三木雄信に聞く!あなたのナゼ?に答えます!

Q.031


20代 IT企業勤務

毎年「今年こそ英語を」と思うのに、達成できません

毎年、年初に今年こそ英語をマスターしようと思って学習を開始しますが、どうしても達成できません。どうしたら今年こそマスターできるでしょうか。

A.

結論:10年計画→年間目標→必要時間の算出→教材確保→本計画作成、この順序が成功のカギです

いきなり1年の計画を立てるから失敗します。
まず10年先のゴールを決め、そこから逆算して今年の目標を設定し、必要時間を明確にして計画を立てれば、今年こそ達成できます。
ほとんどのビジネスパーソンが同じ経験をしています。今年こそ英語をマスターしましょう。

いきなり1年計画はNG:まず10年計画を立てる
1年の計画を立てる前に大事なことがあります。まず10年ごとの人生計画を立てることです。
これはソフトバンクグループの孫正義会長から学んだことです。孫氏は19歳の時に人生の50年計画を立てました。これがソフトバンクと孫氏の成功の第一歩でした。

孫正義氏の50年計画:
・20代で業界に名乗りを上げる
・30代で軍資金をためる
・40代で一勝負して、大きな事業に打って出る
・50代でそれをある程度完成させる
・60代で次の経営陣にバトンタッチし、300年以上続く企業に仕上げる

20代から50代までの計画は全て達成しています。20代でソフトバンクを創業し、30代で株式公開、40代で通信事業参入、50代でiPhone独占販売で通信事業の地歩を固めました。現在は10兆円ファンドで計画を仕上げようとしています。
大事なのは、1年の計画を立てる前にさらに大きな方向感が必要ということです。

実例:10年計画で海外赴任を実現したNさん
IT企業で働くNさん(20代)は「30代で海外勤務しながら子育てをしたい」という10年計画を立てました。そのためのステップを的確に踏んでいます。

Nさんの実行ステップ:
1.20代半ばまで:自分の仕事で成果を上げることに集中
2.20代後半:ためた資金で国内大学のMBAを取得、結婚
3.その後:TOEIC L&Rスコアを取得し、海外担当部門に異動
4.現在:話すための英語を特訓中
5.来年度:海外赴任予定

人生計画をしっかり立てて非常にうまくいっている例です。
50年分は難しくても、10年先のゴールを決めておくことは非常に重要です。うまくステップを踏むために必要不可欠なのです。

年間計画の立て方:5つのステップ
10年計画に基づき、今年のゴールを具体的に設定し、1年の計画を立てます。重要なことは、そのゴールに到達するまでにかかる時間を明確にすることです。

ステップ①:ゴールと必要時間を把握する
ゴールに到達するまでに必要な時間は、様々な物事である程度決まっています。

例:ゴルフで120切り
・コースに出られるまで:3カ月程度
・120を切る:週1回の練習で1年が標準

例:資格取得
・公認会計士試験合格:3000時間
・宅地建物取引士試験合格:300時間程度

例:英語習得
・大学卒業後、ビジネスで使えるレベル:1000時間

資格スクールや語学スクールのサイトにある「短期間で合格・習得」事例は、まれなケースの可能性がありますので、気を付ける必要があります。 高校時代にインターハイ出場、大学入試模試の偏差値70超といった人でない限り、標準的な計画を立てるのが基本です。

ステップ②:1週間の学習時間を算出する
自分が学習のために投じられる時間を1週間単位で算出します。

例:
・平日毎日1時間+土日各5時間=週15時間
・宅建士(300時間必要)なら20週=約6カ月前から準備

これで仮計画としましょう。

ステップ③:教材一式をそろえる
ゴールまでの教材一式をそろえます(オンラインやスマホアプリでも可)。それぞれの教材について、どのくらい学習時間が必要かをざっくり見積もります。
数日間その教材を使って実際に学習してみましょう。自分が1日でこなせるだいたいの量が分かってきます。

ステップ④:本計画を作成する
仮計画が達成できるか確認します:
・時間が足りない→1週間の学習時間を増やす工夫が必要
・時間が余る→模試や練習問題を追加(より確実に達成)
教材ごとにかかる時間を割り出し、取り組む順番に並べて予定通りに終わるか確認します。このステップを踏んで本計画を作りましょう。

ステップ⑤:リアルタイムに見直す
計画をリアルタイムに見直しながら進めます。
・進捗が遅い場合:1週間の中で調整
・それでも追いつかない:教材を減らしたり計画自体を見直す
大事なことは、全体の計画を常に把握しておくことです。

成功する年間計画の全体像
1.10年先のゴールを決める 大きな方向感を持つ
2.今年のゴールを具体的に設定 10年計画から逆算
3.ゴール到達の必要時間を把握 標準的な時間で仮計画
4.1週間の学習時間を算出 現実的な時間配分
5.教材一式をそろえて試し学習 実際にかかる時間を測定
6.本計画を作成 教材ごとの時間と順番を明確化
7.リアルタイムに見直し 全体計画を把握しながら調整

まとめ:計画の質が成果を決める
多くの人が「今年こそ英語を」と思いながら達成できないのは、いきなり1年の計画を立てるからです。

成功のカギ:
・10年先のゴールから逆算する
・必要時間を現実的に見積もる
・試し学習で自分のペースを把握する
・全体計画を常に把握する

以上のことに注意して計画を立ててください。今年こそきっとしっかりした成果が上がります。応援しています。

Q.032


30代 ITコンサルタント勤務

どうすれば英語話者のような物腰やジェスチャーを身につけられますか

英語のリスニングやスピーキングはある程度できるようになったのですが、ビジネスの場面では自信が持てません。理由として、英語話者のような物腰やジェスチャーが身についていないからではないかと感じています。どうすれば自然に身につけられるでしょうか。

A.

