をするお話です。旅行などのトピックに興味がある人や、カジュアル表現を学びたい人に向いています。
映画を使ってリアルな英語に慣れよう
ご紹介したように、映画を使った英語学習は、楽しみながらリアルな英語に慣れることができます。
通常の学習よりもリラックスしてチャレンジできますので、ぜひ活用してみてください。
監修者 TORAIZ語学研究所 所長 西牧健太(にしまきけんた)
短期で英語を話せるようになりたい方に
おすすめのスクールは「トライズ」
トライズは、日本人コンサルタントとネイティブコーチが専属でサポートしてくれる、英語コーチングスクール。レッスンは週3回確保される上に受け放題。マンツーマンの面談やメールで日々サポートも受けられて、他のスクールとは一線を画す本格的なプログラムになっています。
「短期間でどうしても英語が話せるようになりたい」という方には、おすすめのスクールです。
受講生のインタビューもご紹介します。
トライズでの1年は、
一生につながる1年だったと思います。
プロキャディ杉澤伸章さん
インタビュー
Versant 29 → 40
目標:海外選手に英語でインタビューする。達 成
英語に関しては、1年前の僕と今の僕を比較すると、めちゃくちゃ成長しました。僕にとって情報源がものすごく増えたんです。 ゴルフ専門チャンネルで解説をしているのですが、そのときに現地の音声や解説者の声など英語でしゃべってくる音声が全て聞こえてきます。
それはテレビでは放送されていないのですが、映像だけでは入ってこない情報が耳から入ってくるので、それを聞きながらしゃべっています。 現地のリポーターや解説者は一番リアルな情報なので、それが耳に入ってくることによって、例えば解説でも「今、現地ではこういうことを言っていますね」ということが、スッと言えるようになりました。