学ぶことを通して人と組織の可能性を拓く

トライズ株式会社
代表取締役社長
三木 雄信(みき たけのぶ)
トライズ株式会社 代表取締役社長 三木 雄信(みき たけのぶ)

プロフィール

話せる英語コーチング
「TORAIZ(トライズ)」運営
元ソフトバンク社長室長
生年月日:1972年11月30日 出身地:福岡県

「学ぶことを通して人と組織の可能性を拓く」を経営理念に英語教育事業を展開するトライズ株式会社創業者。
2015年より1年でビジネスレベルの英語が話せるようになる英語コーチングスクール「TORAIZ(トライズ)」を運営。
開校以来約15,000名がトライズのプログラムを受講。日本の英語教育を抜本的に変え、グローバルな活躍ができる人材の育成を目指している。
地元・福岡の久留米大学附設中学・高校ではソフトバンク孫正義氏の実弟の孫泰蔵氏およびホリエモンこと堀江貴文氏と同級生。
東京大学経済学部卒業後、三菱地所を経て1998年にソフトバンクに入社。2000年ソフトバンク社長室長就任。孫社長にたたきこまれたソフトバンク式仕事術などの著書多数。

Profile

DIAMOND online、日経ビジネス(電子版)、
GOETHE(ゲーテ)など連載多数

さまざまな媒体に連載を行い、現代の諸問題・英語学習法・経営者のダイエット法や学び直しなどについて掲載。

DIAMOND online

連載:「三木雄信の快刀乱麻を断つ」

官民において多くの巨大プロジェクトに関わってきた三木が、混迷する現代の諸問題の本質を、プロジェクトマネジメントの観点で解き明かし、スバリと解決策を提示する連載。これまでに扱ったトピックは、マイナンバーカード、福島第一原発の処理水の海洋放出、株価高騰と半導体、アメリカ大統領選についてなど。2023年4月より連載中

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日経ビジネス(電子版)

連載:「その英語学習法、間違ってます!」

日本人の英語学習について、質問に答える形式で2021年3月より連載中

日経ビジネス(電子版)を見る

GOETHE(ゲーテ)
Web版

経営者のダイエット法や学び直しなどについて掲載

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主な著書一覧

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三木雄信に聞く!あなたのナゼ?に答えます!

Q.001


30代 IT企業勤務

社内で求められるTOEIC L&Rのスコア750点をクリアしていますが、海外拠点とのオンライン会議で気後れして話せません。今後、TOEICのスコアアップを目指すべきでしょうか。 

A.

結論:TOEICのスコアを上げるより、実践的なスピーキング力を磨くことが最優先です。 

TOEIC L&Rは読む・聞く力を測るテストであり、口頭での英語力の十分条件にはなりません。スコアが高くても、会議で発言できない人は多くいます。 
私が運営する英語コーチングスクールTORAIZでは、TOEIC L&Rスコアと英語スピーキング力を測るVERSANTテストのスコアを比較したところ、決定係数は0.38と中程度の相関しかありませんでした。 

TOEICスコアとVERSANTスピーキングスコアの相関グラフ

VERSANTは質問を聞き、即座に英語で回答する形式で、実践的な会話力を測定します。グローバル企業では47点以上、外資系企業では58点程度が必要です。

TOEICで高得点を目指すには、950点以上で約2,000時間以上の学習が必要とされ、時間対効果の観点からも効率的とは言えません。お勤めの会社で750点以上が求められている現状では、スコアアップよりも口頭で話す力の向上に注力すべきです。

学習目標を明確に設定することも重要です。例えば、会議で発言する力を伸ばしたい場合はVERSANTでのスコア向上を目標に設定すると良いでしょう。契約書作成などライティング力が求められる場合はTOEIC S&Wを活用します。海外留学を目指す場合はTOEFLやIELTSの高スコアをゴールにするのが適切です。

英語学習はキャリア形成の重要なステップです。自分のキャリアプランに沿った学習目標を設定し、最適な評価指標を活用することで、実践力を効率的に伸ばすことができます。まずは、自分に必要な英語力を見極め、会議や実務で自信を持って使える力を目指しましょう。 

Q.002


20代 外資系企業勤務

帰国子女と比べると、自分の英語の発音に自信が持てません。社内の会議で話すときにためらってしまいます。ネイティブスピーカー並みの発音を目指すには、特殊な学習が必要でしょうか?

A.

