三木雄信に聞く!あなたのナゼ?に答えます!

Q.071


30代 会計事務所計コンサルタント

M&A業務に必要な英単語、効率的に覚えるには?

会計の勉強に集中してきたため英語学習ができていませんでしたが、今後M&A案件を担当する可能性があります。単語を覚えるのが特に苦手です。効率的に覚える方法を教えてください。

A.

結論:実務で使う専門用語を分野別にリスト化して覚える方法が最も効率的です。基礎3000語は既に習得済みと思われるため、M&A関連の専門用語をフレーズとセットで覚えましょう。実務での重要性が高く記憶に定着しやすくなります。TOEIC目標がある場合のみ、レベル別学習を優先してください。

専門分野での学習経験を活かせる
プロフェッショナルは専門分野の学習に集中する必要があるため、英語学習が後回しになりがちです。しかし安心してください。ある分野でしっかりした学習経験がある人は、その経験を活かして他分野でも効率的に学べる可能性が高いといわれています。

あなたの場合、学習計画を立てる際に最も大事なのは、「企業からTOEIC L&Rスコアの基準を要求されているか否か」です。会計事務所系のコンサルティングファームなら、具体的なスコアより実務で使えることを求められているのではないでしょうか。まず実務重視と仮定して解説します。

必要な単語数の目安
大学受験では共通テスト対策で4000〜5000語、私立難関大学で5000〜6000語、国公立難関大学で6000〜7000語が必要です。
しかし実際には、英オックスフォード大学出版局が選定した「Oxford 3000」のように、基礎単語3000語ほどで英語を話すことができます。ウクライナのゼレンスキー大統領もOxford 3000プラスアルファレベルの単語で英語スピーチを成り立たせています。

おそらくあなたも3000語レベルは達成済みでしょう。その場合、単語帳を使った学習法はあまり効果的ではありません。その理由を図で説明します。

下の図はIT(情報技術)関連、財務・会計関連、製造業関連、医療・製薬関連の分野別に英単語レベルを構造化したものです。各分野の単語をOxford 3000、TOEIC L&R 600点、800点、それを超えるレベルに分けています。単語集の中から、分野・レベル別に単語を抽出して作成しました。

分野・レベル別の英単語の構造
財務・会計関連でよく使われる単語「budget(予算)」は一般的に、Oxford 3000に含まれると同時に、TOEIC L&R 600点レベルの単語として分類されます。TOEIC L&Rで600点を取るには5000語が必要とされているため、あなたも自身の専門分野においては、このレベルの単語を押さえていると考えられます。

2つの学習法の選択
単語学習法は主に2つあります。

1.レベル別学習: TOEIC L&R 800点を目指してレベル別に覚える
2.分野別学習: 自分がよく使う単語を分野別にリスト化して一気に覚える

推奨するのは2つ目です。財務・会計でよく使われる「budget(予算)」はOxford 3000かつTOEIC 600点レベルですが、あなたは既に知っているはずです。
TOEIC 800点レベルの「revenue(収益)」も、あなたには既知の単語でしょう。さらに800点を超えるレベルの「amortization(償却)」も、短縮形「アモチ」としてビジネスシーンでなじみがあるのでは。まだ知らなくても、M&A業務なら最重要単語です。

フレーズで覚える効果
仕事で使う単語をリスト化すれば覚えやすく、実務にすぐ活かせます。さらに単語だけでなくフレーズで覚えると効果的です。

例: 「I would like to confirm about the amortization period.(償却期間を確認したい)」

レベル別学習の非効率性
レベル別学習を採用すると、「allergy(アレルギー)」や「specification(仕様書)」など会計分野にあまり関係ない単語も覚えることになります。実務で使わない単語は、重要性を認識しにくく出現頻度も低いため記憶に定着しにくいのです。

TOEICのスコア目標がないなら、分野別に自分が使うものを一気に覚える学習法を推奨します。単語集はレベル別が多いため、自分で分野別に高レベルの単語を選んでいくことになります。

TOEIC目標がある場合
もしTOEIC L&Rのスコア目標があるなら、目標に合った単語集を使うことをおすすめします。一般的に1000単語で100点スコアが上がるといわれています。必要なスコアを取ってから専門分野の単語を学びましょう。

まずは英単語についても学習目標を明確にすることが重要です。ぜひそこを押さえて学習計画を立ててください。応援しています。

Q.072


40代 メーカー勤務

中高年からの英語学習は、今さら遅いでしょうか?

