三木雄信に聞く!あなたのナゼ?に答えます!

Q.051


20代 イベント企画会社勤務

中学レベルの英語もおぼつかない超初心者でも英語を話せるようになりますか?

私は音楽活動を中心に行ってきて、その後は裏方の仕事に回りました。中学レベルの英語もおぼつかない超初心者です。タレントの海外公演などは、英語堪能な担当者が交渉してくれるので問題ありませんが、私が参加するWeb会議が増えてきて、少しでも自分で話せるようになりたいと感じる場面が増えています。私のような初心者でも英語を話せるようになるでしょうか?また、どのくらいの期間が必要でしょうか?

A.

結論:毎日3時間の学習で、約1年半で英語で会話できるようになります

個人差はありますが、毎日3時間学習すれば1年半ほどでWeb会議で用件を伝えられるレベルに到達できます。この根拠は、TORAIZでサポートしてきた日本代表クラスのサッカー選手の実績にあります。

実績の背景
サッカー選手は子供の頃からサッカー中心の生活を送り、英語学習は後回しになりがちです。しかし、現在はヨーロッパのクラブに移籍する選手が増え、チームの戦術理解やコミュニケーションのために英語力が不可欠です。多国籍なメンバーが集まるチームでは英語で意見を交換する場面が多く、ここでTORAIZの学習プログラムが活かされます。

中山雄太選手 菅原由勢選手
TORAIZ修了生には、日本代表や海外クラブ経験者の中山雄太選手や菅原由勢選手などがいます。彼らは中学英語からスタートし、VERSANTスピーキングテストで47点前後を達成。47点前後のスピーキング力があれば、ビジネスパーソンとしても海外事業部門での活躍が期待できます。さすが一流のアスリートは、自分を律してきちんとトレーニングをされるので、英語でも実績が出るのだと感じます。

英語習得の2段階プロセス
1. 中学英語の復習(3~6カ月)
初心者の場合、まず中学レベルの文法と語彙の復習が必要です。
・中学英語をしっかり理解せずに英会話学習を始めると、成長が途中で止まることがあります。
・文法と語彙の基礎がなければ、意味は聞き取れても正しい文章で話すことができず、VERSANTスコアは40点前後で伸び悩みます。

おすすめ教材:

・『中学英語をもう一度ひとつひとつわかりやすく。』(山田暢彦監修)
ある程度覚えている場合は3カ月、全く忘れている場合でも6カ月でマスター可能です。

2. 基本単語の習得
・TOEICや日常会話で使う基本単語3000語を覚えるだけで、英語の95~97%はカバー可能です。
・難しい単語は実務で出てきた時に覚えるのが効率的です。

1000時間学習で実践的な会話力を習得
中学英語の基礎と基本単語を押さえたら、毎日3時間の学習を1年で約1000時間行うことで、仕事で必要なレベルの英語力が身につきます。
・目標:CEFR B1レベルの英語スコア
・方法:リスニング・スピーキング・シャドーイング・音読・実践練習の組み合わせ
この学習プロセスは、サッカー選手をはじめ多くの初心者が実践し、成果を出している実績があります。

まとめ:
1.中学英語の文法と語彙の復習:3~6カ月
2.基本単語3000語の習得
3.毎日3時間の学習で1000時間を達成:約1年で会話力向上
4.実践で繰り返す:Web会議やシャドーイングで習得

初心者でもこの方法で取り組めば、約1年半で仕事に支障がない英語力を身につけることが可能です。今の自信のなさに諦めず、ぜひ挑戦してください。応援しています。

Q.052


20代 メーカー勤務

TOEFLとIELTS、どちらを受験すべきか悩んでいます

海外部門勤務を目指して英語学習をしています。また、今後海外への留学も目標としています。そのため、TOEFL iBTで留学に必要なスコアを取りたいと思っていましたが、最近はIELTSというテストもあるようです。どちらを受験すべきか悩んでいます。この2つのテストの違いと、どちらを選ぶべきかを教えてください。

A.

