三木雄信に聞く!あなたのナゼ?に答えます!

Q.101


30代 メーカー勤務

英語学習で挫折しそうです。どうすれば継続できますか?

「英語が分かっていたはずなのに、聞けない・話せない」という悩みがあります。また、学習を進めるうちに挫折感を覚え、「この方法はダメだ」「自分には英語が向いていないのでは」と思ってしまい学習が続きません。私には何が足りないのでしょうか?

A.

結論:足りないのは能力ではなく「学びのデザイン」です。日本人が英語を習得するには最低2200時間必要とされ、継続が成否を分けます。効果的なのが「ARCSモデル」の活用です。A:興味のある教材で注意を引く、R:自分の仕事や目標と関連づける、C:「i+1(現レベルより少し上)」の教材で自信を育む、S:定量スコアでフィードバックし満足感を得る。この4要素で学習を設計すれば継続は格段に容易になります。

挫折は誰にでも起こる
英語学習で挫折を感じるのは、誰にでも起こり得ることです。特に日本人の多くが、同じような悩みを抱えているでしょう。英語を習得する上で最も重要なのは「継続」です。

過去のQ&A「英会話教室に週1回通い始めて3年になります。しかし、いまだ英語が話せるようになりません」でも解説したように、日本人が英語を習得するには、少なくとも2,200時間以上の学習が必要だといわれています。では、どうすれば学習を継続できるのでしょうか。

学習継続の鍵は「ARCSモデル」
学習を継続するためには、学びのフレームワークを意識して「学びをデザインする」ことが重要です。そのための有効な理論のひとつが、インストラクショナルデザインの「ARCSモデル」です。このモデルは学習者のモチベーションを高め、効果的な学習を促進することができます。

ARCSモデルは、以下の4つの要素で構成されています:

  • ・Attention(注意)
  • ・Relevance(関連性)
  • ・Confidence(自信)
  • ・Satisfaction(満足感)
これらの要素を英語学習に応用した具体例とともに解説していきます。
  • ・Attention(注意)——興味で学習に引き込む 学習者の注意を引きつけるには、興味を持てる教材を活用することが有効です。例えば、映画や音楽を学習に取り入れる方法があります。

    私自身、25歳でソフトバンクに転職した際、孫正義氏の秘書として英語が必要でした。そのとき、映画『ウォール街』を教材にシャドーイング学習を行いました。この映画では、マイケル・ダグラスが投資家ゴードン・ゲッコーを、チャーリー・シーンが若手証券マンのバド・フォックスを演じています。

  • ・Relevance(関連性)——自分事として捉える 学習内容が自分にどのように役立つかを理解することは非常に重要です。英語学習では、学ぶ内容を旅行やビジネスなど具体的な場面と結びつけることで、学習者のモチベーションを高めることができます。

    私の場合、映画『ウォール街』に登場する投資家ゴードンと若手証券マンのバドの関係を、孫正義氏と自分の関係に重ね合わせ、バドに自分を投影してシャドーイングを行っていました。独学でも、自分が実際に英語を使うシーンを具体的に想定して教材を選びましょう。

  • ・Confidence(自信)——段階的に難易度を上げる
    学習者が自分の能力に自信を持てるよう、学習内容は段階的に難易度を上げていくことが重要です。例えば、まずは短いフレーズを繰り返し練習して定着を確認し、その後、英会話レッスンで実際にアウトプットする演習に進むと効果的です。

  • ・Satisfaction(満足感)——成果を可視化する
    適切なフィードバックを受けることで、達成感を実感しやすくなります。また、スコアの向上や成功体験を積み重ねることで、自信を深めることが大切です。
「i+1」の法則で適切な教材を選ぶ
ポイントは、あまりにハードルの高い挑戦は避けることです。インストラクショナルデザインではこれを「i+1」の概念で説明しています。「i+1」とは、米国の言語学者スティーブン・クラッシェンが提唱した「インプット仮説」の一部で、学習者が現在理解できるレベル(i)より少しだけ難しいレベル(+1)の学習内容を提供するという考え方です。

TORAIZでは、シャドーイングにおいて特に「i+1」を重視しています。文字ベースではその単語や文法が完全に理解できることを前提に教材を選定します。なぜならシャドーイング自体が「少しだけ難しいレベル(+1)」に該当すると考えるためです。独学でも同様に、理解できる単語や文法を前提に教材を選ぶことが重要です。

具体的には、玉井健氏の『改訂新版 決定版 英語シャドーイング【超入門】』(コスモピア)がおすすめです。英文は中学レベルの文法と単語で構成されており非常に取り組みやすい一方、内容は日常会話から海外旅行、ビジネス、海外ニュースまで幅広くカバーしています。シャドーイングで「英語の口」をつくる入門教材として最適と言えるでしょう。

定量的なフィードバックで満足感を得る
TORAIZでは、コンサルタントが学習者に対して言葉で定性的なフィードバックを行っています。しかし、より重要なのは、英語力の向上を数値で確認できる定量的なフィードバックです。学習の進捗を客観的に把握するためには、TOEIC L&Rや英ピアソン社のVERSANTスピーキングテストなどを利用し、スコアで成果を確認することをおすすめします。スコアが上がった際には、自分自身を「よくやった」と褒めることも大切です。

また、ARCSモデルを活用することで、学習者のモチベーションを高めながら英語力を効率的に伸ばすことができます。まずは、自分の学習をARCSモデルに沿ってデザインし、学習をスタートしてみてください。そうすることで、継続することがずっと容易になるでしょう。応援しています。

Q.102


30代 IT企業勤務

TOEICで800点を目指すためのリーディング強化方法はありますか?

転職のためにTOEICスコアを800点台まで上げたいのですが、集中力と忍耐力が必要なリーディングが苦手です。途中で内容を忘れたり分からなくなったりして、最初から読み返すことがよくあります。どのように対策すればよいでしょうか?

A.