結論:英語での会話において、姿勢や視線、ジェスチャーは極めて重要です。そのためには「全身シャドーイング」でネイティブスピーカーの非言語表現を徹底的にまねるのが効果的です。

英語での非言語表現が与える印象
非常に本質的なご質問ですね。英語を「話せる」だけでは、実際のビジネスシーンで相手に与える印象が十分とは限りません。学校教育や一般的な英会話スクールでは、文法や発音、語彙には重点が置かれますが、話す際の視線やジェスチャーといった非言語要素はほとんど扱われません。しかし、これこそが国際的な場で自信を持って振る舞えるかどうかを分ける要素なのです。

メラビアンの法則で見る影響の大きさ

メラビアンの法則 人が受け取る印象
その背景にあるのが「メラビアンの法則」です。心理学者アルバート・メラビアンの研究によれば、人が受け取る印象の55%は視覚情報(表情や視線)、38%は聴覚情報(声のトーンや速さ)によるもので、言語そのものはわずか7%に過ぎません。つまり英語を正しく話す以上に、姿勢や目線の使い方、表情のほうが相手の記憶に残るのです。

まず意識したい視線の使い方
具体的に重視すべきは「視線」です。日本では相手の目を見ることを控えるのが礼儀とされる場面も多いですが、英語圏では真逆です。視線を合わせないことは「興味がない」「自信がない」という印象につながります。会話の際はもちろん、握手をするときにも目をそらさず相手を見つめることが大切です。

全身シャドーイングで非言語表現を習得
次に実践方法ですが、私が推奨するのは「全身シャドーイング」です。通常の音声だけをまねるシャドーイングではなく、映画などの動画教材を使って登場人物の姿勢、視線、表情、声の抑揚やジェスチャーまで徹底的にコピーします。全身をまねることで、バラバラになりがちな非言語要素が自然に一体となり、説得力のある表現につながります。

ネイティブスピーカーと実践して磨く
さらに、ネイティブスピーカーと実際に会話する中で相手の反応を観察してください。表情やしぐさが自然であれば相手の受け止め方もポジティブに変わります。TORAIZでも、必要に応じて受講生に細かなジェスチャーや視線の指導を行っています。

「自信が持てない」は成長のサイン
最後に付け加えると、「自信が持てない」と感じているのは、すでにご自身の中にネイティブスピーカーの視点が芽生えている証拠でもあります。
つまり「何かが足りない」と気づいている時点で、正しい方向に進んでいるのです。視線やジェスチャーを意識して数カ月取り組めば、自然に振る舞えるようになり、英語での発信に確かな自信が持てるでしょう。

まとめ:
英語での自信を高めるには、言語能力だけでなく非言語表現の習得が不可欠です。映画などを活用した「全身シャドーイング」で姿勢や視線、ジェスチャーを身につけ、実践の中で磨き上げていきましょう。

Q.033


30代 メーカー勤務

シニアが英語を学ぶ意味はありますか?

60代となり、今後の人生について考えるうちに、英語を学ぶことが選択肢を広げるきっかけになるのではないかと思い始めています。シニアが英語学習をする意味はあるでしょうか?

A.

結論:シニアでも英語学習は十分意味があり、キャリアや趣味、認知症予防など多くのメリットがあります。

年齢に関係なく英語学習は有効です。学習効率は20代から60代までほぼ変わらず、70代でも差は大きくありません。つまり、何歳からでも学び始める価値があります。

英語を使ったキャリアの可能性
まず、シニアが英語を学ぶ大きな理由の一つは、キャリアの幅を広げることです。例えば、グローバル展開する企業の監査役や外資系ファンドの顧問として、英語力と豊富な経験を活かせます。海外ビジネスで必要なスキルとして英語は強力な武器となり、次のキャリア選択の可能性を広げます。

社会貢献やボランティアに活かす
英語学習は、社会貢献やボランティア活動にもつながります。国際協力機構(JICA)のシニア海外協力隊や、地方自治体での観光ガイドなど、経験を活かして海外や地域で活動することが可能です。また、将来的に海外移住を目指す場合も、英語力は生活の質を高める重要なスキルになります。

趣味や頭のトレーニングとしての学習
趣味や旅行を目的に英語を学ぶシニアもいます。英語を学ぶことで他の受講生との交流が生まれ、趣味を楽しみながら新しい人間関係を築くこともできます。さらに、脳への刺激として認知症予防にもつながることが科学的に示されています。