結論:日本人にはIELTSが有利。発音の許容度、対面試験、語彙の傾向で優位性あり

個人差はありますが、毎日3時間学習すれば1年半ほどでWeb会議で用件を伝えられるレベルに到達できます。この根拠は、TORAIZでサポートしてきた日本代表クラスのサッカー選手の実績にあります。

留学志望先が両方のスコアを採用している場合、IELTSのほうが日本人にとって有利な点が多いです。ただし、一部の試験形式については個人の適性によります。

急増するIELTS受験者
この数年、IELTS受験希望者が確実に増えています。現在、全世界で年間300万人以上が受験しており、日本でも急増中です。TOEFLの年間受験者数は非公表ですが、おそらく現在ではIELTSの受験者数がTOEFLを上回っているといわれています。

2つのテストの基本情報
TOEFL(Test of English as a Foreign Language)
・開発:米国ETS
・目的:英語で学ぶ力を測定
・主な認定地域:北米を中心とした大学・大学院
・満点:120点
・全セクション:コンピューター受験

IELTS(International English Language Testing System)
・開発:英国ケンブリッジ大学英語検定機構、ブリティッシュ・カウンシル
・目的:英語運用能力を評価
・主な認定地域:英国、オーストラリア、カナダ、ニュージーランド、米国約3000機関
・満点:9.0(バンドスコア)
・2つのモジュール:アカデミック(留学用)、ジェネラル・トレーニング

共通点:リーディング、ライティング、リスニング、スピーキングの4技能を測定。

米国のほとんどの大学がIELTSを認定しており、スコア活用可能な国や地域はほぼ共通しています。ただし、志望大学がどちらかのテストしか認定していない可能性もあるため、事前確認が必要です。

IELTSが日本人に有利な4つの理由
① 発音の許容度が高い
例:米ハーバード・ビジネス・スクールの要求スコア
・TOEFL:109点以上
・IELTS:7.5点以上
TOEFLで109点を獲得するには、スピーキングセクション(30点満点)で27点前後が必要です。これには発音をネイティブにかなり近いレベルまで矯正する必要があり、成人してからの発音矯正は非常に困難です。
IELTSでも発音は重要ですが、TOEFLと比較するとある程度の訛りが許容され、失点が少ないようです。これは英連邦の国や地域による異なる訛りを許容する前提で作られた試験であることが関係しているかもしれません。

② スピーキング形式の違い
TOEFL:録音方式
・PCに向かって1人で話す
・聞き返すことができない)

IELTS:対面形式
・1対1で試験官と話す
・聞き取れない場合は聞き返すことが可能)

日常的に英語でやり取りをすることに慣れている方は、聞き返したりできる分、IELTSの方が気が楽かもしれません。ただし、英語でのやり取りに慣れていない方は、一方向で意見や要約を話す録音式のTOEFLのほうが適している可能性もあります。

③ 語彙の傾向
TOEFLは自然科学系の専門用語をより多く覚える必要があります。ざっくりとした表現でいえば、TOEFLはより理系に近いと言えます。
一般的な単語に加えて、専門性の高い単語を習得する負荷を考えると、語彙力の面でもIELTSのほうが有利といえます。

④ ライティング形式の選択肢
TOEFL:全てコンピューター上で解答(キーボードでのタイピング必須)
IELTS:コンピューター形式と紙の筆記形式から選択可能
「コンピューターの操作が苦手」「英語のタイピングが遅い」という受験者には、IELTSのほうがより適しています。

まとめ:迷ったら模試で判断
留学志望先が両方のスコアを採用している場合、IELTSのほうが日本人にとって有利な点が多いです。ただし、スピーキング形式(録音 vs 対面)については個人の適性によります。迷われる場合は、それぞれの模試を受験して決めるのが良いでしょう。TOEFL、IELTSいずれも公式模試や公式問題集がありますので、トライしてみてはいかがでしょうか。

Q.053


20代 IT企業勤務

文法的に納得できない表現が多く、メール作成に時間がかかります

IT企業でプログラマーをしています。最近、海外のツールを使う機会が多くなり、英語を学習し始めたのですが、文法的に納得できない表現が多くモヤモヤしています。例えば「The movie was exciting for me.」と「The movie was exciting to me.」のどちらが正しいのか、文法的に説明できないものでしょうか?特にメールやリポートを書くときに悩んで時間がかかってしまい、困っています。どう考えて対策したらよいか教えてください。

A.