結論:TOEICのリーディングで特にPart7で安定してスコアを上げるには、①単語力の強化、②文章構造を意識した読み方、③問題を先に確認してから本文を読む、の3つを意識することが重要です。

「読んでいる途中で内容を忘れたり、分からなくなったりして、最初から読み返す」という状況から考えると、リーディングの中でも特に「Part7」が課題となっているのではないでしょうか。

Part7は試験の最後の方に出題されるため、集中力や忍耐力が低下しやすいタイミングで解くことになります。そのため、残り時間が少ない中で、慌ててマークシートを埋めることに終始してしまう受験者も少なくありません。

まずはPart7形式の問題を解いてみてください(問題はChatGPTで制作しました。解答はこの記事の最後に掲載します)。

E-mail:
From: Michael Lee (mlee@xyzelectronics.com)
To: All Staff
Subject: Upcoming Office Renovation
Date: November 1, 2024

Dear Team,

I hope this message finds you well. I wanted to inform you about the upcoming renovations to our main office, which will begin on November 15 and continue until December 20. During this time, we will be updating our workspace to create a more comfortable and efficient environment for everyone.

Here are some key points to keep in mind during the renovation period:

  • The office will be closed every Friday to allow contractors uninterrupted access to the premises.
  • On other weekdays, certain areas may be temporarily restricted due to construction work. We are arranging alternative workspaces on the 3rd and 4th floors for any staff who need a quiet space to work.
  • Please let me know if you need any additional equipment or if there are specific requests you would like us to consider.
Thank you for your cooperation and understanding. We are looking forward to a better workspace for everyone.

Best regards,
Michael Lee
Office Manager
XYZ Electronics

問題
問1: When will the office renovation begin?
(A) November 1
(B) November 15
(C) December 20
(D) Every Friday

問2: What is the main purpose of the E-mail?
(A) To announce the closure of the office
(B) To request equipment for staff
(C) To inform staff about the office renovation
(D) To introduce new workspaces on the 3rd and 4th floors

問3: According to the E-mail, what will happen every Friday during the renovation?
(A) Staff will work from home
(B) Contractors will have access to the office
(C) The office will open as usual
(D) Staff must use alternative workspaces

いかがでしたか。この問題文を使って、Part7をマスターするための3つのポイントを解説します。

1. 単語力を上げる
Part7では、文章の内容を正確に理解するために一定レベル以上の単語力が必須です。
この問題文で最もレベルの高い単語は “renovations” です。日本語では「リフォーム」にあたるこの単語は、最近では日本語でも外来語として使われることが増えています。しかし、オンライン英和辞書「Weblio」では英検1級以上の単語に分類されています。

もし “renovations” の意味がすぐに分からなければ、Eメールの主題をつかむことは非常に難しくなります。もちろん、文章を読み進めることで文脈から理解できる場合もありますが、そのためには “construction” や “restricted” といった後続の単語も知っておく必要があります。ちなみに “construction” は英検準2級レベル、 “restricted” は英検2級以上の単語とされており、これらを知らなければお手上げです。つまり、まずはTOEIC 800点を目指す単語集を頭に入れることが重要です。

2. 前から後ろに読み進める
読んでいるうちに内容を忘れたり混乱したりする原因の多くは、英語の語順を無視して日本語の語順で訳そうとすることです。英文は「前から後ろ」に一定の意味の単位で区切って理解することで、内容を追いやすくなります。

例:
"During this time, we will be updating our workspace to create a more comfortable and efficient environment for everyone."

という文章であれば、以下のように読み進めます。
/ During this time, / we will be updating our workspace
この期間中、/ 私たちの作業スペースを更新します
/ to create a more comfortable and efficient environment / for everyone
より快適で効率的な環境をつくるために / すべての人にとって

不定詞や前置詞など意味のまとまりで区切り、英語の語順のまま理解することで、行ったり来たりして読まなくても内容がすっきり頭に入ります。

3. 問題を先に確認して本文を読む
最後に、Part7では本文を読み始める前に、まず問題文をチェックして「何が問われているか」を把握しておくことが効果的です。本文を読む際に、答えを意識しながら読むことで、行ったり来たりする回数が減り、集中力を保ちながら正確に解答できるようになります。

まとめ
・単語力を強化する
・英語の語順で文章を理解する
・問題を先に確認して本文を読む

これら3つのポイントを意識してTOEIC対策を行ってください。きっと結果に結びつくはずです。応援しています。

Q.103


30代 飲食店勤務

ビジネス英会話を話せるようになるには、TOEIC L&Rを受験した方がよいですか?

職業柄、訪日外国人(インバウンド)のお客様に接客する機会が増えています。日常会話はある程度理解できますが、うまく「聞けない・話せない」と感じています。TOEIC L&Rの参考書に出てくるビジネス英会話も学びたいのですが、TOEIC L&Rを受験した方がよいでしょうか?

A.

結論:TOEIC L&Rの受験はビジネス英会話の基礎固めに有効ですが、実務で使う場面を想定した学習も並行することが重要です。

日常英会話、店舗実務での英会話、ビジネス英会話の違いは?
私はこれらを次のように整理しています。

日常英会話 【語彙】
日常生活で頻繁に使われる基本的な単語や表現が中心です。たとえば「買い物」「食事」「趣味」など、日常活動に関連する単語が多く含まれます。ただし、趣味や関心分野によって使われる語彙は大きく異なり、専門的な話題になるほど難易度は上がります。

【フレーズ】
短くシンプルなフレーズが多く、カジュアルな言い回しやスラングも含まれます。たとえば「What’s up?(どうしたの?)」「Sounds good!(いいね!)」のように、親しい関係で使われる表現が多く見られます。文法が省略される場合や独特な表現が使われることもあり、学習者を混乱させる要因の一つです。

【フォーマルさのレベル】
基本的にはカジュアルでフレンドリーな表現が中心です。フォーマルさはあまり必要なく、リラックスした会話が一般的です。ただし、相手との関係性や状況によっては、適切なフォーマルさを意識する必要がある場合もあります。

店舗実務での英会話 【語彙】
店舗やサービス業で使われる専門的な語彙が多く含まれます。たとえば「お会計(Payment)」「レシート(Receipt)」「返品(Return)」「割引(Discount)」など、接客の現場で登場する単語が頻繁に使われます。また、サービス業特有の言い回しや丁寧な表現も含まれます。ただし、使用される語彙の範囲は比較的限られています。

【フレーズ】
接客用の定型表現や丁寧なフレーズが多く用いられます。たとえば「How may I help you?(いかがなさいますか?)」や「Would you like a bag?(袋はご入用ですか?)」など、お客様対応に即した表現が多くなります。マニュアル化されている表現も多く、比較的習得しやすいのも特徴です。