英語学習と認知症予防の科学的根拠
2013年に発表された米ケンタッキー大学のブライアン・ゴールド博士(神経学)の「生涯にわたるバイリンガルは、加齢時において認知制御のための神経効率を維持する」(https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3710134/)という論文をご紹介します。この論文では、110人の行動データから、バイリンガルであることが認知制御過程における加齢による神経効率の低下を相殺すると示唆しています。

また、2014年にベルギーのゲント大学のエビー・バウマンズらの研究チームが発表した「バイリンガルはアルツハイマー病の臨床症状を遅らせる」(https://users.ugent.be/~wduyck/articles/WoumansSantensSiebenVersijptStevensDuyckInPress.pdf)という論文では、バイリンガルはアルツハイマー病の症状発現を平均4.6年遅らせることが報告され、英語学習が脳の健康に寄与することがわかっています。

まとめ:
シニアにとって英語学習は、キャリアの可能性を広げる、社会貢献につなげる、趣味や旅行を楽しむ、さらには認知症予防に役立つなど、多くのメリットがあります。年齢に関係なく、学び始めることに遅すぎることはありません。人生100年時代、英語学習は人生の選択肢を増やす素晴らしい手段です。ぜひ挑戦してみてください。

Q.034


20代 メーカー勤務

海外事業部門で使える英語を学ぶには、インプット学習とアウトプット学習のどちらが大事ですか?

A.

結論:英語をビジネスで使うには、課題に沿った学習目標を明確にし、インプットとアウトプットの両方を組み合わせることが重要です。

インプット学習とアウトプット学習の両方が必要です。
ポイントは、自分が解決したい課題を明確にしたうえで学習することです。英語学習の科学的根拠として挙げられることが多い、第二言語習得理論の歴史的展開を追って説明していきます。

インプット仮説とアウトプット仮説
1970年代から80年代に米国の言語学者スティーヴン・クラッシェンが提唱した「インプット仮説」(https://www.sdkrashen.com/content/books/principles_and_practice.pdf)によれば、もし学習者が「i」というステージにいる場合、それより少しだけ難しい「i+1」に属する「理解可能なインプット」に接したときに第二言語の習得が行われるというものです。

しかし、1985年にカナダの応用言語学者メリル・スウェインが提唱した「アウトプット仮説」(https://utppublishing.com/doi/10.3138/cmlr.50.1.158)によれば、第二言語習得においてはインプットだけでは十分ではなく、アウトプットも必要であるとしています。学習者は言語情報のインプットのみでは完全な文法的能力を獲得することはできず、話し言葉のアウトプットが必要とする説です。

インタラクション仮説の重要性
最後にご紹介するのが米国の言語学者マイケル・H・ロングが提唱した「インタラクション仮説」です。この仮説は、1996年に公表した「The role of the linguistic environment in second language acquisition.」によって広く知られることになりました。クラッシェンのインプット仮説に加えて、話者の間でのインタラクション(意味の交渉)が大事であると主張しました。

このように第二言語習得理論には様々な説があります。いずれも「仮説」なのは、どの説が最も正しいかが証明されていないからです。ですから、どの説が正しいかの決着はついていないと私は理解しています。

インストラクショナル・デザインの観点

メリルの第一原理
次に学習全般を研究対象とした理論にまで範囲を広げて考えてみたいと思います。ここでご紹介したいのは、インストラクショナル・デザインをまとめた米国のM・デイビッド・メリルによる「メリルの第一原理」です。

(http://csapoer.pbworks.com/f/First+Principles+of+Instruction+(Merrill,+2002).pdfに、後年のメリルの論文によるアップデートを反映して三木作成)

インストラクショナル・デザインは、米国で普及している、学習を効率的にデザインするための方法論です。日本ではあまり知られていませんが、米国の公教育や企業研修では当然のアプローチ方法として広まっています。

インストラクショナル・デザイン理論を簡潔にまとめた「メリルの第一原理」では、課題志向(Task-oriented)が最も中心的な考えです。具体的には、「現実世界で起こりそうな問題の解決に学習者を引き込め」「研修コース・モジュールを修了するとどのような問題が解決できるようになるのか、どのような業務ができるようになるのかを示せ」といったことがポイントです。

具体的には以下の4点が求められます:

・活性化(Activation):
学習者がすでに知っている知識を動員する。「学習者の過去の関連する経験を思い起こさせよ」「新しく学ぶ知識の基礎になりそうな過去の経験から得た知識を思い出させ、関連づけ、記述させ、応用させるように仕向けよ」

・例示(Demonstration):
「新しく学ぶことを単に情報として『伝える』のではなく『例示』せよ」

・応用(Application):
「応用(練習)と事後テストをあらかじめ記述された学習目標と合致させよ」。学習者の問題解決を導くために、誤りを発見して修正したり、徐々に援助の手を少なくしたりすることを含めて、適切なフィードバックとコーチングを実施することが推奨される。