結論:ネイティブスピーカー並みの発音を目指すよりも、まずは発音記号の理解とシラブル・イントネーションを意識して英語を話すことが、自信を持って会議に臨む近道です。 

この悩みは非常に多くのビジネスパーソンが抱えています。帰国子女と比較すると緊張してしまい、自分の発音が劣っていると感じるのは自然なことです。しかし、ネイティブスピーカー並みに発音を改善することは、成人以降では極めて難しいと科学的に示されています。 

米国の心理学者Susan Oyamaの調査によれば、16歳以降に米国に移住した人がネイティブスピーカー並みの発音を習得するのはまれで、滞在期間はほとんど影響しません。発音矯正訓練の効果も、幼少期に学んだ場合に限定されます。つまり、大人になってから発音だけを完璧にしようとする努力は、時間と効果のバランスが悪いのです。 

では、自信を持って会議に参加するにはどうすればよいのでしょうか。私たちが運営する英語コーチングプログラム「TORAIZ(トライズ)」では、まず発音は一旦忘れ、以下の2つに注力することを推奨しています。 

1.

発音記号を理解する

学校では習った記憶があっても、実際に体系的に学んだことがない人が多いのが現状です。おすすめの参考書は中村駿夫著『発音記号の正しい読み方』(昇龍堂出版)。口の形や舌の位置を図で示しており、短期間で発音記号をマスターできます。 学校では習った記憶があっても、実際に体系的に学んだことがない人が多いのが現状です。おすすめの参考書は中村駿夫著『発音記号の正しい読み方』(昇龍堂出版)。口の形や舌の位置を図で示しており、短期間で発音記号をマスターできます。 

2.

シラブルとイントネーションを意識する

英語らしく聞こえるためには、発音よりもシラブル(音の単位)とイントネーションが重要です。例えば「Local」は日本語の「ローカル」と異なり、ネイティブは「ロコ」の2拍で発音します。また、文末のイントネーションで意味が変わるため、会話では文法と同等に意識する必要があります。ソフトバンクの孫正義氏の英語は、発音は日本語寄りでもシラブルとイントネーションが正確で、自信を持って交渉が可能です。 

まとめ:
まずは発音記号を短期間で理解し、日常の学習ではシラブルとイントネーションを意識すること。この基礎を身につけることで、社内で「英語で仕事ができる人」と評価される近道になります。発音矯正は、言いたいことが自由に話せるようになってから取り組むのが最適です。発音に固執せず、まずは自信を持って英語を話すことが成功のカギです。  

Q.003


30代 メーカー勤務

海外比率が50%を超える部品メーカーの人事部で英語研修を担当しています。「英語研修は自己研鑽であるべきか、社費育成であるべきか」悩んでいます。この点についてお考えを聞かせてください。  

A.

結論:英語研修は、キャリアパスが明確になるまでは自己研鑽として行い、業務上必要となる段階で社費育成を活用するのが合理的です。

この悩みはグローバル化を進める日本企業で非常に多く聞かれます。実際、社員の受講前カウンセリングでは「会社に費用を負担してもらえるか」を相談される方も少なくありません。背景として、日本の製造業では生産・販売の両面で海外比率が50%を超えるケースが増え、英語力の必要性が急速に高まっています。

端的に言えば、「キャリアパスが不確定な間は自己研鑽として学習し、業務上英語が必須となる段階で社費育成を行う」のが最も合理的です。TORAIZのクライアント各社も、この方法を採用しています。

理由の一つは、全社員に社費で英語研修を行うのは費用対効果が低いためです。若年層はTOEIC L&Rで800点以上持って入社することも多く、アプリや書籍を使った独学で十分スコアアップが可能です。二つ目は、業務で英語が必要な中堅・幹部候補は、社内で業務知識を持つ人材に研修を施すほうが、外部から採用するよりもコスト効率が高いことです。

成功事例としては、キャリアパスが明確な社員に対して数年単位で英語研修を行う企業や、海外赴任希望者を募集して選考後に1年半以上かけて研修を行う企業があります。共通しているのは、「いつまでに何を学ぶか」が明確で、学習の目的がキャリアと直結している点です。この明確さが、社員の学習モチベーションにもつながります。

社員としては、会社で社費研修が提供されない場合でも、まずTOEIC L&Rで700点を目標に学習することをおすすめします。このスコアがあれば、外資系企業でも基礎的な英会話力は十分です。学習後はキャリアパスを考え、ロールモデルを分析することで次にやるべきことが見えてきます。

自己研鑽としての学習も有効ですが、キャリアパスを明確に示すことで、会社が研修費用を負担してくれる可能性もあります。重要なのは「なんとなく英語を学ぶ」のではなく、キャリアと必要性を意識して計画的に学ぶことです。

Q.004


40代 メーカー勤務

私は海外旅行が趣味で、仕事にも役立つかもしれないと思い、英会話教室に週1回通い始めて3年になります。しかし、いまだ英語が話せるようになりません。今後、どのくらい通えば英語をマスターできるでしょうか? 