会社の海外事業拡大で英語研修に参加することになりましたが、中高年になると脳機能が低下するため、今さら英語を習得するのは難しいのではと思い、モチベーションが上がりません。どうすればよいでしょうか?

A.

結論:英語習得能力は60歳まで年齢とほぼ無関係です。脳は老化する一方で、機能維持のため他の部位を活性化させる補完機能があります。中高年は単純暗記より、仕事やゴールに沿った実践的なアウトプット中心の学習が効果的です。年齢を気にせず自信を持って取り組んでください。

ミドル層の英語力不足が課題
海外展開に力を入れる企業が増えています。特に国内市場中心だった食品や飲料関連企業が目立ち、中堅以上の幹部社員への英語研修も増加しています。
こうした企業でよく課題となるのは、若手はある程度英語が話せるが「マネジメントの中心にいるミドル層の英語力が足りない」ことです。会社は英語研修に力を入れますが、受講する多くのミドル層があなたのような悩みにぶつかります。

このような相談を受けたとき、私がアドバイスするのは「人間の脳機能は60歳くらいまで若い頃と変わらない。むしろそれ以上活発になっている場合がある」ということです。

科学的に証明された脳機能の持続
確かに成人後の第二言語習得には限界があり、特に発音矯正のハードルは高いです。しかし発音以外なら、成人後の英語学習は20代でも50代でも差がないことが科学的に明らかになりつつあります。英語以外の学習全般や業務能力も同様に、20代と50代であまり差がないと言えるでしょう。

学習や業務能力に大きく差が出る理由は年齢ではなく、「適切な学習を行ってきたか否か」の差にすぎないのです。

人間の脳機能について調査・研究した米ワシントン大学のK・ワーナー・シャイエらの「シアトル縦断研究」があります。約5000人を対象に半世紀以上追跡調査した大規模研究で、1956年から2005年まで7年ごとに計8回実施されました。

脳の認知力と年齢の関係
この研究では、脳の認知力を6つの観点で調査しています。「帰納的推論力(Inductive Reasoning)」「空間認知力(Spatial Cognition)」「認知速度(Perceptual Speed)」「計算能力(Numeric Ability)」「言語能力(Verbal Ability)」「言語暗記能力(Verbal Memory)」です。

人間の脳機能を6つの観点から見た場合、60歳までは大きく低下していないことが分かる。「Developmental influences on adult intelligence: The Seattle Longitudinal Study, 2nd ed.」から引用

結果を見ると、25歳から60歳まで総合的には「人間の脳機能はほぼ低下しない」と言えます。しかも年齢が上がるにつれ「帰納的推論力」「認知速度」「言語能力」「言語暗記能力」「空間認知力」は上昇しています。

一方で「計算能力」は下降していますが、他の能力に比べて英語学習への影響は小さいため、語学習得は「60歳前後まで年齢は関係しない。むしろ年齢が高くなるほど能力が上昇する」という見方ができます。

中高年は脳の使い方が進化している
カナダ・トロント大学のシェリル・グレディー博士による興味深い研究もあります(※)。高齢者は加齢で記憶処理をつかさどる側頭葉内側部の活性がなくなると、若年層が使っていない脳の他の部位を活性化させて作業を達成させようとすることを明らかにしました。

また若年層は脳の左右どちらかのみを使うことが多いのに対し、中高年は左右の脳を同時に使っており、活用する部位が多いほどいい結果を出すことにも言及しています。

※引用、翻訳元
Functional brain imaging and age-related changes in cognition : Cheryl L. Grady

中高年に効果的な学習法
これらの研究から分かるのは、「中高年の英語学習は単純な暗記ではなく、自分の仕事やゴールに沿った学習目標を設定し、それに合った教材を選定する。さらに実践的かつ応用的なアウトプットを中心に行うことが効果的」だということです。

40代のあなたが今から英語を勉強することに、年齢を気にする必要はありません。会社から英語学習を通して今後の活躍が期待されていると解釈し、自信を持って取り組んでください。応援しています。

Q.073


20代 IT企業勤務

洋楽が好きなのですが、英語学習の教材として洋楽を聴くことは効果があるでしょうか?