・統合(Integration):
現場で活用し、振り返る。「学習者が新しい知識やスキルをみんなの前でデモンストレーションする機会を与えよ」

インストラクショナル・デザインの観点から第二言語習得理論を見ると、インプット・アウトプットの双方について、「課題志向(Task-oriented)」が求められることになります。そして、インプットについては、「活性化(Activation)」と「例示(Demonstration)」が強調されていると読み解くことができます。また、「活性化(Activation)」は、クラッシェンの「i+1」の考え方と共通しているようにも思えます。

アウトプットについては、「応用(Application)」と「統合(Integration)」が対応していると言えるでしょう。指導者による適切なフィードバックとコーチングが求められる「応用(Application)」は、ロングによって提唱されたインタラクション仮説に通じるものがあります。

このように、インストラクショナル・デザインにおいては、インプットもアウトプットも重要とされており、その大前提として「課題志向(Task-oriented)」があることが分かります。

この前提が第二言語習得理論では欠けています。第二言語習得理論では、ゴールは「ある言語のネイティブ話者並みの習得」であり、その意味で課題ははっきりしています。ですから、そのゴールを前提としてインプットとアウトプットの重要性について議論してきたわけです。

ビジネス英語における実践的学習
語学習得をネイティブスピーカー並みのゴールとする第二言語習得理論とは異なり、ビジネスパーソンにとって英語はあくまで仕事のツールです。ですから、自分の業務課題を前提としたインプットとアウトプットの学習が重要です。TORAIZでは、学習時間の約9割がインプット、残り1割がアウトプットですが、このアウトプットが課題解決能力の定着に非常に重要です。

まとめ:
まず自分の課題を明確にすることが最優先です。そのうえで、インプット学習で知識を蓄え、アウトプットで実践し、適切なフィードバックを得ることで、仕事で使える英語力が確実に身につきます。

Q.035


40代 会計事務所勤務

アメリカ英語とイギリス英語、どちらを学ぶべきですか?

仕事で英語を使う機会が増えそうなので、英会話をしっかり学びたいと思っています。その際に「アメリカ英語」と「イギリス英語」のどちらを学ぶ方がよいか、選び方のポイントについて教えてください。

A.

結論:基本はアメリカ英語で学習し、必要に応じてイギリス英語のリスニングを補うことが最も効率的です。スピーキングは学習目的に合わせて柔軟に考えましょう。

学ぶ目的と使う相手によって選択します。業務で使うなら、まずはアメリカ英語でリスニングとスピーキングを固め、上司や取引先がイギリス英語話者ならリスニング教材を補う形が現実的です。

ポイント1:リスニングでは発音の差に注意
スピーキングは比較的問題ありませんが、リスニングではアメリカ英語とイギリス英語の発音差が大きく影響します。例えば、英国で学んだ経験のあるTORAIZコンサルタントは、帰国後アメリカ英語の発音に苦労し、半年間CNNを毎日聞いて慣れたと言います。リスニング教材は、実際に話す相手の英語に合わせることが重要です。

ポイント2:スピーキングはアメリカ英語で十分通用
アメリカ英語は映画や音楽を通じて世界中に広がっており、イギリス英語話者でも理解可能です。また、成人してから学ぶスピーキングは母語の影響を受けるため、こだわりすぎる必要はありません。学習効率や実用性を考えれば、アメリカ英語で十分です。

ポイント3:学習目的を最優先に
業務で英語を使う場合、会計業務や交渉など実務に直結する学習が最優先です。たとえイギリス英語の講師が理想でも、業務内容に沿ったレッスンが可能な講師を優先した方が、結果として英語力の実践活用につながります。

まとめ:効率的な英語学習の選び方
結論として、アメリカ英語を基礎に、リスニングで必要に応じてイギリス英語を補完する形が現実的です。スピーキングは学習目的に沿って柔軟に対応し、教材や講師の選択も目的優先で考えましょう。これにより、時間とコストを効率的に使いながら、実務で通用する英語力を身につけることができます。

Q.036


30代 メーカー勤務

海外ゲストが参加する会議をスムーズに進めるには?

英語を話す外国人も参加する会議の進め方に悩んでいます。特にビジネスの関係づくりの最初の段階で、海外からのゲストの紹介も兼ねて役員や幹部も入る会議を設定すると、ゲストから「このミーティングでよかったのか?」と不安がられることが多く、どのように会議を進めれば相手とよいスタートを切れるでしょうか?

A.

結論:海外ゲストが参加する会議では、テーマを明確に設定し、「相手にとって価値ある情報=手土産」を提示することで、スムーズなスタートを切ることができます。

外国人も参加する会議の運営は、英語力だけでなく、コミュニケーションスタイルや文化の違いを意識することが重要です。テーマのない顔合わせや挨拶だけのミーティングでは、海外ゲストは不安を感じることがあります。

日本式と海外式の違い
日本企業では顔合わせ自体に意味を置く文化がありますが、海外ゲストは次のステップが不明確だと戸惑います。米国企業や欧州企業でも進め方はさまざまで、欧州は社内検討を重視する傾向がありますが、初顔合わせは必要です。重要なのは、ゲストに不安を与えない「意味のあるミーティング」にすることです。

「手土産」を用意する
孫正義式会議術では、最初の5分でゲストが喜ぶ情報や視点を提供することを推奨しています。これは文字通りの土産ではなく、相手の課題や戦略を把握した上で「自社だけが提供できる価値」を示すことです。これにより、ゲストは他社との違いを理解し、関心を持って参加してくれます。