【フォーマルさのレベル】
基本的に丁寧で礼儀正しい言葉遣いが求められます。カジュアルすぎず、過度にフォーマルでもない、敬意を持った言い回しが主流です。お客様とのやり取りでは、常に礼儀を重んじる表現を意識することが必要です。

ビジネス英会話 【語彙】
ビジネスシーンで使用される専門的な語彙が多く、業界特有の用語も頻繁に使われます。たとえば「契約(contract)」「プレゼンテーション(presentation)」「交渉(negotiation)」「締め切り(deadline)」といった単語です。分野によっては非常に高度な専門用語が必要となる場合もあります。

【フレーズ】
礼儀を重んじたフォーマルな表現が基本です。たとえば「Could you please provide more details?(詳細を教えていただけますか?)」や「I would appreciate it if you could…(していただけると幸いです)」のように、丁寧な依頼や提案を行うフレーズが多く使われます。明確かつ正確な表現が求められます。

【フォーマルさのレベル】
全体的にフォーマルで礼儀正しい言葉遣いが望まれます。過剰に堅苦しい表現は避けつつ、相手への敬意を込めた丁寧な言葉遣いが求められます。状況に応じて適切な表現を使い分ける能力が重要です。

英語学習の難易度
この違いを踏まえたうえで、英語学習の難易度を整理すると、私の経験上、最も難しいのは日常英会話です。次に難しいのがビジネス英会話、そして最も取り組みやすいのが店舗実務での英会話になります。

店舗実務とビジネス英会話の共通点
店舗実務の英会話とビジネス英会話は、語彙・フレーズ・フォーマルさのいずれの点でも共通点が多く、レベルは近いです。語彙は限定された専門用語が中心で、フレーズも定型表現が多く、フォーマルさも丁寧な言い回しが求められる点で似ています。ただし、ビジネス英会話は扱うテーマが多岐にわたり、より複雑な内容に触れる場合もあります。そのため、店舗実務経験者にとっては比較的取り組みやすいものの、さらなる学習が必要になります。

日常英会話の難しさ
一方、日常英会話は語彙・表現・フォーマルさのいずれにおいても、店舗実務やビジネスで使われる英語とは異なります。特に語彙の幅は広く、話題によっては非常に多様です。

例えばスポーツについて話す場合、日本人なら相撲が例に上がることもありますが、米国人ならアメリカンフットボールやバスケットボール、英国人ならクリケットやサッカー、オーストラリア人ならラグビーなど、国や文化によって話題は異なります。こうした場合、ルールや専門用語を知らなければ会話についていくことは難しいでしょう。
さらに、日常会話ではフォーマルさがあまり要求されないため、文法が崩れた表現やスラング、イディオムも頻繁に登場します。教科書的な学習だけでは対応が難しいのが現実です。 。

今回のご質問では、「日常会話はある程度理解できるが、TOEIC L&Rで学ぶようなビジネス英会話を習得したい」とありました。ここで言う「日常会話」とは、実際には「インバウンドの外国人客との接客での英会話」、つまり店舗実務での英会話を指している可能性が高いです。

効果的な学習方法
店舗実務とビジネス英会話は類似しているため、学習方法も共通です。重要なのは、自分がビジネスで使う具体的な場面を想定して学習することです。
・会議での自己紹介
・プレゼンテーション
・メール対応
・電話応対
具体的な場面を意識して練習することで、より実践的な英語力が身につきます。

TOEIC L&Rの活用法
「ビジネス英会話習得のためにTOEIC L&Rを受験したほうがよいか」という点についてですが、TOEIC L&Rの受験勉強はビジネス英会話の基礎固めとして有効です。特にリスニング・リーディング力の向上や、ビジネスで必要な語彙・表現を体系的に習得するのに役立ちます。

ただし、TOEICの試験対策だけでは不十分です。自分がビジネスで実際に使うシーンを想定した具体的な学習、ロールプレイングやオンライン英会話の活用も併せて行うことで、実践的な会話力を磨くことが大切です。

まずは具体的な目標を設定し、一歩ずつ着実に学習を進めていきましょう。応援しています。

Q.104


30代 メーカー勤務

Google翻訳、ChatGPT、DeepL。ビジネスで使うのに精度が高いのは?

最近では、英語の翻訳アプリが広く普及しており、私も仕事でGoogle翻訳を活用しています。しかし、精度にやや不安を感じる場面があります。完全な誤訳ではないものの、意味がやや不明瞭になることがあるからです。最近では、ChatGPTやDeepLなどのツールも便利だと聞きます。これらはGoogle翻訳に比べて精度が高いのでしょうか。また、それぞれのアプリの特徴についても知りたいです。?

A.

結論: ビジネス用途ではDeepLが最も有効です。理由は、単語選択も文章構造も原文のニュアンスまで忠実に反映するためです。Google翻訳は海外旅行やメール・チャットなど短文には十分ですが、文化的背景や文脈を含む長文には不向きです。ChatGPTはこなれた英文を生成しますが、確率論ベースのため原文の構造や厳密さが犠牲になることがあります。それぞれの特性を理解し使い分けることが重要です。

AI翻訳ツールの得意・不得意を理解する
AI翻訳の精度が飛躍的に向上している現在、各サービスには得意・不得意があり、それを理解したうえでうまく活用することが重要です。今回は、日本語から英語への翻訳を想定し、「Google翻訳」「ChatGPT」「DeepL」の3つのサービスの特徴と違いを解説します。

Google翻訳:短文には十分、長文には不向き
まず、Google翻訳についてです。ChatGPTやDeepLと比べると、業務で扱う長文の翻訳にはあまり向いていません。海外旅行や、仕事であってもメール・チャットなど短文の翻訳であれば十分な精度を発揮します。しかし、ある程度の文化的背景や文脈に依存するニュアンスを含む長文では不自然さが出やすく、形容詞のかかり方などが不正確だったり、違和感のある文章になったりすることがあります。

DeepL:文脈を含む長文に強い
この点において、DeepLは非常に優れています。文化的背景や文脈を踏まえたニュアンスを含む長文でも、より正確な翻訳が可能です。特に専門的なビジネス文書や学術的な日本語においても、自然で適切な英語表現に変換してくれます。

ChatGPT:流暢だが厳密さに欠ける
では、ChatGPTの場合はどうでしょうか。文章生成の仕組みが確率論に基づいているため、比較的自然で読みやすい翻訳が可能です。その一方で、元の文章の構造や正確性が多少損なわれることがある点には注意が必要です。

実例で比較する
ツールごとの違いをより明確に理解するために、実際に日本語の文章を英語に翻訳して比較してみましょう。翻訳に使用する日本語の文章は、以下の通りです。

原文:
自然豊かな環境と歴史的価値の高い建造物が共存する地域は、多くの観光客に感銘を与える。

Google翻訳:
The region, where a rich natural environment and buildings of high historical value coexist, impresses many tourists.