A.

結論:週1回の英会話教室では英語習得に圧倒的に時間が足りません。最低でも1000時間規模の学習計画が必要です。

結論から言うと、このペースでは英語習得までに17年以上かかる可能性があります。週1回、1時間のレッスンを1年で50時間とすると、3年間で150時間しか学習していない計算です。しかし、TORAIZ語学研究所の分析によれば、ビジネスで最低限英語を使えるレベル(VERSANTスコア47点、CEFR B1相当)に到達するには、平均して約1000時間が必要です。このレベルでは、日常的な業務でのプレゼンや1対1の質疑応答が可能ですが、多人数での議論やネイティブスピーカーとの高度な交渉には不十分です。その場合、さらに学習時間を積み上げる必要があります。 

米国務省の付属機関で、外交官などを養成するFOREIGN SERVICE INSTITUTEの研究によると、日本語を母語とする学習者にとって、英語は「Super-hard languages」に分類され、短期間でマスターできる方法は存在しません。日本語を学ぶ米国人で2200時間の教室での学習が必要とされており、逆のケースもほぼ同様と考えられます。それは、文字・語彙・文法の違いから生まれる言語間の距離という観点では同じだからです。 

重要なのは、甘い期待で学習時間を見積もらず、科学的に必要な学習量を前提に計画を立てることです。まず自分の現在の英語力を正確に把握し、ゴールとするレベルを決め、1000時間規模で学習計画を組むことをおすすめします。集中学習や効率的な方法で予定より早く成果が出れば、それは自信につながります。 

週1回の教室だけでは圧倒的に足りませんが、学習時間を意識して計画的に積み上げることで、海外旅行だけでなくビジネスの現場でも英語を活用できるようになります。まずは現状の学習時間を見直し、明確なゴールと計画を持つことが、英語習得への最短ルートです。

Q.005


20代 IT企業勤務

最近、AIの翻訳精度が飛躍的に向上しています。この状況を考えると、英語学習に時間やお金をかけるのは無駄ではないでしょうか?

A.

結論:半分はYES、半分はNOです。

まず、中学レベルの文法や単語が身に付いている方であれば、リーディングやライティングの学習はAIを活用しながら実務でOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)で十分です。AI翻訳は文章の理解や文書作成をかなりの精度で補助してくれるため、文字ベースの学習は従来ほど必須ではありません。 

一方で、ビジネスパーソンに必要なリスニングやスピーキング、口頭でのコミュニケーション能力は、AIの支援だけではまだ不十分です。特に英語での議論や会議、部下の指導・交渉など、文脈の把握や即時の判断を伴う会話は高度なスキルを要します。ここでは「特化型AI」(特定の分野に強いAI)では対応できず、汎用AIや人間のような複合的能力が必要になります。汎用AIの実現は、研究者の予測でも2045年以降とされており、まだ時間がかかる見込みです。

つまり、AIに頼って文字情報だけを処理する場合は学習時間を減らせますが、口頭での実践的英語力は学習なしでは身につきません。英語学習は、今後5年~10年のキャリア形成の観点からも重要です。短期間で完全にAIに頼れる未来は現状では来ていないため、リスニングやスピーキングを鍛える努力はむしろ価値が高いのです。

学習のポイントとしては、AIを活用しながら、日常業務や自己学習の場で積極的に英語を話す時間を確保すること。AIで文章を確認したり補助を受けたりすることで、効率的に学習を進められます。そして、文字中心の学習と口頭中心の学習のバランスを意識することが、今後のキャリアに直結する英語力を養う近道です

最後に、重要なのは受動的にAIに頼るだけではなく、自分自身が英語を使う実践機会を確保することです。それにより、AIでは補えないコミュニケーション能力を磨き、真の国際的ビジネス力を身につけることが可能になります。

Q.006


20代 メーカー勤務

英単語を覚えられず、学生時代から苦手意識があります。今後仕事でTOEICのスコアが求められますが、自分に暗記力がないのではと不安です。英単語をより簡単に覚える方法はありますか?