ネクストステップを明確に
役員が挨拶する場合でも、会議後の実務をプロジェクト化し、次のステップや期限を明確にすることが重要です。口頭での合意でも構いません。「5月までに契約ドラフトをまとめる」など具体的に示すことで、ゲストも成果を理解し、疑心暗鬼にならずに進められます。

日本企業の競争力を意識する
近年、海外の企業がビジネス拠点やビジネスパートナーとしての日本を素通りする傾向があります。背景には日本経済が停滞していることもあると思いますが、日本企業とのコミュニケーションはつかみどころがなく、時間がかかると感じていることも一因だと思います。意味のある会議運営と手土産提示で、この遅れを防ぎ、海外パートナーとの信頼関係を築くことができます。

まとめ:
海外ゲストが参加する会議では、テーマを明確にし、手土産を提示し、ネクストステップを合意することで、スムーズかつ有意義なスタートを切ることができます。ぜひ日本式と米国式を折衷した孫正義式の考え方を活用して、海外企業とのビジネスを円滑に進めてください。

Q.037


30代 主婦

子供をインターナショナルスクールに通わせたいのですが、親の英語力はどのくらい必要でしょうか?

外国籍のパートナーが英語のネイティブ話者のため、子供は英語が話せます。しかし、私自身は英語力にそれほど自信がありません。パートナーの意向で子供はインターナショナルスクールに通わせたいのですが、入学のためのインタビューや入学後の学校行事への参加の際、親として英語力はどのくらい必要なものでしょうか。また、どのように準備をしたらよいでしょうか。

A.

結論:インターナショナルスクールの保護者として必要な英語力は、事前準備や日常的な対応ができるレベル。入学インタビューは心配不要ですが、学校行事や面談参加のためにCEFR B1相当の英語力があると安心です。

入学インタビューは、基本的にネイティブのパートナーが同席して回答できる場合が多く、比較的定型的な質問が中心なので準備すれば心配は少ないでしょう。

学校行事での英語力
問題は、イベントや学校行事への参加です。インターナショナルスクールでは、イースターやハロウィーン、クリスマスに加え、セント・パトリック・デーや独立記念日など多様な行事があります。ほとんどの学校が保護者参加を奨励しており、日常的に子どもと関わる役割を担うこともあります。保護者が自分の職業や趣味を紹介したり、PTA活動や委員会に参加することもあります。

三者面談や保護者交流への対応
三者面談や問題発生時の対応、保護者同士のランチ会など、幅広い場面で英語の意思疎通が求められます。これらの場面で、英語のネイティブ話者のパートナーが多忙で参加できないことも想定されるため、最低限の意思を簡潔に伝え、さまざまな話題を聞き取れる英語力が必要です。目安は、CEFR B1レベルです。

学習の進め方
現在の英語力にもよりますが、英語のネイティブ話者がパートナーということですから、それなりの英語力があるとすれば、半年から1年の学習で、日常生活や学校関連の英語に対応できるレベルに達することは可能です。教材は育児や教育に関連した英語のテキストを選び、シャドーイングや実践的なスピーキングを組み合わせます。他の受講生の例では、1歳の子供に対して積極的に英語のフレーズで話しかけることによって、単語の理解を深め、さらに発話までつなげることができた実績もあります。パートナーや周囲の英語話者と会話を増やし、アウトプット量を確保することも重要です。

バイリンガル教育の検討
お子さんを英語と日本語のバイリンガルに育てようと思われている場合は、家の中で使う言語を英語だけに統一するのかという問題も出てきます。言語環境を英語で統一すると、おそらくお子さんは英語のネイティブ話者に育つでしょう。その点はお子さんの進学先や将来設計を考えてパートナーの方と相談することが重要です。

まとめ:
インターナショナルスクールの保護者として活動することで、自身の英語力向上にもつながります。準備を重ね、学校行事や面談に積極的に参加することで、子どもと共に成長できる良い機会になるでしょう。

Q.038


20代 IT企業勤務

一般的な日本人のビジネスパーソンが英語で仕事をできるようになるまで1000時間必要と言いますが、短期で話せるとうたうスクールもあります

TORAIZでは一般的な日本人のビジネスパーソンが英語で仕事をできるようになるまで1000時間かかると説明されていますが、もっと短期で英語が話せるようになるとうたうスクールも存在しています。英語を話せるまでの学習時間について、日本人を対象とした科学的な研究はないのでしょうか。

A.