結論:文法チェックツールで割り切る。GrammarlyやGingerを活用しましょう

すべての英語表現を文法ルールで説明することは困難です。日本語にも文法的に説明がつかない表現があることと同様です。この点を前提とした上で、英文法チェックツールを使って割り切る方法をおすすめします。

理系の方に多い悩み
受講生の中にも、文法ルールで説明できないことに納得できないという方がいらっしゃいます。どちらかといえば理系で、プログラマーなど論理性を追求する仕事をされている方が多い印象です。
確かに「The movie was exciting for me.」と「The movie was exciting to me.」のどちらがいいのかを考え出すと、メールを書く手が止まってしまい、時間がかかってしまうということも起こり得ます。

日本語でも説明できない表現がある
例えば、刑事ドラマでは、観念した犯人が「私がやりました」と言うシーンをよく見ますが、「私はやりました」とは言いません。しかし、なぜ「私はやりました」がおかしいのかを文法的に説明するのは非常に困難です。
「が」も「は」も主体を表す助詞ですが、ニュアンスの微妙な違いについて、日本語のネイティブ話者であれば感覚的には分かるものの、その理由を文法的に説明できる方は少ないのではないでしょうか。

英語でも同じことが言える
「The movie was exciting for me.」と「The movie was exciting to me.」では、どちらも文法的に正しいため、どちらのほうがより適切な使い方かは文法ルールだけでは説明できません。
実際に英語ネイティブ話者に確認したところ、「どちらでもいいが、『The movie was exciting for me.』のほうが自然かも」という答えが返ってきました。
常にネイティブ話者に確認できる環境にいるケースは限られます。では、英語でメールを書く際に悩んだらどうしたらいいのでしょうか。

文法チェックツールを活用する
① Grammarly(グラマリー)https://www.grammarly.com/
最もおすすめのツールです。まずは無料版で試しに使ってみて必要な機能を確認するといいでしょう。
優れている点:
・Gingerより長文への対応力が高い
・単語のスペルミスなどの単純な間違いから、複数の語で形成された言い回しまでチェック
・様々なブラウザーやMicrosoft Officeとの連携が可能
・英語の文法的な正しさを数値化して評価
・無料版あり

有料版(Pro):
・細かな語彙や言い回しのチェック
・文全体の書き換えの提案
・丁寧さの調整

ビジネス版(Enterprise):
・プレミアム版の全機能
・会社単位で固有名詞や専門用語を統一するスタイルガイド機能

② Ginger(ジンジャー)
著名な英文添削アプリです。自然言語処理の特許を活用することにより、文脈に即した添削が可能です。

ツールの限界と対処法
Grammarlyを使うことで、文法的な間違いはほぼなくなるはずです。また、ライティングの学習としても無料版が活用できます。ここまで行えれば、英語のノン・ネイティブ話者としては十分です。
ただし、残念ながらGrammarlyにおいても、文章全体のコンテクスト(文脈)を踏まえた上で語彙や文法まで完璧にチェックすることはできず、現時点では人間に劣る面があるのは否めません。
メールより長文で複雑なリポートなどでは、正確性について心配になることもあるかもしれません。その場合は、プレミアム版のオプションとして提供されているプルーフ・リーディング(校正)サービスを利用するという選択肢もあります。実際にここまで徹底する必要はあまりないとは思いますが、どうしても完璧を目指したい方は活用してみてください。

まとめ:割り切ってどんどん使う
英語のネイティブ話者でない以上、どうしても文法ルールで悩む場面は出てくると思います。しかし、コミュニケーションですから過剰に悩む必要はありません。
英語のネイティブ話者でない以上、最後はツールを使ってチェックすれば十分と割り切って、どんどん英語を使っていくことが上達への早道です。

実践ステップ:
1.Grammarlyの無料版を導入
2.メール・リポート作成時に活用
3.必要に応じてプレミアム版を検討
4.完璧を求めすぎず、どんどん書く

論理性を追求するプログラマーの方には悩ましいかもしれませんが、言語には論理だけでは説明できない部分があります。ツールを味方につけて、効率的に英語を使っていきましょう。

Q.054


40代 メーカー勤務

シャドーイングと多読をしていますが、リスニングが伸び悩んでいます

リスニング力を向上させるには、シャドーイングに加えて「多読が効果的」と聞いて実践しています。しかし、リスニング力の伸び悩みを感じています。特に洋画や海外ニュースなどの英語は、なんとなく聞き取れているのですが、意味までは理解できません。どのような学習をすれば、さらにリスニング力を伸ばせるのか教えてください。

A.