A.

結論:洋楽は英語学習に効果的です。ただし効果の大きさは「学習ゴールが何か」によって異なります。学習習慣づくり、実用的な単語やスラングの習得、発音やリズムの理解に有効ですが、洋楽だけでは不十分です。最終的には自分のゴールに合わせた教材へ移行する計画が必要です。

洋楽学習の成功事例
以前、シャドーイング教材として洋楽を使いたいという受講生がいました。その方の学習ゴールは「英語話者の同僚と英語でコミュニケーションを取りながら業務を行うこと」だったため、洋楽が妥当かどうか議論はありましたが、本人の強い希望でこの方法を採用しました。

結果、この学習方法は非常に効果的でした。学習開始から1カ月後、VERSANTスピーキングテストの語彙分野で37点から55点へ18点もアップ。最終的にVERSANTテスト全体で47点に到達し、TOEIC L&Rのリスニングでスコアが130アップしました。

洋楽学習が成功した3つの理由
1.学習習慣づくりの発火剤
英語学習を始めたばかりのときは、学習時間の確保が難しいものです。社会人が本格的に学習するには、朝早く起きたりランチを短くしたり飲み会の頻度を落としたりする必要があります。習慣化するまでが大変ですが、好きな歌手の曲をシャドーイング教材に使えば楽しく続けられます。習慣化できたら、本来のゴールであるビジネス英語の教材に移行すればよいのです。

2.実用的な単語力の強化
洋楽の歌詞にビジネス直結の単語が少ないのは事実ですが、教材には載っていない流行語やスラングなど、日常で使われる単語やフレーズを覚えられます。

3.発音とリズムの理解
洋楽には歌詞の英語に合ったメロディーやリズムがあります。日本人歌手の多くが日本語を英語のように発音しているのは、洋楽風のメロディーやリズムに乗せるためです。桑田佳祐さんの歌い方が「英語っぽい」と感じるのは、「た」の発音を「t」に近い音で発音しているからです。

4.ヒップホップ教育の研究事例
洋楽を活用した発音学習の事例を紹介します。米ハーバード教育大学院(HGSE)のヒップホップ教育会議で、米ASAカレッジのクリスチャン教授が「Why Hip Hop for ELLs - Christian Perticone(https://www.youtube.com/watch?v=riADDWlrD_0)」と題したプレゼンテーションを行いました。

このプレゼンテーションでは、ネイティブ話者でない人が英語の発音を学ぶ際、ヒップホップがどう役立つかを説明しています。グループやクラスで洋楽をみんなで歌うと一体感が生まれ、学習モチベーションを高めると解説しています。

つまり洋楽を歌うことは、シャドーイングと同等かそれ以上の効果が期待できます。実際、TORAIZのコンサルタントの中には大学時代にヒップホップを教材に英語の発音やストレス(強弱)、リズムなどを学んだ人もいます。

洋楽だけでは不十分
洋楽を学習教材として活用することは、「英語学習の習慣づくり」「実際に使われる英単語の習得」「英語のイントネーションやリズムの理解」に有効です。

ただし重要なのは、洋楽を使った学習にとどまらず、その先にある「自分自身の学習ゴール」に合わせた教材のロードマップをつくることです。
例えば、グローバルなメンバーと英語でコミュニケーションするプロジェクトやファシリテーションを行うなら、洋楽以外で環境に適した単語やフレーズを学ぶ必要があります。逆に文法や語彙が中学レベルに達していない場合は、追加的に中学レベルの総復習をしましょう。

まずは洋楽から英語学習を始めることに賛成です。きっと楽しく学習を開始できるでしょう。応援しています。

Q.074


30代 食品系企業経営

英語プレゼンで説得力を出すコツを教えてください。

食品会社を経営しており、アジアでの販路拡大を検討しています。英語でのプレゼン力が求められますが、ネイティブではないため説得力あるプレゼンができる気がしません。英語でのプレゼンやスライドを作るコツを教えてください。

A.