結論:日本人の英語習得に必要な時間に関して科学的エビデンスがある研究は、ほぼ存在しません

1000時間という数字の根拠
TORAIZでは、一般的な日本人のビジネスパーソンが英語で仕事ができるようになるまで1000時間かかると説明しています。これはTORAIZ語学研究所による統計的に有意な数の受講者の実績から導き出した結果ですから、十分科学的と言えるものです。

一方で「科学的な英語学習を行えば3カ月で英語が話せる!?」といった広告を出している英語スクールがあるのも事実です。「科学的」がマジックワードとなり、かえって「非科学的」もしくは「エセ科学的」な学習がまん延する原因の1つになっています。

驚くべき事実:科学的研究がほとんど存在しない
「科学的」の論拠がどこにあるのかと疑問に思われるのは当然です。
驚かれるかもしれませんが、統計的に有意な数の日本人の英語学習者を集めた、英語マスターまでに必要な学習時間についての研究は、TORAIZ語学研究所のもの以外は、私が確認した限り存在していません。つまり、日本人の英語学習に必要な学習時間に関しては「科学的エビデンス」がある研究はほとんどないのが実情です。

義務教育の一部として日本人の多くが1000時間単位で学習し、国にとっても個人にとっても大きな課題となっている英語学習について「科学的エビデンス」がないということは、本当におかしいと思います。

ただ、統計的に有意な数の同じレベルの学習者を集めて、学習方法と学習時間を長期間にわたってモニタリングすることは非常に難しいため、研究が進んでいないという面があります。今回はこうした背景について説明していきます。

「科学的なエビデンス」にはレベルがある
「科学的なエビデンス」という言葉は、「科学的な根拠」程度の意味でよく聞くようになりました。しかし、正確に理解されている人は少ないと思います。
エビデンスレベルとは、特に医学の分野で強調されている概念で、一言で言えば、科学的なエビデンスには「強い」エビデンスと「弱い」エビデンスがあるということです。

「弱い」エビデンスの例: テレビで見るような専門家の個人的な意見
ほどほどに「強い」エビデンスの例: コホート研究

コホート研究とは以下のようなものです:
「調査時点で、仮説として考えられる要因を持つ集団(曝露群)と持たない集団(非曝露群)を追跡し、両群の疾病の罹患率または死亡率を比較する方法」(出所:一般社団法人日本疫学会 https://jeaweb.jp/glossary/glossary006.html

身近な例:
・ワクチンを打った群と打たなかった群を追跡調査し、死亡率や重症化率を分析
・小学生の朝顔実験:銀紙を貼った葉っぱと貼らない葉っぱで光合成を比較

科学的エビデンスは「強い」「弱い」があり、6つのレベルに分かれています。 日本人の英語習得に関する分野では、ほとんどが「弱い」エビデンス止まりなのです。

実際に論文を検索してみる
日本語で書かれた論文のデータベース「CiNii」https://cir.nii.ac.jp/(利用登録なしで誰でも検索可能)で「英語 学習 時間」と検索してみましょう。

しかし、このリストを見ると、「日本人が英語をマスターするために必要な時間を明らかにする」ことをテーマとした科学的な研究は皆無に等しいことが分かります。

唯一テーマとしている論文は 「日本人の英語学習時間について:これまでの学習時間とこれから求められる学習時間」(徳島大学国際センター紀要・年報 坂田浩、福田スティーブ)https://cir.nii.ac.jp/crid/1050867133851431936 のみです。ただし、残念ながら、この論文も実際の英語学習者を対象にした研究ではなく、先行するFSI(米国の公的な外国語研修施設)の研究とCEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)から推測を行うというものです。

英語スクールの「科学的」を疑え
「日本人が英語をマスターするために必要な時間」というテーマについて「強い」科学的エビデンスを持った研究はほとんどありません。
英語スクールが言う「科学的」とは、どのようなエビデンスレベルかをよく考える必要があります。
英語スクールによっては、入会前は「科学的」に聞こえる説明をしているものの、実際には「強い」エビデンスがない学習方法を、入会後に漫然と指導しているケースもあります。

賢い英語スクールの選び方
1.科学的なエビデンスレベルの概念を理解する 「強い」エビデンスと「弱い」エビデンスの違いを知る
2.CiNiiで第二言語習得論に関する論文を読む 実際の研究内容を自分で確認する
3.スクールの主張する「科学的」の根拠を確認する どのレベルのエビデンスに基づいているのか質問する
4.統計的に有意な数の実績データがあるか確認する 個人の成功例ではなく、多数のデータに基づいているか

まとめ:「科学的な英語学習を行えば3カ月で英語が話せる!?」の真実
・日本人の英語習得時間について「強い」科学的エビデンスを持つ研究はほとんど存在しない
・多くのスクールの「科学的」は「弱い」エビデンスに基づいている可能性が高い
・統計的に有意な数の実績データに基づく1000時間という数字の方が信頼できる
・エビデンスレベルを理解し、自分で論文を確認することが賢い選択につながる

「科学的」という言葉に惑わされず、その根拠をしっかり確認しましょう。

Q.039


20代 メーカー勤務

独学で安価に英語力を付けたいです。留意点は何ですか?

希望していた英語を使う部署に異動となりました。より英語力に磨きをかけたいのですが、可能な限り独学でお金をかけずに学びたいと思います。独学で安価に英語を学ぶ場合の留意点があれば教えてください。また、独学では難しいと思ったときのスクール選びについても教えてください。

A.