A.

結論:英単語は誰でも効率的に覚えられます。暗記力が低いわけではなく、学習方法を体系的に学んでいなかっただけです。英語学習における「メタ学習」、つまり学び方自体を理解することがポイントです。

まず、フォニックスでスペリングと発音のルールを体系的に押さえましょう。英語はスペリングと発音が1対1で対応しておらず、日本人は小学校で習ったローマ字の影響もあって混乱しやすいのです。例えば「name」は母音+子音+eの並びで母音の名称どおりに読み、最後のeは発音しません。このようなルールを整理することで記憶が格段にしやすくなります。『フォニックス <発音> トレーニングBOOK』などで学ぶことをおすすめします。 

次に、語源から単語を覚える方法です。英単語を漢字の熟語のように分解すると理解しやすく、派生語も同時に覚えられます。例えば「project」は「pro(前に)+ ject(投げる)」で「事業」の意味になります。「inject(中に投げる=注入する・注射する)」「reject(元に投げる=拒否する)」も同じ語源です。このように語源マインドマップを作れば、関連単語を連鎖的に学べます。『英単語の語源図鑑』などの書籍も活用できます。 

語源マインドマップ

最後に、英単語単体の学習だけに頼らない方法もあります。TOEIC対策では単語単体の学習が必要ですが、口頭コミュニケーションが目的なら中学英語レベルの3,000語で会話可能です。自分のゴールに沿った記事やニュースを読み、重要単語を繰り返し目にすることで自然に覚えられます。学習の途中で自分専用の単語リストを作るのも効果的です。 

まとめると、まずフォニックスと語源を押さえ、TOEIC対策用教材で必要な単語を学習。その後、自分のゴールに合わせた実践的な学習で単語力を拡張すれば、誰でも効率的に英単語を覚えられます。苦手意識は「メタ学習不足」が原因です。やり方を変えれば、あなたも確実に単語を習得できます。 

Q.007


50代 監査法人勤務

50代では英語の習得は難しいのでしょうか?
監査法人に勤務しています。グローバル統合により、社内業務だけでなく、監査の過程で英語による質疑応答を行ったり、監査責任者として英語で報告をしたりする機会が増えました。現在52歳ですが、この年齢から本格的に英語学習を始めるのは遅すぎるのではと、不安があります。やはり若い世代に比べると、英語の習得は難しいのでしょうか。

A.

結論:52歳であっても、20代の人と比べた英語学習の効率に大きな差はありません。年齢を理由に臆する必要はなく、自信を持って学習を始めてください。

versantの1年間アップ点数の平均

TORAIZ語学研究所のデータによれば、1年間の英語スピーキングテストVERSANTのスコアの伸びは、20代が平均13.4点、50代が11.3点と、一見すると年齢による差があります。しかし、この差の理由は学習効率の違いではなく、学習時間の差に起因しています。年代が上がるほど、仕事や家庭の責任で学習時間が短くなる傾向があるのです。

そこで、学習時間を考慮して1週間あたりのスコア伸びを算出すると、20代から50代までほぼ同じ効率であることが分かりました。

[年代別]1週間の学習時間当たりのversantアップ点数の平均

つまり、50代でも学習時間を着実に確保すれば、20代と同じ結果を出せるということです。60代以上では若干効率が低下しますが、差は約2割程度で、目標を明確にして計画的に学習すれば十分に挽回可能です。

ただし、発音の矯正は大人になってからは難しいため、学習の効率を考えると過度に重視しすぎないことをおすすめします。実務で必要な英語力、特にリスニングやスピーキングは年齢に関係なく伸ばすことができます。

まとめると、英語学習に関して、50代まで年齢はほとんど関係ありません。年齢に臆せず、学習を楽しみながら進めてください。

Q.008


20代 金融機関勤務

勤務先で英語習得の指標としてCEFRが導入されましたが、CEFRとは何でしょうか。また、TOEICとは何が違うのでしょうか。CEFRを前提にどのように英語学習を進めればよいか教えてください。

A.