結論:結論から始めるエレベーターピッチ形式が効果的です。重要なのは「1スライド・1イメージ・1メッセージ」で相手の感情を動かすこと。会社紹介ではなく「自社商品のオファー」を冒頭に置き、質疑応答を重視しましょう。英語力より英語を使ったコミュニケーションが本質です。

スライドは結論から始める
現在はどのようにスライドを作っているでしょうか。会社概要や沿革など、いわゆる会社紹介から始めていませんか。日本語で作ったスライドをそのまま翻訳すると、このパターンになりがちです。

私が英語・日本語を問わずプレゼンのスライドを作る際に参考にしているのは、ソフトバンクグループ創業者・孫正義氏が使用していたスライドです。実は私自身、かつて孫氏のかばん持ちをしており、実際にプレゼン用のスライド作成にも携わっていました。

孫氏のスライドは基本的に米国式のスタイルで構成されており、日本語であっても英語であっても、その形式はほとんど変わりません。ここでは、その特徴について具体的にご紹介します。

スライドは結論から入ることが重要です。あなたにとっての「結論」は「自社商品のオファー」ではないでしょうか。例えば「航空便を使うことで自社商品を小ロット・短納期で鮮度を維持しながら他社より10%安価に提供できる」など。この結論をスライドの表紙の次に表示するのが効果的です。

結論から入るスライドを米国では「エレベーターピッチ」と呼びます。スタートアップの起業家が出資や提携相手に、エレベーターに乗っている数十秒間でプレゼンするシーンを想定したやり方です。私自身も孫氏から「結論から言え、結論から」と徹底的に言われていました。

私は日ごろ、日本企業が米国のIT(情報技術)企業にプレゼンする会議に同席することがあります。こうした場面で会社紹介から始めるスライドを見せると、相手は数分もたたないうちに興味を失ってスマートフォンを見るようになります。日本人の感覚では失礼極まりない態度ですが、彼らは会社概要や沿革に全く関心がないことを正直に表しているのです。

心をつかむスライド作り3つのポイント
1.相手の悩みを想定したオファーを冒頭に
表紙の次に来るスライドで商談相手の心をつかむような要素を入れることです。相手が今抱えている悩みを把握し、これならば乗ってくるだろうというオファー内容を示します。そのためには商談相手を調べて、相手の悩みを想定したオファー内容を考えることが求められます。

2.1スライド・1イメージ・1メッセージ
英語に自信がないと、伝えたい内容の全てを1枚のスライドに詳しく書いて読み上げたくなります。しかしスライドに多くの要素が書かれていると、相手はスライドの内容に集中してしまい、話を聞かなくなる可能性があります。

プレゼンではキーになるメッセージを簡潔に伝え、相手が興味を示したり質問してきたりしたことに対して深掘りして説明することが重要です。優れたプレゼンは相手の感情を動かすことに焦点を当てているため、スライドに書かれる文字量は多くありません。

人はプレゼンを聞くとき、まず感情が動き、その結果プレゼン内容に興味を持って集中し、次のアクションを起こします。心が動かないと話を聞く気にならないのです。1スライドごとに相手の感情を動かすようなイメージを1つ盛り込み、メッセージがより伝わるよう心がけてください。

英語に自信がないなら、多くのプレゼンアプリに搭載されているノート機能を活用しましょう。補完する情報や想定される質問の回答を英語と日本語両方で盛り込み、実際のプレゼンで発表者ビューに表示して必要に応じて読み上げれば、不安要素は軽減されます。

3.質疑応答を重視する
日本では商談でも大人数が出席するプレゼン会議でも、あまり質問が出ません。しかし海外では多くの質問が飛び交うことが一般的なため、プレゼンと質疑応答が同じくらい重要視されているといっても過言ではありません。