結論:実務のゴールに合った教材を選べば、独学で英語力は身につきます

まずは希望部署への異動、おめでとうございます。
独学で安価に英語力を身につけることはできます。最も重要なのは、自分の英語学習のゴールを明確にし、実務に直結する教材を選ぶことです。

大人の英語学習で大事なことは1つだけ
自分の英語学習のゴールを明確にすることです。
これは社会人が何かを学ぶ際に最も重要なことです。社会人経験が増すほど、単純に暗記するのではなく、自分自身にとっての重要性や過去の知識・経験とのひも付けが、新しく何かを学ぶ際のかぎ(フック)となるからです。

ビジネスパーソンは、自分の仕事に関係がある言葉であれば、外来語であってもすぐに覚えることができるはずです。例えば、学生時代には覚えていなかった「サプライチェーン」という単語を、会社に入ってから努力することなく自然と覚えた人も多いのではないでしょうか。

効率的な学習の科学:メリルの第一原理
これらは、効率的な学習・研修を追求するインストラクショナルデザインの分野で、「メリルの第一原理」としてまとめられています。

メリルの第一原理
メリルの第一原理とは:インストラクショナルデザインの世界的権威であるユタ州立大学のM・デイビッド・メリル教授が、過去の研究を集大成して提唱したものです。

優れた学習・研修デザインは、以下の5つの要素を備えるべきだとされています:
①課題志向:学ぶコンテンツを、学習者が実際に直面している、または直面する可能性の高い課題の解決に役立つものから逆算して設定する
②活性化:過去の自分自身の知識や経験を活用し、学びとひも付ける
③例示:学習したことが活用されている具体的な事例を示す
④応用:学んだことを使ってみてフィードバックを受けながらさらに理解・活用していく
⑤統合:学んだことを実務で使い、深く広く定着させていく

学習と実務が一体となるサイクル
「メリルの第一原理」の特徴は、学習と実務が一体のものとしてサイクルになっている点です。
・学ぶコンテンツ自体が実務の課題から定義されている
・学ぶプロセスでも実務とひも付けながら事例ベースで学ぶ
・学習した後も学習したことを実務で使いながら身につけていく

つまり、効率的に学びたいなら、学習するコンテンツは自分自身の実務から離れて存在してはいけないのです。

なぜ学校や英会話スクールで効果を感じにくいのか
学校教育でも英会話スクールでも、そこまで細かく学習コンテンツを細分化することはできません。マンツーマンの英会話スクールでもスクール指定の教材を使います。
そのため、効果を感じることができずに長続きしないのです。

独学の素晴らしい点:実務に合った教材を選べる
独学であれば、自分自身の実務に合った教材を選ぶことが可能です。これが独学の最大の強みです。

例えばAmazonで「英会話」と入力して検索すると2万以上の結果が表示されますが、さらに細かく「英会話 ファシリテーション」、「英会話 医師」、「英会話 品質管理」などのキーワードを追加して絞っていくことができます。このように、自分のゴールに近い教材はすでに存在しています。これを使えばよいのです。

文法・単語の追加学習は不要
おそらくあなただけでなく、多くのビジネスパーソンは中学英語レベルの文法と単語をマスターしていると思います。その場合には、文法や単語を追加で覚える必要はありません。実務で必要な文法や単語は、実務に即した教材であればいや応なく出てくるので、効率的に学び活用できるようになるはずです。

このような教材を使ってシャドーイングやフレーズ暗記を行えば、おのずと継続でき結果も出てきます。あなたのように英語を使う環境があれば、英会話教室に行く必要もないかもしれません。

いつスクールを検討すべきか
独学ではアウトプットが足りないと思う場合は、やはり英会話をする必要があります。なぜならば「メリルの第一原理」で学んだように、得た知識を具体的に使ってフィードバックを受けることも重要だからです。

スクール選びの留意点
自分が選んだ教材を持ち込むことができて、その教材を使ってレッスンをしてくれる英会話教室やオンラインの講師を探してみてください。
スクール指定の教材ではなく、あなたの実務に直結する教材でレッスンができるかどうかが、重要な選択基準です。

まとめ:独学成功の3ステップ
1.英語学習のゴールを明確にする 実務での具体的な使用場面を想定
2.実務に直結する教材を選ぶ Amazonなどで専門分野に特化した教材を検索
3.シャドーイングとフレーズ暗記を継続 実務で使いながら定着させる

そのうえで、アウトプットが必要なら自分の教材を使えるスクールや講師を選びましょう。独学で安価に英語力を身につけることは十分可能です。実務と学習を一体化させることが、最も効率的で効果的な方法なのです。

Q.040


20代 IT企業勤務

英語力だけではないはず。グローバル人材の条件とは?

「グローバルに活躍できる人材」とは、英語力があるだけではないと思います。「グローバルに活躍できる人材」になるにはどうすればよいでしょうか?

A.