結論:黙読の多読ではなく、コンテンツシャドーイングに時間を費やすべきです

意味理解を向上させるには、黙読のみの多読よりもシャドーイング、その中でもコンテンツシャドーイングが重要です。科学的実験でも、リスニング訓練を積んだ上で音声提示しつつ読解訓練をする方が、読解訓練のみよりも効果が高いことが証明されています。

リスニングのプロセス:2つの要素
第二言語習得論では、リスニングのプロセスは大きく2つに分かれます:
1.音声認識:シャドーイングで向上
2.意味理解:多読で処理速度を上げる
シャドーイングで「音声認識」の力をつけ、多読で「意味理解」の処理速度を上げることは、理にかなった学習法です。しかし、それらの学習をした上でも伸び悩みを感じているということですので、現状をどのように改善すべきか考えてみましょう。

意味理解のプロセスは「同じ」か「異なる」か
今回は「意味理解」について、第二言語習得の第一人者でありTORAIZ語学研究所フェローの門田修平先生の著書『英語の書きことばと話しことばはいかに関係しているか』(くろしお出版)を参考に説明します。

まず議論すべきは、リスニングとリーディングの「意味理解」のプロセスが同一か否かです。

門田先生によると、2つの説があります:
①音韻ルート説(同じとする説)
・人間が言葉の意味を理解するには必ず音を経由する必要がある
・リーディングは音読もしくは黙読することで意味を理解できる
・主にアルファベットを使う言語を研究する欧米の認知神経学者が支持

②非音韻ルート説(異なるとする説)
・人間が言葉の意味を理解するために「音」を経由する必要はない
・漢字など象形的で表意的な文字体系を持つ言語の研究者が主張

どちらの説が正しいか結論は出ていません。両方を使っているという説も有力です。

科学的実験が示す答え
門田先生の本では、これらの説についてさらに深掘りした実験を実施しています。(実験引用元:鈴木寿一 1990 聴解練習教材のポーズが読解スピードに及ぼす影響 ことばの科学研究会1990月例会 口頭発表 神戸外語大学)

実験方法: 日本人の高校3年生計90人を英語速読テストの成績で30人ずつの等質な3群に分割し、異なる訓練を実施:

A群: リスニングの授業を30回+テープ(句・節単位毎のポーズを人工的に入れたもの)の朗読をペースメーカーにした黙読訓練(合計29回)
B群: リスニングの授業を30回+テープ(句・節単位毎のポーズはなし)の朗読をペースメーカーにした黙読訓練(合計29回)
C群: 書き言葉の速読のみ(合計59回)

実験結果:

リスニング実験結果
※同実験でいう「読速度」とは、1分間に読める単語数=WPM(Words Per Minute)を指します。また、読解速度は、読速度(WPM)に理解度テストの正答率を掛け合わせた読解力指標の一つです
実験結果が示すこと:
A群が読速度・読解速度の双方でもっとも高い数値を示しました。つまり、英文の読解訓練のみ学習するよりも、リスニング訓練を十分に積んだ上で、音声提示しつつ読解訓練を導入する方法のほうが、読速度や読解力の育成に効果があります。
これは「音韻ルート」説が有力だと示されたともいえます。同時に、リスニングとリーディングは人間の脳における独立した別個の処理ではなく、相互に補完性があると考えられます。

あなたがすべきこと:コンテンツシャドーイング
これらの結果を加味すると、リスニングのスキル、特に「意味理解」の能力を向上するために、黙読のみの多読はおすすめしません。
映画や海外ニュースの音声が知覚できるリスニング力を持っているあなたが多読をする際は:
・英語ネイティブ話者の音声を読速度のペースメーカーとして活用
・できるだけ追いかけて一緒に音読する
すなわち、「シャドーイング学習」です。

2種類のシャドーイング
シャドーイングには2つあります:
①プロソディシャドーイング:音声をまねることをゴールとする
②コンテンツシャドーイング:意味理解まで求める

「意味理解」までを目的としたコンテンツシャドーイングを行うことが重要です。

まとめ:多読よりシャドーイング
意味理解の能力を向上するために、黙読のみの多読だけでなく、シャドーイングに時間を費やすべきです。

実践ステップ:
1.黙読のみの多読を減らす
2.音声付きの教材を選ぶ
3.ネイティブの音声をペースメーカーにして音読
4.コンテンツシャドーイング(意味理解重視)を実践
5.リスニング訓練を継続

科学的実験が示す通り、リスニング力の向上には、多読よりもシャドーイング、その中でもコンテンツシャドーイングが重要です。頑張ってください。応援しています。

Q.055


20代 メーカー勤務

効率的に学習するためには、どのように教材を選べばよいでしょうか?

大学を卒業してから10年近く、本屋やオンライン書店で直感的によさそうと思った英語教材を購入し取り組んできました。しかし、実力がついている気がせず、途中で飽きて積読(つんどく)状態になっている教材も多くあります。効率的に学習するためには、どのように教材を選べばよいでしょうか。また、1冊の教材はどのくらいまで仕上げればよいでしょうか。

A.