DeepL:
Areas where nature-rich environments and buildings of high historical value coexist are a source of inspiration for many tourists.

ChatGPT:
Regions where rich natural environments coexist with historically significant buildings leave a strong impression on many tourists.

翻訳の質を分析する
これらの翻訳例を分析してみましょう。どのツールも英語として大きな誤りはありませんが、やはり表現の精度や自然さには差があります。

Google翻訳の課題
英語としての意味は正しいのですが、問題は主語の選び方です。Google翻訳では主語が「The region」となっています。"region"という単語はかなり広い範囲を指すため、「自然豊かな環境と歴史的価値の高い建造物が共存する地域」という限定的なニュアンスには少し広すぎる印象です。

DeepLの優位性
主語は "Areas" で、この "Areas" を修飾するのが "where nature-rich environments and buildings of high historical value coexist" という形容詞節です。この形容詞節では、"nature-rich environments" と "buildings of high historical value" の2つの名詞句が同じレベルで "and" によって並置され、主語を説明しています。

この点から、元の日本語「自然豊かな環境と歴史的価値の高い建造物が共存する地域は」の構造をそのまま英語に置き換え、ニュアンスも正確に表現していると言えます。

ChatGPTの限界
まず主語ですが、ここでは "Regions" が用いられています。先にDeepLの例で触れた通り、よりニュアンスに近いのは "Areas" です。続く形容詞節では "rich natural environments" が主語となっており、意味自体は通ります。しかし、「自然豊かな環境」と「歴史的価値の高い建造物」が同列に並んでいないため、元の日本語文が持つニュアンスとはやや異なる印象を与えます。ChatGPTの翻訳はこなれた感じの英文になりますが、そのぶん文章の正確さや厳密さが犠牲になっている場合も少なくありません。

ビジネスシーンではDeepLを推奨
これらの結果から見ても、ビジネスシーンで最も活用しやすい翻訳ツールはDeepLだといえるでしょう。単語の選び方や文構造が原文の意図やニュアンスまで高い精度で反映されている点が大きな強みです。

ぜひ一度、翻訳したい文章を3つのツールで試し、その違いを比較してみてください。きっと同様の傾向が確認できるはずです。AIが日常的に活用される今だからこそ、それぞれのツールの特性を理解し、業務の質と生産性向上にうまく活かしていただければと思います。応援しています。

Q.105


30代 医療関係勤務

外国人社員の面接、文化の違いを乗り越える方法を教えてください

外国人社員の採用面接を担当することになりました。私の会社では日本語と英語の両方を使用しており、ビジネス英語での対応が求められます。そこで、応募者の英語力だけでなく、スキルや経験を正しく評価するための質問の組み立て方や、面接の進め方、注意すべきポイントについて知りたいです。特に、文化の違いによって生じるコミュニケーションのずれを防ぐための具体的な方法を教えてください。

A.

結論: 成功の鍵は3段階のアプローチです。①英語力は客観テストまたはネイティブ評価に任せる、②面接では「STARメソッド」で具体的な行動と成果を引き出す(Situation/Task/Action/Resultの4段階質問)、③最重要なのが採用後の研修・フィードバックで日本のビジネス文化を丁寧に伝えること。面接で完璧を求めるのではなく、採用プロセス全体で文化ギャップを埋める設計が定着率向上の決め手です。

文化ギャップが最大の課題
多くの日本企業が外国人社員の採用を進める中で、採用手法や採用後のマネジメントに課題を感じている担当者は少なくありません。中でも最大の課題は、あなたが挙げた「文化の違いによるコミュニケーションギャップ」です。このギャップが原因で、入社後の定着率が下がったり、モチベーションの低下や早期離職につながったりするケースも多く見られます。

当社でも外国人社員を積極的に採用していますが、事業開始当初は文化の違いに起因する問題が頻発していました。しかし、10年にわたる経験を通じて多くを学び、現在では面接前のスクリーニングから面接、採用後の研修やフィードバックに至るまで、採用プロセス全体を見直すことで、こうした問題の発生を大幅に減らすことができています。

英語力は客観評価に任せる
まずは「語学力の評価」です。英語が母国語でない日本人が面接時に判断するよりも、客観的な英語力テストを受験してもらう方がより正確な評価が可能です。または信頼できる英語ネイティブ話者に評価を依頼するのも効果的な方法です。

面接はSTARメソッドの活用がおすすめ
面接では、海外で広く活用されている「STARメソッド」を取り入れることをおすすめします。STARメソッドとは、応募者の主観的な意見や意識ではなく、過去の具体的な行動に基づいて質問し評価する面接手法です。

面接では、海外で広く用いられている「STARメソッド」を導入することをおすすめします。STARメソッドとは、応募者の主観的な意見や意識ではなく、過去の具体的な行動や実績に基づいて評価する質問手法です。

具体的には以下の4段階で質問を組み立てます。
・Situation(状況): 困難な状況に直面したときのエピソードを尋ねる
・Task(課題): その状況下でどのような役割を担っていたのかを尋ねる
・Action(行動): 具体的にどのような行動を取ったのかを尋ねる
・Result(結果): 行動の結果、どのような成果を得られたのかを尋ねる

次に、面接で実際にどのような質問を投げかけるかの例を紹介します。各ステップごとに3つずつ質問例を用意していますので、状況に応じて選んで活用してください。

1. 具体的な状況(Situation)を設定する
質問を通じて応募者が具体的な状況を説明できるようにすることがポイント。

例:
・Tell me about a time when you had to manage a project with a tight deadline. What was the situation?
・Can you describe a situation where you had to handle a difficult customer complaint?
・Give me an example of a time when you worked in a team to achieve a goal under pressure.