結論:ビジネス力が大前提。英語力は必要条件であって十分条件ではありません

「ビジネス力×英語力」です。英語力はあるほうがより良いですが、「英語力だけ」では意味がありません。基本的に国内であっても海外であっても、活躍するためにはビジネス力が大前提だからです。

孫正義氏に学ぶビジネス力の重要性
「グローバルに活躍できる人材」としてまず挙げるのは、ソフトバンクグループ創業者の孫正義氏です。

孫氏の英語力:
・発音はカタカナ英語
・文法は中学レベル
・単語も中学レベル+IT業界の外来語化した専門用語
※参考:バルセロナで行われた孫正義氏による2017 Mobile World Congressのオープニングスピーチ https://www.youtube.com/watch?v=jIEfPlvnLFw

正直、英語は決して上手とは言えません。しかし、この英語でスティーブ・ジョブズ氏を説得し、日本でのiPhone独占販売の権利を得たのです。「グローバルに活躍できる人材」としては最高レベルであることは間違いないでしょう。孫氏の場合、ビジネス力が圧倒的に高いレベルにあるから、英語力がそれほど高くなくても大成功しているわけです。

WHO強化版グローバルコンピテンシーモデル
「孫氏のようなビジネス力があれば」では回答にならないので、英語力以外の「グローバルに活躍できる人材」の要件を明示している組織の例を見てみましょう。
世界保健機関(WHO)の強化版グローバルコンピテンシーモデルです。
※出所:WHO( https://cdn.who.int/media/docs/default-source/who-careers/who-enhanced-competence.pdf?sfvrsn=aae66472_3&download=true

WHOのコンピテンシー定義:
「コンピテンシーは、異なる職種で求められる行動を定義するための共通言語を提供する。強化版グローバルコンピテンシーモデルは、人事戦略とその主要な構成要素に組み込まれている。各コンピテンシーには、特定の職務レベルや等級において組織がスタッフに求める一連の行動指標が含まれている」

4つの分野
1. 必須となる分野
・技術的専門性
・仕事に対する姿勢
・チームワーク
・個人と文化の違いの尊重と促進
・コミュニケーション
・やる気を起こさせる環境づくり

2. 中核となる分野
・自分を知る・管理する
・結果を出す
・変化する環境の中で前進する
・模範を示す

3. マネジメントレベル
・資源の有効活用の徹底
・組織内外のパートナーシップの構築と推進

4. リーダーシップ
・組織を成功の未来へ導く
・イノベーションと組織学習の推進
・ヘルス・リーダーシップにおける組織の地位の向上

英語力はどこに?コミュニケーションの定義
英語力に関係がありそうなのは「コミュニケーション」です。詳しくは次のように定義されています:
1.他者との会話や交流の中で、自分の意見を明確に表現することができる
2.積極的に人の話を聞くことができる
3.効果的な文章を書くことができる
4.情報の共有化を図ることができる

特に言語の指定はされておらず、コミュニケーションとして「できる」ことのリストとして並んでいるだけです。つまり、WHOの強化版グローバルコンピテンシーモデルにおいて、英語力というものが規定されているわけではありません。また、コミュニケーションがコンピテンシーに占める割合は一部にすぎません。ほとんどはビジネス力に関するものなのです。

日本企業の定義:日立製作所の例
日立製作所のコンピテンシー:
・安全と誠実
・チャレンジ(開拓者精神)
・カスタマー・フォーカス(誠)
・コラボレーション(和)
・成長
※出所:日立製作所HP (https://www.hitachi.co.jp/sustainability/download/pdf/ja_sustainability2023_20.pdf

ここでも直接的に英語力については触れられていません。孫正義氏、WHO、日立製作所が示しているコンピテンシーの条件を見れば明確です。ある程度の英語力は必要条件ではあるが、十分条件ではありません。十分条件はビジネス力なのです。

企業はどうグローバル人材を育成するのか
日立製作所の事例にある通り、企業はグローバル人材となる対象者を選別して育成しています。これはグローバル・タレント・マネジメント・システムとして、多くの日系グローバル企業ですでに始まっています。

第1次選抜(30代前半)の基準:
・過去のパフォーマンス
・現時点でのコンピテンシーレベル
・将来の伸びしろ(ポテンシャル)

選抜後の育成:
・難易度の高い案件を担当するストレッチアサインメント(OJT)
・さまざまな研修(多くは英語で実施)
・40代で海外での責任あるポジションへ
・本社の幹部を目指す

現在では、多くの企業のグローバル・タレント・マネジメント・システムで、コンピテンシーが世界共有もしくは互換性のあるものとなってきています。今から10年ほどすると、日本でも「グローバルに活躍できる人材」は特別な人材ではなく、企業の経営者や幹部として活躍できる人材と同義になっていくでしょう。

あなたがすべきこと:20代での英語力確保
まずは現在の担当業務を頑張って実績を上げましょう。英語については、20代のうちに会社とは別に自力でCEFR B1レベルを突破するのがよいと思います。その後、ビジネスパーソンとして実力をつけ、社内で選抜されるように頑張ってください。

まとめ:グローバル人材の方程式
ビジネス力×英語力=グローバルに活躍できる人材
・ビジネス力:十分条件(コンピテンシーの大部分)
・英語力:必要条件(コンピテンシーの一部)

実践ステップ:
1.20代で英語力を確保(CEFR B1レベル)
2.担当業務で実績を上げる
3.ビジネスパーソンとして実力をつける
4.社内選抜を目指す
5.グローバル・タレント・マネジメント・システムで育成される

英語力だけではない、真のグローバル人材を目指しましょう。応援しています。