結論:教材はゴールに合わせて厳選し、2段階で仕上げる

教材は「ゴールに合ったものを選ぶ」ことが最優先です。そのうえで、1冊を完璧にする必要はなく、まずは重要部分だけを集中的に学び、残りは後回しにする2段階学習法を実践すると効率的です。

教材選びのポイント
1.直感で選ばない
「なんとなくよさそう」という理由で購入するのは避けましょう。
2.自分の英語力とゴールを把握する
現在のレベルを認識し、目指す英語力に必要な教材かを判断する
3.2つの視点で厳選する
詳しくは過去のQ&A「書店で英語学習の本を買っても、いつも挫折してしまいます。」で解説しています。

教材の仕上げ方:フレーズ集の例
中級以下のフレーズ集には、優先度の低いフレーズが多く掲載されていることがあります。これは、本として成立させるために必要なページ数(200ページ・10万字程度)を確保するためです。
しかし、実際に仕事で使う基本フレーズは100~200程度で十分。初級~中級では、1つの事態には1つのフレーズだけを覚えることに集中すれば効率的です。複数の言い回しは、余裕が出てから学びましょう。

学習の手順
1. 1冊の教材から覚えるフレーズを選び、単語や文法が簡単なものを印(○や下線)で目立たせる
2. 印を付けたフレーズだけを学習範囲とし、それ以外は一旦横に置く

忘れかけた頃に復習する:分散学習の効果
集中して長時間学習するよりも、分散学習が効率的です。
・中部大学・水野りか教授の研究によると、分散学習は集中学習の約2倍の記憶再現率をもたらす場合があります。
・忘れかけたタイミングで復習することが最も効果的です。

推奨:2段階学習法
1段階目:学習スコープを絞って反復
・例:100フレーズを10日で覚える場合、1日10フレーズずつ学習
・翌日以降、前日の範囲をチェックし、覚えていないフレーズに印を付ける
・これを毎日繰り返し、週末には印付きフレーズを全て確認
・目安:全体の8割を覚えた時点で一旦終了
2段階目:残りの2割を完璧に仕上げる
・新しい教材の学習と並行して、残りの2割を少量ずつ学習
・1日あたりの学習時間は1段階目の2割程度で十分
・最終的に1冊を完璧に仕上げる

この方法を使うことで、効率的にフレーズを習得し、飽きずに学習を継続できます。

まとめ
1.教材はゴールに合わせて厳選
2.重要なフレーズだけを学習範囲に絞る
3.分散学習で忘れかけた頃に復習
4.2段階学習法で1冊を最終的に完璧に

この方法を取り入れれば、積読状態の教材でも効率的に学習でき、着実に英語力を向上させることが可能です。応援しています。

Q.056


20代 メーカー勤務

英語を読むのが遅く、テストで時間内に回答できません

私の会社では、入社2年目までにTOEIC L&Rで700点を取得することが求められています。しかし、私は英語を読むのが遅く、時間内に解き終わることができません。シャドーイングは続けていますが、効果を感じられず困っています。どうしたらよいでしょうか。

A.

結論:読むスピードを上げるには「スラッシュリーディング」が効果的

TOEIC L&Rで700点を目指すには、1分間に150単語(150wpm)程度の読解スピードを目標にすることが理想です。そのためには、既存のシャドーイングに加えて、句単位で英文を区切りながら読む「スラッシュリーディング」を取り入れることをおすすめします。

スラッシュリーディングとは
・句:2語以上で1つの意味を持つ文法単位
・英語は句ごとに決まったリズムや間を持って発音する
・句の切れ目にスラッシュを入れ、かたまりとして認識して読む


I have found / that I can utilize / some of the vocabulary and grammar / that I learned / in English / when learning French.

スラッシュの入れ方の例
1.文型に基づく切れ目:I have found / that
2.接続詞の前:/ when learning French
3.関係代名詞の前:/ that I learned
4.前置詞の前:/ in English

句単位で読む効果の根拠
第二言語習得の第一人者・門田修平教授の実験によると、386人の高校生に対して、以下の3種類の英文を読ませて理解度を比較しました。

テキストA:通常の英文
Mr. Andrews had a new telephone number. Before he got it, it was the number of a shop. The shop now had a new number, but a lot of women did not know this, so they still telephone the old one.