結論:CEFRは「英語で何ができるか」を示す指標で、実務で使える英語力を明確に把握・目標設定するのに最適です。TOEICはスコアを測るテストであるのに対し、CEFRは具体的な言語運用能力を段階的に示します。このため、まずはCEFRを理解し、目標レベルに沿った学習計画を立てることが効率的です。

CEFRとは何か
CEFR(セファール)は「Common European Framework of Reference for Languages」の略で、日本語では「外国語の学習・教授・評価のためのヨーロッパ言語共通参照枠」と訳されます。欧州評議会によって開発され、世界中で学習・教育・評価の基準として使われています。40以上の言語に翻訳されており、単なるスコアではなく「何ができるか」を示す指標です。

CEFRはA・B・Cの3段階に分かれ、さらに細分化されています。

・Aレベル:基礎的な言語使用者
・Bレベル:自立した言語使用者
・Cレベル:熟練した言語使用者

さらにそれぞれのレベルで、1と2に分かれます。例えば、BレベルはB1、B2に分かれます。では具体的にB1とB2の違いについて見てみましょう。

・B1:仕事、学校、レジャーなどでよく遭遇する身近な事柄について、明確で標準的なインプットの要点を理解することができる。その言語が話されている地域を旅行中に起こりうるほとんどの状況に対処できる。 身近な話題や個人的に興味のある話題について、筋の通った簡単な文章を作成することができる。経験や出来事、夢、希望、野望を説明し、意見や計画の理由や説明を簡潔に述べることができる。

・B2:専門分野の技術的な議論を含む、具体的なテーマや抽象的なテーマの複雑なテキストの趣旨を理解できる。ネイティブスピーカーと日常的に会話ができる程度の流ちょうさと自発性をもって、お互いに無理なく会話ができる。幅広いテーマについて、明確で詳細な文章を作成し、時事問題について、さまざまな選択肢の長所と短所を含めた見解を説明することができる。

引用元:欧州評議会 https://www.coe.int/en/web/common-european-framework-reference-languages/table-1-cefr-3.3-common-reference-levels-global-scale

CEFRとTOEICの違い
TOEICはスコアで英語力を測るテストです。一方、CEFRは「実務でどの程度使えるか」を示す指標で、より具体的な能力を表現します。文部科学省も主要資格・検定とCEFRの対照表を公表しています。(https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/koudai/detail/__icsFiles/afieldfile/2019/09/25/1420500_3_2.pdf

このようにCEFRと英語の資格・検定試験は換算可能とされています。しかし、それぞれの資格で測定方法が違うのですから、そもそも測定対象としている言語能力が違い、測定誤差もあるので、換算が完璧ということはありません。

また、CEFRレベルについて、セルフ・アセスメント用のリスト(https://rm.coe.int/CoERMPublicCommonSearchServices/DisplayDCTMContent?documentId=090000168045bb52)があるので確認しましょう。

CEFRを前提にした学習法
1.自分が最もスコアを取りやすい資格・検定を選ぶ
2.目標スコアを獲得し、CEFR換算で必要なレベルを確認
3.CEFRレベルで示される能力を目指して学習を進める

これにより、実務で活用できる英語力を効率よく伸ばせます。まずはB1を目標に設定し、実務経験を通じて最終的にB2以上を目指す学習ステップが理想的です。

Q.009


30代 メーカー勤務 

学習しても自分の英語が伸びていない気がして、3カ月以上継続できません。書店で新しい英語学習用の書籍を買っても、最後まで続けられず積んでしまいます。飽きやすい性格のせいでしょうか。そんな私でも継続できる方法はありますか? 

A.

結論:飽きやすい性格だから続かないのではなく、英語学習の特性を理解していないためです。誰もが最初の3カ月ほどでモチベーションが落ち、伸びを実感しにくいのは自然なことです。

英語学習の特徴の一つは、実力がつくのに時間がかかることです。一般的な日本人ビジネスパーソンが仕事で使えるレベル(CEFR B1相当、VERSANTスピーキング47点程度)に達するには、約1000時間の学習が必要です。毎日3時間学習しても1年、1時間なら3年かかります。このため短期間で伸びを実感することは難しく、停滞感を抱くのは当然です。

versantスコア推移

さらに英語力は直線的に伸びません。TORAIZの受講生データでは、学習時間が300時間から500時間のあたりに1回目の停滞期があり、700時間から900時間のあたりに2回目の停滞期があります。これはVERSANTスピーキングテスト1.4万回のスコアデータを分析したものなので、おおよそ普遍的な傾向と言えると思います。

しかし、この期間でも「文章構文」や「語彙」は着実に伸びており、アウトプット能力とのギャップで総合スコアが停滞しているだけです。つまり、この停滞期は成長痛のようなもので、ネガティブに捉える必要はありません。