2. 役割や課題(Task)を明確にさせる
応募者がその状況で自分が果たすべき役割や課題を明確に説明できるように、質問を具体的に設計する。

例:
・In that situation, what was your role and what responsibilities did you have?
・What was your specific task in handling the situation?
・When you faced that challenge, what were you accountable for?

3. どのような行動を取ったか(Action)を深掘りする
応募者が実際にどのような行動を取ったのかを明確に引き出すため、行動に焦点を当てた質問をすることが重要。

例:
・What actions did you take to resolve the situation?
・How did you approach the task or challenge?
・What steps did you take to overcome the problem?

4. 結果や成果(Result)を強調する
最後に、応募者がどのような成果を上げたのかを引き出すため、行動の結果を具体的に尋ねる。この部分が重要で、応募者がどのように成果を出したのか、またその結果がどの程度の影響をもたらしたかを知ることができる。

例:
・What was the outcome of your actions?
・Can you share the results of your efforts?
・How did your actions contribute to the overall success or failure of the project?

STARメソッドを活用することで、応募者の具体的な行動や成果に基づいた客観的な評価が可能になります。抽象的な意見交換を避けられるため、面接官と応募者の双方にとって、特に母国語が異なる場合に有効なコミュニケーション手法となります。

採用後の研修・フィードバックこそ最重要
最後に触れたいのは「採用後の研修・フィードバック」です。これは外国人社員の定着を促すうえで非常に重要な工程であり、私は最も重視すべきフェーズだと考えています。
理由は明確です。語学力が高くても、文化的な違いは必ず存在します。日本人にとっては当たり前のことでも、外国人社員にとっては理解し難い場合があるのです。そのため、日本企業特有の文化やビジネスマナーを理解してもらうための研修や、定期的なフィードバックを通じて、職場へのスムーズな適応をサポートすることが重要です。

例えばトライズでは、英語のネイティブコーチに対して「日本人の信頼を得るためには絶対に時間厳守」といった研修を徹底しています。また、レッスンごとに受講生からの評価を収集し、文化的な理解が必要な場合はメンターが解説する仕組みを整えています。

採用プロセス全体で文化ギャップを埋める
外国人社員の採用では、面接だけでなく、採用プロセス全体を通して「文化の違いによるコミュニケーションギャップ」を解消する工夫が不可欠です。ここで紹介したポイントを参考に、採用活動を成功させてください。応援しています。

Q.106


30代 メーカー勤務

音声のみの英語の会議で正しく理解してもらうための進め方を教えてください

海外の顧客と電話など音声のみで会議を行う場面があります。特に技術的な内容を詳しく説明する必要がある場合、専門用語を適切に使いつつ、相手に正確に理解してもらうことが重要です。こうした会議をスムーズに進める方法や効果的なフレーズ、さらに相手からの質問に的確に答えるためのポイントについて教えてください。

A.

結論: まず電話からZoom/Teamsなど映像付きオンライン会議ツールへ切り替えてください。海外では既に標準です。その上で3つの準備が鍵。①英語アジェンダを事前送付し時間配分を共有、②よく使うフレーズ集を手元に置く(参照は自由)、③使用予定の図やウェブ資料を事前に開いて即共有できる状態に。会議中は専門用語ごとに平易な説明を添え、理解度を随時チェック。質問は1問ずつ受け、聞き取れない場合は"If I understand correctly..."で確認しましょう。

映像も表示できる会議ツールに変更を
海外との非対面コミュニケーションの難しさは身に染みて理解しています。表情が読めず、図も描けず、苦労は絶えません。私自身、ソフトバンクで働いていた時代に台湾メーカーと品質管理について英語で協議した際、スピーカーフォンの前で途方に暮れた経験があります。
ところが現在、そうした苦労はほぼ消失しました。英語力が飛躍的に向上したわけではありません。電話の代わりにZoomやTeamsといった映像・音声統合型ツールに切り替えたからです。加えて入念な準備を習慣化したことも大きい要因です。

まず認識を改めてください。電話という選択肢を捨て、映像を伴うオンライン会議ツールへ完全移行しましょう。コロナ禍で日本でも浸透しましたが、海外ではさらに普及しています。躊躇は無用です。

それでは映像ツール活用を前提に、どのような準備が必要か解説します。

準備1:英語アジェンダを事前送付
会議前にアジェンダを英文で作成し、参加者へ配布してください。これにより各議題の時間配分目安を事前に共有でき、認識のズレを最小化できます。英語での明示的なアジェンダは、コミュニケーションエラーを未然に防ぐ第一歩となります。

準備2:カンニングペーパーを作る
会議中に使用頻度の高いフレーズを「虎の巻シート」として書き出しておきましょう。試験ではないので、このシートを手元に置いて参照することに何の問題もありません。むしろ推奨します。

準備3:資料を即座に共有できる状態に
会議で必要になりそうな資料や図は事前に開いておきましょう。対面ならホワイトボードに描くような図は、スライド化しておきます。ウェブ上の情報なら、ブラウザで該当ページを開いた状態で待機します。これらを必要なタイミングで即座に画面共有できる態勢が重要です。

専門用語は必ず説明と確認を
実際の会議運営で最重要なのは、専門用語の理解度確認です。相手が専門家でも、意図を正確に伝えるには専門用語に平易な説明を添え、理解を確かめながら進行することが重要です。

例えば技術用語や概念に言及する際は、必ず補足説明を入れます。以下のようなフレーズが有用です。

・"Let me explain this concept briefly."( この概念を手短に解説します)
・"This term refers to..."(この用語は...を指します)
・"In simple terms, it means..."(簡単に言えば、これは...という意味です)
・"To give you an example..."(例を挙げると...です)

一方的に話し続けるのではなく、本当に相手が理解しているかを確認することも重要です。オンラインツールを使っても画面越しですからやはり口頭で確認すべきでしょう。このような場合には次のような言い回しがお薦めです。

・"Does this explanation make sense?"(この説明でお分かりいただけますか?)
・"Would you like me to elaborate on this point?"(この点についてもっと詳しく説明しましょうか?)
・"Shall I go into more detail here?"(ここでもう少し詳しくお話ししましょうか?)