テキストB:句単位でスラッシュ
Mr. Andrews / had a new telephone number. / Before he got it, / it was the number / of a shop. / The shop now / had a new number, / but a lot of women / did not know this, / so they still telephone the old one. /

テキストC:語単位でスラッシュ
Mr. / Andrews / had / a / new / telephone / number. / Before / he / got / it, / it / was / the / number / of / a / shop. / The / shop / now / had / a / new / number, / but / a / lot / of / women / did / not / know / this, / so / they / still / telephone / the / old / one. /

結果は、句単位のテキストBが最も理解度が高く、語単位のテキストCは最も低いことが分かりました。
→ 語単位では英文理解が向上せず、句単位で読むことが読解効率を高めることを示しています。

理由:スラッシュリーディングは脳の処理能力に合っている
・人間の脳には「ワーキングメモリ」があり、一度に処理できる情報は「7±2個」程度
・長文を理解するには、単語ではなく句単位でグループ化して処理する方が効率的
・句単位で読むことで、速読力・理解力が向上

実践のポイント
句の切れ目を意識してスラッシュを入れる
・文型(SVOO/SVOC)
・接続詞
・関係代名詞
・前置詞
慣れてくると、スラッシュを意識しなくても自然に句ごとに読むことができるようになります。この方法に慣れることで、TOEIC L&Rなどでの速読力向上にも直結します。

まとめ
・シャドーイングだけで伸び悩む場合、スラッシュリーディングを併用する
・句単位で英文を区切り、かたまりとして理解する
・脳の処理能力に合わせた効率的な学習法

ぜひスラッシュリーディングを取り入れて、読むスピードの向上とTOEIC L&Rスコアアップを目指してみてください。

Q.057


30代 金融機関勤務

英語学習時間が十分に確保できません。どのようにライフスタイルを改善すべきですか?

英語学習を継続していますが、最近は仕事だけでなく家事や子育てにも時間を取られ、勉強時間が十分に確保できません。加えて精神的に余裕がなく、学習効率も落ちている気がします。睡眠時間などライフスタイルを見直す必要性を感じています。どのように改善すればよいでしょうか。

A.

結論:学習効率を上げるには、睡眠・朝食・運動などの基本的な生活習慣を整え、隙間時間を有効活用しましょう

無理に勉強時間を長く確保するよりも、睡眠や食事、運動などの生活リズムを整えつつ、隙間時間や「ながら学習」、土日のまとまった時間を活用することが最も効率的です。睡眠不足や不規則な生活は、学習効果を大きく下げることが科学的にも明らかになっています。

睡眠と学習効率の関係
米フロリダ・ガルフ・コースト大学のピーター・ロイター氏とブリジッド・フォースター氏による論文「学生の健康行動と学業成績(原題:Student health behavior and academic performance)」によると、大学生の学業成績(GPA)は睡眠時間と強く関連していました。
・8時間睡眠の学生が最もGPAが高い
・6~8時間が高いパフォーマンスを発揮する目安
・4時間睡眠では最低スコア、9時間以上でも逆に成績が低下
→ 睡眠を削ると学習効率は下がるため、無理な勉強時間の確保は逆効果です。

食事や生活習慣の影響
・朝食を毎日摂る学生は、朝食を抜く学生よりGPAが高い
・アルコールは適量なら問題なし
・エナジードリンクやファストフードはGPA低下と関連
・週に4日以上の筋力トレーニングや運動も学習パフォーマンス向上に有効
→ 生活習慣の改善は学習効率向上に役立ちますが、すべて完璧に実行する必要はありません。

学習効率を上げるポイント
1.毎日6~8時間の睡眠を確保
2.朝食を摂る
3.エナジードリンク・ファストフードを控える
4.週に4日以上の運動を取り入れる
5.隙間時間やながら学習、土日のまとまった時間で学習

学習効率は生活習慣だけでなく、学習そのものの質や量も大きく影響します。ライフスタイルを可能な範囲で整えながら、効率的な学習時間の確保を並行することが現実的です。

無理に時間を増やすよりも、生活リズムと隙間時間の活用を意識して学習を続けてみてください。応援しています。

Q.058


20代 流通企業勤務

ワーキングホリデーに必要な語学力や留意点を教えてください

以前から海外留学やワーキングホリデーに興味があります。しかし、タイミングや資金面で実現できず、今に至ります。円安の影響で経済的負担は大きいですが、休職または退職してワーホリに行き、現地で働きながら貯蓄を増やしたいと考えています。ワーホリに必要な語学力や留意点を教えてください。

A.