ちなみにTORAIZ受講生の場合、1回目の停滞期を乗り越えるとリスニングができるようになるようです。多くの受講生が映画やテレビの中の会話などを全部ではないけれども聞き取れるようになる経験をします。次に2回目の停滞期を越えるとスピーキングができるようになったと感じるようです。大体11カ月前後に英語をあまり考えることなく話せるようになった実感がわくようです。

では、どうすれば継続できるのでしょうか。ポイントは「自分の成長を実感する機会」を作ることです。VERSANTなどのテストを定期的に受ける、または月に1回もしくは3カ月に1回でもいいですから、英語を使う場面を意図的に設定します。たとえば、海外からのお客様のアテンドや、英語を話す同僚とのランチ、英語会議のファシリテーションなどです。第三者の評価やフィードバックを得ることで、自分の成長を確認でき、学習のモチベーションが高まります。

まとめると、英語学習が続かないのは性格ではなく、学習の特性によるものです。停滞期を理解し、アウトプットと第三者評価の機会を取り入れることで、誰でも学習を継続できます。安心して、着実に学習を進めてください。 

Q.010


30代 薬品メーカー勤務

書店で英語学習の本を買っても、いつも挫折してしまいます。夏休みに英語を学びたいのですが、今度こそ続けられる教材の選び方はありますか? 

A.

結論:教材選びのカギは「ゴールから逆算して選ぶ」ことです。

これは多くの学習者が経験することです。つい衝動買いした教材が積み上がる「積読(つんどく)」状態になってしまうのは、学習のゴールと教材が結びついていないことが原因です。

まずは自分の現状とゴールを明確にしましょう。ビジネスで例えると、昇進に必要なスキルを把握して、そこに向かうロードマップを描くのと同じです。英語学習も同様で、スタート地点(現在のレベル)とゴール地点(目指すスコアやスキル)を確認することが最初のステップです。

ここで参考になるのが、米国で広く用いられている「インストラクショナル・デザイン」の考え方です。これは「何をできるようにするか(What)」という学習のゴールを明確にした上で、「どうやってできるようにするか(How)」を体系的に考えることにより、効果的・効率的な学習プログラムを設計する方法論です。インストラクショナル・デザインでは、その学習プログラムを完了すると当初狙った学習ゴールを達成できることが当然と考えます。

例えば、TOEICスコア800点を目標とする場合、まず現在のスコアを確認します。その上で、レベルに合った教材を選び、学習ロードマップを作るのです。TOEICの単語力は、おおよそ1000単語習得ごとに100点アップすると言われています。キクタンシリーズなど、レベル別の教材を使えば、ゴールまでの道筋が明確になります。

さらにリーディングの速さも重要です。自分自身でTOEICの過去問を解いて、1分間にどれだけの単語を読めるか(WPM)を測定しましょう。TORAIZ語学研究所の分析では、リーディングのパートを全部読んで時間内に解答するには150WPM以上が必要です。

測定結果が150WPMに近い人であれば、速読の基本はマスターできています。このような人は、今後はさらに多くの英文を読み込むことが重要になりますから、TOEICの過去問や模試をやり込むのも1つの方法です。
しかし現状が100WPM以下の人は、まだまだ速読できているとはいえません。おそらく学校で習った「英語は後ろから翻訳する」というような読み方で、英文のあちこちに視線を行ったり来たりさせながら時間をかけて読んでいるはずです。このような人は英語の速読を可能にするために読み方そのものを学ぶ必要があります。TOEICでの速読対策のための本も良いものがたくさん出ています。そしてある程度WPMが出るようになってから過去問や模試の読み込みを進めていくことが望ましいでしょう。

リスニングやスピーキングをゴールとする場合も同様に、スタートとゴールを細かく明確にしてそれをつなぐ教材のロードマップを作っていくのです。この結果、自分が取り組むべき教材が自然と明確になります。ポイントは、ベストセラーだから、見た目が良いからといった理由で教材を選ばないこと。必ず「ゴールに直結するか」を基準にしてください。教材がゴールに結びつくことで、学習の納得感が高まり、挫折せずに継続できる可能性が格段に上がります。

まとめ
まずゴールを明確にし、教材レベルまで詳細化した上で書店に行きましょう。ゴールから逆算したロードマップを描けば、自分に合った教材が自然と見えてきます。これが、充実した夏休みの英語学習につながります。