焦る必要は皆無です。相手の理解状況を見極めながら、落ち着いて自信を持って話を進めてください。

質問対応の実践テクニック
相手の質問へ的確に応答するコツは2点あります。

1:質問は1問ずつと宣言する
質問は1つずつ受け付けると最初に宣言しましょう。複数の質問を連続する人がいますが、質問の焦点がぼやけるリスクがあります。
質疑セッション開始時に以下のように告げてください。

・"To answer clearly, please ask one question at a time." (明確に答えたいので、一度に1問でお願いします。)
・"To give clear answers, I'd like to ask you to ask one question at a time." (明確に答えるために、一度に1問ずつお聞きくださるようお願いします。)

2:聞き返すフレーズを活用
質問が聞き取れない、または趣旨が不明瞭な場合もあるでしょう。しかし慌てる理由はありません。日本語でもそうした状況はありふれています。遠慮なく聞き返してください。以下のフレーズが便利です。

"Thank you for your question. If I understand your question correctly, you're asking about..." (ご質問を正しく理解しているとすれば、...についてお尋ねですね。)

この表現で確認することで、自分だけでなく他の参加者も質問の意図を明確に把握できます。結果として会議自体の目的の達成度や参加者の納得度が向上します。

オンライン会議は準備が9割
オンライン会議ツールを活用し、入念な準備を施せば、英語での会議も恐れる必要はありません。自信を持ってチャレンジしてください。応援しています。

Q.107


20代 マスコミ勤務

IELTS 6.0から7.0を目指しています。何時間学習すれば届きますか?

将来的に米国の大学院でMBA取得を目指しており、IELTSを受験しています。2か月前に受験した際のオーバーオールスコアは6.0で、今月再受験してもスコアは同じ6.0でした。その間、毎日2時間程度の学習を続け、問題集にも取り組んで臨んだのですが、スコアが伸びずショックを受けています。オーバーオール6.0から7.0にスコアを上げるには、どのくらいの学習量が必要でしょうか。このままではIELTS学習のモチベーションを維持することが難しいと感じています

A.

結論: 6.0から7.0への到達には約500時間の学習が必要です。トライズの調査(受験経験者306人対象)では、6.0→6.5で平均233時間、6.5→7.0で平均235時間かかりました。あなたの2カ月・毎日2時間の学習は計120時間。0.5スコアアップに必要な233時間にすら届いていません。毎日3時間なら6カ月、毎日2時間なら12カ月が目安です。推奨戦略は、総学習500時間到達時点で2〜3回連続受験すること。試験には運の要素もあるためです。

スコアが伸びないのはあなただけではない
まず、IELTS受験者はみな同じように、スコアアップに苦心しています。留学や就労のためにIELTSを受ける人で、順調にスコアが伸びる人などほとんどいません。誰もが同じ壁に直面しています。

トライズでは、日本人IELTS受験者のスコアアップに必要な学習時間を調査しました。ネット調査で、調査対象は20代から60代のビジネスパーソンおよび学生306人です。

調査結果:スコアアップには相当な時間が必要
結果は明確でした。IELTSスコア向上には相当な学習時間が不可欠です。
調査対象者のIELTS受験開始時の平均スコアは5.55。スコアアップのために投じた平均学習時間は306.8時間で、学習後の平均スコアは5.85でした。スコアは容易には伸びないことが分かります。

ielts平均学習時間
トライズ調べ
内訳を見ると、学習時間が100〜300時間未満が37.6%で最多ですが、300〜500時間が26.8%、500時間以上が14.7%。両者を合わせると40%以上が300時間を超える学習を行っています。

あなたの2カ月・毎日2時間の学習は、60日換算で計120時間。決して多いとは言えません。IELTS攻略には時間がかかるのです。

6.0から7.0への道のりは険しい
あなたの現在のスコア6.0に焦点を当てて分析しましょう。調査対象のうち、6.0→6.5へスコアアップした人は6人(サンプル数が少ないため参考値)で、その平均学習時間は233時間でした。同様に6.5→7.0へスコアアップした人は10人で、平均学習時間は235時間でした。これらのことから考えると、6.0→7.0へのスコアアップには約500時間が必要ということです。

この結果から判断すると、あなたの2カ月間の学習で結果が出なかったのは当然とも言えます。仮に毎日3時間熱心に学習をしていたとしても、2カ月60日で総学習時間は180時間。0.5スコアアップに必要な233時間にすら到達していないのです。

現実的な学習計画を立てる
毎日どの程度学習するかによりますが、仮に毎日3時間学習するとしても、スコアを0.5上げるには学習開始から3カ月、1.0上げるのに6カ月程度はかかる計算になります。

1日の学習時間を2時間とし、土日は予備日や休日とする無理のない学習計画なら、スコアを0.5上げるためには学習開始から6カ月、1.0上げるには12カ月と、1日3時間学習の倍の期間がかかることになります。実際、多忙な社会人が自己学習する場合は、このくらいの学習強度で計画する方が現実的です。

受験タイミングの戦略
学習計画を立てる際には、受験のタイミングも非常に重要です。IELTSは受験料が税込で約2万5,380円からと高額であり、試験自体も面接を含めると半日以上かかります。そのため、気軽に受けるのは難しいのが現実です。

とはいえ、実際に受験することで試験に慣れる効果があり、学習のモチベーション維持にも役立つマイルストーンとなります。ただし、スコアが思うように伸びない場合は、逆にモチベーションが下がってしまうリスクもあります。

推奨戦略:500時間到達後に連続受験
私が推奨したいのは、まず学習時間を500時間で計画し、その中で確実に6.5を取ることを目標にすることです。まずは語彙力を増やすことを中心に、着実に実力を積み上げていきましょう。

詳しくは、過去のQ&Aでも解説しています。あわせてご覧ください。
Q&A「海外の大学院でMBAを取得したく、IELTSのスコアをどう上げればよいか教えてください。」

そして総学習時間が500時間に達した段階で、2~3回連続で受験することをお勧めします。連続受験を推奨する理由は、試験には運の要素もあるため、1回だけで期待通りのスコアが出るとは限らないからです。

もちろん、大学院の志望締め切りとの兼ね合いも考慮して学習計画を立てることが重要です。大学院留学のためにはIELTSのスコア取得以外にも、履歴書やエッセーの作成、推薦状の依頼など、やるべきことは多くあることも忘れないでください。

着実な学習が必ず結果を生む
IELTSはスコアアップが難しい試験ですが、実力がつけば必ずスコアは上がります。しっかりと計画を練って着実に学習していってください。応援しています。

Q.108


20代 IT企業勤務

スマートフォンアプリでシャドーイング学習を始めましたが挫折気味です。どうすれば習慣化できますか?