結論:渡航前に一定の語学力を付けてからワーホリに行くことが、成功の鍵

ワーホリは円安のタイミングを生かして現地で働きながら経験を積めるチャンスです。ただし、語学力があるかないかで滞在中の学習効果や職探しの幅が大きく変わるため、まずは休職して渡航前に英語力を向上させることをおすすめします。

会社との調整
・退職する前に、まず休職の相談をしてみましょう。
・語学力向上を目的として休職することを会社に伝えると、自分へのプレッシャーとなり学習の成果につながります。
・帰国後の再就職やキャリアへの影響も考えると、退職より休職の方がリスクは低いです。

ワーホリに必要な語学力
TORAIZのワーホリ経験者コンサルタントによると、
・「渡航だけ」であれば語学力はほとんど必要ありません(TOEIC 300点台でも可)
・しかし、「語学力向上」を目的とする場合、渡航前の英語力が結果に大きく影響します

理由は以下の通りです:
1.渡航後、語学学校に通う際に、英語力が低いと日本人ばかりのクラスに入りやすく、学習効果が下がる
2.渡航後の友人関係や職場環境も英語力に左右される
3.語学力があれば、現地で自力で滞在先や仕事を探せるため、費用面や経験の質も向上
・目安の語学力:VERSANTスピーキングテストスコア40点台前半
・現在のレベル次第ですが、3~6か月の学習で到達可能です。

職探しの観点
・語学力が低いと、日本人従業員が多い職場(日本食レストランなど)しか選べず、英語環境に触れられない
・語学力があると、英語を中心に使う職場(レストラン、アパレルショップなど)で、英語を実践的に学べる

滞在先・生活面でのメリット
・語学力があると、エージェントを介さず自力で滞在先や仕事を探せる
・例:Airbnbで1か月滞在しつつ、CraigslistやGumtreeで次の住居を探す
・日本語環境に依存せず、英語環境を最大限活用できる

まとめ
1.まず休職を相談し、渡航前に語学力を向上させる
2.VERSANT40点台前半を目安に学習
3.語学力に応じて職場や滞在先を選択し、英語環境を最大化

ワーホリは人生に大きな影響を与える貴重な経験です。事前に語学力を身に付けて渡航することで、学習効果も生活の質も大きく向上します。応援しています。

Q.059


30代 メーカー勤務

人事部で英語研修を担当していますが、参加者が徐々に減ってしまい困っています

私はメーカーの人事部で英語研修を担当しています。社内で希望者が自由に参加できるネイティブ講師による講義や英会話レッスンを週1回オンラインで実施しています。最初は参加者も多かったのですが、徐々に減ってしまい困っています。どうすれば継続的に参加者を集められますか?

A.

結論:大人向け研修は「アンドラゴジー」の視点で設計することが鍵

参加者が減るのはよくある現象ですが、大人向けの学習設計を理解し、研修をアンドラゴジーに沿って見直すことで、参加意欲と継続率は大きく改善します。

大人向け学習の基本原則:アンドラゴジーとは
米国の成人教育研究家マルコム・ノウルズ氏は、伝統的な子供向けの教育学「ペダゴジー(pedagogy)」と大人向けの学習学「アンドラゴジー(andragogy)」を区別しました。
ペダゴジー(子供向け学習):学習する人の役割は定義上、従属的なものです。教育的立場の人は「何を」「いつ」「どのように学習するか」などを決定する全責任を負うことを期待されています。
アンドラゴジー(大人向け学習):人間は一般的に、成熟するにつれて、依存的人格から自立的人格に変化していきます。しかし、その速度は人によってさまざまです。教育的立場の人は、学習している人が主体性を持って学習ができるよう、後押しをする責任があります。例外もありますが、大人は「主体的に意思決定をしたい」という心理を持っています。

ペダゴジーとアンドラゴジーの4つの違い
1.学習する人に対する考え方
・ペダゴジー:従属的
・アンドラゴジー:主体性を持ち、自分で意思決定をしたい

2.学習する人が持つ経験の役割
・ペダゴジー:学習する人の学習経験が少ないため、その経験にはほとんど価値はない。学習上の経験の大半は、講義や課題図書、プレゼンテーションなど、教育的立場の人や教科書の作成者といった専門家の経験を基にする。
・アンドラゴジー:人間の成長に伴う経験には意味を持ち、実験や問題解決のケーススタディー、ディスカッションといった学習教材などに活かす。

3.学習の準備
・ペダゴジー:人間は学校などから「学ぶべきだ」というプレッシャーを受けたときに、同世代の人たちとともに、学ぶ準備が整う。教育的立場の人は、全ての学習する人に対して、均一で標準化されたカリキュラムを編成することが求められる。
・アンドラゴジー:人間は「問題を対処するときに学びが必要だ」と考えたタイミングで、学ぶ準備が整う。教育的立場の人は、学習する人が知る必要性を認知するための状況をつくり、そのために必要なやり方や方法を提供する責任がある。また、学習内容は生活に支障をきたさないものを編成するなどの対応も求められる。

4.学習の志向性
・ペダゴジー:数学や古代から近代までの歴史といった教育課程で学んだことは今すぐではなく、「将来役に立つこと」が目的となっていることがほとんど。カリキュラムは教科書に沿って構成されている。
・アンドラゴジー:学習する人は「今日学んだことを明日、より効率的に活用したい」と考えている。そのため学習経験は、能力開発したいカテゴリーごとに構成する必要がある。

社内研修への応用
・社内研修が参加者減少に悩む場合、ペダゴジー型になっていないか確認する
・大人向けの学習設計(アンドラゴジー)に基づき、以下を実施:
1.学習者の主体性を尊重
2.これまでの経験を活かす機会を提供
3.学習のタイミングや内容を実務に直結
これらを取り入れることで、研修の効果・魅力・継続性が高まります。

社内研修も「大人向けの研修と学校教育は全く違う」という大原則を前提にアンドラゴジーの視点で見直すことで、参加者のモチベーションや定着率は改善できます。また、アンドラゴジーは、企業研修の設計に欠かせない「インストラクショナルデザイン」の大原則の1つです。過去のQ&Aでも何度か解説していますので、あわせて読んでみてください。

※参考:「From Pedagogy to Andragogy」https://colllearning.info/wp-content/uploads/2019/03/The-Modern-Practice-of-Adult-Education.pdf

Q.060


20代 ゲーム会社勤務

どうすれば英語学習に対するモチベーションを維持できますか?

毎年「今年こそ英語をマスターする」と決意するのですが、数週間で挫折してしまい、結局続きません。どうすればモチベーションを維持し、英語力を本当に身につけられるのでしょうか?

A.

結論:英語学習を続けるには「準備」「目標設定」「時間管理」「隙間時間の活用」「宣言」の5つが欠かせません

多くの人が新年や新年度に意欲を燃やしますが、数か月で失速するのはよくあることです。このパターンを避けるために、以下の5つのポイントを実践してください。

1. 年内に準備を終えておく
学習テキストやアプリの購入、スクールへの入会などは、新年を迎える前に済ませましょう。年明けから準備を始めると出遅れ、やる気が下がってしまいます。例えば、早朝学習を習慣化するなら、前の晩に教材を机に置き、スマートフォンを充電しておくことが効果的です。小さな準備が、学習の継続に直結します。

2. 1年後の具体的なゴールを設定する
「来年は海外出張で英語プレゼンを成功させる」「学会発表を英語で行う」など、達成イメージを明確に持ちましょう。曖昧な目標よりも具体的なゴールのほうが、学習の方向性がぶれず、モチベーションを保ちやすくなります。

3. スケジュールを見直し、学習時間を確保する
自分の1週間のスケジュールを書き出し、どこに時間を使っているか把握しましょう。特にスマートフォンに費やす時間は学習時間の最大のライバルです。スマホを金庫に入れるといった工夫で、自分を強制的に学習環境に置くのも有効です。

4. 隙間時間を活用する
ランチ後の30分をシャドーイングに使うなど、細切れ時間も学習に変えましょう。スマホに使っていた時間を少しずつ学習に充てるだけで、週に14時間以上確保できる場合もあります。学習は特別な時間を作るより、「隙間を埋める」意識が成功につながります。

5. ゴールを公言し、周囲に協力を得る
最後に最も重要なのは「宣言」です。「1年で英語プレゼンができるようになるため、毎週20時間学習します」と家族や同僚、あるいはSNSで公開してみましょう。恥ずかしさを感じる人ほど、その気持ちが良いプレッシャーになり、継続の力になります。周囲の協力も得られるため、家事や仕事との両立もしやすくなります。

まとめ:
モチベーションの維持には、事前の準備と具体的な行動が不可欠です。「来年こそ」と毎年思う人こそ、今から動き出しましょう。年内に環境を整え、年明けに最高のスタートを切ることで、英語学習を「習慣」に変えられます。ぜひ、本気で英語を身につけてください。