最近、シャドーイング用のスマートフォンアプリを使って独学で英語学習を始めました。アプリを活用すれば費用を抑えられる点が魅力ですが、毎日続けるのが難しく、最近は挫折しそうな状況です。学習を習慣化したいのですが、そのためにはどうすればよいでしょうか?

A.

結論:成功の鍵は「きっかけの設定設定」です。習慣は単独で成立せず、必ず「引き金となる行動」とセットで機能します(米南カリフォルニア大学ウッド教授)。既に自動化している日常行動(歯磨き後、ニュース閲覧後、SNSチェック後など)の直後にシャドーイングを配置し、このパターンを反復してください。習慣化までの期間は平均66日(英ロンドン大学ラリー教授)。約2カ月間、トリガーと学習をワンセットで継続すれば、意志力不要の自動行動へ移行します。

アプリ学習の利点と落とし穴
少し前まではシャドーイング用アプリは限られていましたが、現在では多様なアプリIT業界にお勤めとのことで、アプリベースのシャドーイング学習を選択されたのですね。数年前までは選択肢が限られていましたが、今や多彩なアプリやサブスクサービスが手頃な価格で利用できる時代になりました。
低コストで場所を選ばず学習できる反面、継続困難という致命的な弱点も抱えています。この課題をどう克服するか。答えはあなたが指摘された通り「習慣化」にあります。ではその「習慣化」とは何を意味するのか、考えてみましょう。

習慣とは「きっかけ」への「反応」
米南カリフォルニア大学のウェンディ・ウッド教授らの論文「習慣の心理学」によれば、習慣とは「学習によって形成された自動的な反応」とされています。

Psychology of Habit:Wendy Wood and Dennis Runger(Psychology of Habit:Wendy Wood and Dennis Runger(https://www.annualreviews.org/content/journals/10.1146/annurev-psych-122414-033417;jsessionid=SdbqzyB7h_Vr8qWL5VkF_UBBuu58iaVQwBW8H7kr.annurevlive-10-241-10-84

論文では、習慣は「意識的なコントロールを必要としない自動的な動き」であり「パターン学習された自動的反応」であると定義されています。

これには重要なポイントが2つあります。

ポイント1:習慣は「反応」である
1つ目のポイントは、習慣は「反応」だという点です。ウッド教授らは、習慣には「文脈的なきっかけ」が必要であると指摘しています。
「映画館に行けばポップコーンを食べる」という習慣を例に取ると、「映画館に行く」という行動が「文脈的なきっかけ」となり、「ポップコーンを食べる」という行動(反応)が引き起こされているのです。つまり習慣とは単独の行動ではなく、特定のきっかけと結びついて成立するものなのです。

ポイント2:パターン学習で形成される
2つ目のポイントは、「きっかけ」と「習慣化された行動」の関係は、物事を繰り返し学ぶ「パターン学習」によって形成されるという点です。人は「映画館に行く→ポップコーンを食べる」というパターンを繰り返すことで、両者の結びつきが強化され、習慣となるのです。したがって習慣化には、パターン学習が不可欠です。

既存の習慣を「きっかけ」に設定する
この「習慣」のメカニズムを踏まえると、スマートフォンアプリによるシャドーイング学習を習慣化するには、どのようにすればよいでしょうか。
効果的なのは、すでに習慣化され毎日必ず行っている行動の1つを「文脈的なきっかけ」として設定し、その行動直後に必ずアプリでシャドーイング学習することです。

具体例を挙げましょう。毎朝スマートフォンでニュースをチェックすることが日課なら、ニュースをチェック直後に短時間でも必ずシャドーイング学習をすると決めます。LINEやインスタグラムをチェックした後に、シャドーイング学習をするというルールにするのも有効です。

スマートフォンとは直接関係のない行動を「きっかけ」にすることも可能です。歯磨きをした後に必ずシャドーイング学習をする、入浴中にシャドーイング学習をするといった方法もあります。防水非対応端末の場合は、ビニール袋で保護するなどの工夫が必要ですが。

習慣化には平均66日かかる
きっかけを設定することで、習慣化が容易になるはずです。残るは無意識に実行できるようになり、完全に習慣化するまで続けるだけです。
この期間がどれくらいかかるかについては、英ロンドン大学のフィリップ・ラリー教授らが興味深い研究を発表しています。96名の被験者が、食事・飲み物の摂取または活動のいずれかを選択し、それを同じ状況(例:朝食後)で毎日実行するよう12週間取り組みました。被験者は毎日自己報告の形で実行状況を記録しました。

この実験サンプルを基にモデルを作成して行った分析によると、新しい習慣の形成に要する日数は18日から254日と幅があり、平均すると66日でした。つまり習慣化には約2カ月を要するということです。
なおこの研究では、単体の行動を繰り返すだけでなく、「朝食後」といった特定の行動を「文脈的なきっかけ」とすることを前提にしています。

自分に合った「きっかけ」を見つける
まずはご自身の生活パターンの中から、シャドーイング学習を習慣化しやすい「文脈的なきっかけ」を探してください。その行動直後にシャドーイング学習をすることで、効率的に習慣化できるはずです。応援しています。

Q.109


40代 不動産会社勤務

英検準1級合格に向けた学習時間と、最近導入された「英検CSE(Common Scale for English)スコア」という尺度について教えてください

息子は現在中学3年生で、すでに英検2級に合格しています。大学入試で英語の加点や試験免除の可能性を考えると、英検準1級を早めに取得しておくほうが良いのではないかと考えています。ただ、英検準1級は難易度が高いと聞きます。具体的にはどの程度のレベルで、合格するためにはどのくらいの学習時間が必要なのでしょうか。また、最近の英検では「級」に加えて「英検CSE(Common Scale for English)スコア」という新しい評価尺度が導入されていると聞きました。これはどのようなものなのでしょうか?

A.

結論:英検準1級は大学入試で極めて有効です。主要大学は「級」ではなく「CSEスコア」で評価する傾向が強まっています。CSEスコアは4技能を数値化する指標で、早稲田(文・文化構想)は2200以上で英語試験免除、慶應(文)は2500以上で免除です。2級から準1級への到達には学校外で約150時間の学習が必要で、これは級間で最も時間がかかります。毎日1時間で約半年。複数回受験を見越し、今から計画的に取り組むべきです。

英検による入試対策は堅実な戦略
大学入試において英検による加点を狙うのは、非常に堅実な受験対策と言えます。入試本番は後がありませんが、英検は何度でも受験できるため、早期から準備して複数回チャレンジすることで良い結果を得られる点が大きな魅力です。

近年、主要大学が単に「級」だけで評価するのではなく、「英検CSEスコア」(以下、CSEスコア)という指標を重視する傾向が強まっています。2015年導入のこの指標は、あなたの世代では馴染みが薄いでしょう。CSEスコアの戦略的活用法と準1級到達に要する時間を解説します。

CSEスコアとは何か
CSEスコアとは、日本英語検定協会が2015年度に導入した「英語能力を数値で評価する指標」です。
従来の合否判定から一変し、リーディング・リスニング・ライティング・スピーキングの4技能を個別数値化します。技能別スコアの合算が総合評価となり、自身の強みや弱みを把握しやすくなりました。これにより受験者は自身の成長を客観的に確認し、目標を設定しやすくなっています。

各級に配点基準が設定されています。準1級は4技能合計3000点満点で評価され、1次試験は2250点中1792点で合格ラインをクリアします。

またCSEスコアは国際的な英語能力指標であるCEFR(欧州言語共通参照枠)にも対応しています。英検準1級はCEFRのB2、2級はB1に相当し、留学や海外試験の参照基準としても機能します。国内評価が国際評価と直接比較可能になったのです。

このスコアシステムの導入により、英検は単なる合否判定の試験から、受験者の継続的な学習を支援するツールへと発展しました。とくに技能ごとのスコアが明示されることで、受験者は自身の弱点を明確にし、効率的な学習設計が可能になります。

リスニングのスコアが低い場合は、その分野を重点的に強化することでバランスの取れた英語力を身につけることが可能です。こうした具体的な指標が得られる点は、CSEスコアの大きな利点です。

主要大学はCSEスコアで英語試験を免除
大学にもよりますが、CSEスコアを入試に利用する大学も数多くあります。
慶應義塾大学文学部では、2025年度から「英語外部試験」が利用できるようになり、英検CSE総合スコア2500以上(受験級・合否不問)で慶應義塾独自の英語試験が免除されます。

早稲田大学文学部・文化構想学部では、CSEスコア2200以上かつ4技能の各スコア500以上(受験級・合否不問)であれば、英語を受験する必要がなく、国語・地歴の2教科の合計点で合否判定されます。

こうした動向を受け、大学入試対策として英検を受験する傾向が強まっています。トライズの調査では、英検受験者の2割超が入試利用目的と回答しました。

大学受験 英検の優遇措置
要求水準は相当高い
ただし要求水準は相当高いことに留意してください。早稲田(文・文化構想)のCSE2200は準1級合格点2304をわずかに下回る水準。慶應(文)のCSE2500は1級合格点2630に肉薄する難度で、容易に到達できません。この観点から、準1級を第一目標とする戦略は妥当です。

2級から準1級へは約150時間必要
2級保有者が準1級到達に要する時間について、トライズで調査を実施しました。結果、準1級合格者の学習時間は平均約150時間でした。
英検学習時間
この150時間は通常授業に上乗せする英検対策としての学習時間です。注目すべきは、2級→準1級が全級間移行で最長時間を要するという事実です。準1級の壁が如何に厚いかを物語っています。

150時間を1日1時間ペースで消化すると約5カ月。複数回受験を想定すれば、現時点から綿密な計画立案が不可欠です。息子さんと志望大学・学部を選定し、要求されるCSEスコアを調べた上で、計画的に英検を受験してください。息子さんの挑戦を応援しています。

Q.110


30代 メーカー勤務

海外の顧客から英語でクレームが届いた場合、どのように対応すればよいでしょうか?怒りを鎮め、問題を適切に解決するための謝罪の仕方やその後の対策について、誤解を防ぎつつ誠意を伝える方法を教えてください。

A.

結論:海外のクレーム対応では、安易に謝罪せず、顧客の感情に寄り添いながら事実確認を重視することが重要です。感情的対応・法律的対応・ビジネス的対応を切り分け、必ず社内と連携して対応しましょう。メールで慎重にやり取りし、上司や法務部の確認を経て行動することが信頼回復につながります。

日本ではまず低姿勢で謝罪することが多いですが、海外では不用意な謝罪が法的リスクを伴う場合があります。過去には小さなトラブルが巨額の賠償請求につながった事例もあり、誠意を示しつつ慎重に対応する必要があります。

対応の基本方針は次の三点です。

1.顧客の感情に寄り添う
2.法律的判断は法務部と連携する
3.ビジネス面の合理性は上司と相談する

一人でリスクを抱え込まず、会社全体で責任を分担することが大切です。

初動では、口頭やオンライン会議ではなくメールでのやり取りを推奨します。口頭対応は記録として残るため、リスクが高くなるからです。

メール作成時には、次の4ステップを押さえましょう。

1.共感を示す
顧客の不快感に寄り添う。
例:We completely understand how disappointing this must have been.

2.状況を報告する
調査を進めていることを伝える。
例:We take this matter seriously and are already looking into what went wrong.

3.ネクストステップを伝える
上司や法務部と確認中であることを明示する。
例:Let me check the details with our team and get back to you as soon as possible.

4.感謝で締めくくる
待ってもらっていることに感謝を示す。
例:Thank you again for your patience and understanding while we work to resolve this.

メール草案は必ず法務部のリーガルチェックを受け、上司の承認を経て送信しましょう。
一次対応後は、社内で事実関係を精査し、会社としての方針を早急に確定して顧客に伝えることが重要です。この段階では、感情的ケアよりも具体的行動で誠意を示すことが信頼回復につながります。
海外クレーム対応は、英語表現力だけでなく、異なるビジネス文化を理解し、組織として対応する姿勢が鍵です。個人で抱え込まず、部門横断的に協力して対応することで、顧客との関係を守りつつリスクを最小化できます。