英語で質問を受けるときに聞き取れるかどうかも不安要素になりますが、そこまで気にする必要はありません。もし聞き取れなくても「もう一度ゆっくり話してください」と伝え、その内容を自分の言葉に言い換えてしっかり理解し、ノート機能にまとめた想定質問の回答を見ながら回答すればよいのです。

場合によっては、質問された内容を柔軟に解釈して回答してもかまいません。例えば「日本人にとって最も効率的な学習法は何か」と聞かれたとき、その回答を用意していなくても、「中高まで一般的な英語学習をしていた人向けの学習方法は何か」という想定質問を用意していたなら、回答内容はほぼ同じです。質問内容通りの回答を用意していなくても、臨機応変に解釈すれば焦らず回答できます。

重要なのは英語力というより英語を使ったコミュニケーションです。ぜひ、ご紹介した方法でスライドを作ってみてください。販路拡大の成功を期待しています。

Q.075


30代 大学勤務

子どもに英語環境を与えるベストな時期は何歳ごろでしょうか?

小学3年生の子どもがいます。私自身が海外特別研究員になる可能性があるため、子どもにも海外で英語環境に触れさせたいと思っています。何歳ごろからネイティブスピーカーが話す英語に触れさせるのがよいでしょうか。

A.

結論:中学受験をするなら中学入学後に中学英語の基礎を習得し、中2か中3から2年間海外へ。受験しないなら高校入学後、1年生の夏休みから海外に行くパターンが理想です。小学生での渡航は英語嫌いや日本語力の遅れ、受験準備の遅延などリスクが大きいため避けるべきです。

海外特別研究員派遣のタイミングと課題
海外特別研究員の派遣期間は基本的に2年間です。その間に子どもの英語力はある程度上がりますが、大切なのは「帰国後に英語力が定着するかどうか」です。ここでは任期後日本の大学に戻ることを前提に話します。

例えば来年渡航する場合、お子さんは小学4年生です。基礎的な英会話ができるなら渡航後、スピーキング力やリスニング力はある程度上がるでしょう。年齢が低いため正しい発音を理解する能力も高く、ネイティブ話者の英語力に近くなる場合もあり得ます。しかしいくつかの問題があります。

小学生での渡航の2つのリスク
1.英語嫌いになる可能性
海外ではネイティブでも理解できるような英語を深く理解する必要があり、楽しさより勉強という側面が大きいため、お子さんによっては抵抗感があります。せっかくの渡航なのに、それが原因で英語が嫌いになってしまったら元も子もありません。

たとえ英語嫌いにならなくても、小学4年生ごろに海外へ行くと日本語の漢字や文法もまだマスターしていないため、日本語と英語両方ともがネイティブレベルになるにはかなり時間がかかる可能性があります。将来日本を中心に生活する予定があるなら、慎重に考える必要があります。

2.中学受験への影響
もし中学受験をするなら、小学3年生や4年生のときから進学塾に行き、入学試験の対策を徹底的に行うのがほとんどです。その期間海外にいたら受験準備が遅れてしまいます。

帰国子女向けの入試枠を用意している学校もありますが、求められる英語力はかなり高いです。例えば関東トップレベルの進学校は、高校入試に近い長文読解が出題されるといわれています。海外にいる2年間でそれくらいの英語力に達することは容易ではありません。

最適な渡航タイミング
これらの懸念点を考えると、もしお子さんが中高一貫校への進学を希望するなら、日本の中学入学後、可能な限り短期間で中学英語の基礎を習得し、中学2年生または3年生から2年間海外に行くのが理想です。単位の数え方が複雑になりますが、最近は海外から帰国後、留年という扱いにせず本来の学年に戻れる仕組みを採用している学校も増えています。

一方で中学受験をしないなら、日本の高校に入学し、1年生の夏休みから海外に行くパターンがあります。高校生にもなれば中学英語の基礎をベースに、海外でより効率的に学習できます。さらに日本語力もすでに身についているので、帰国子女によく見られる「英語はできるけれど日本語に自信がない」という状況に陥る可能性も低くなります。

ただしこの場合、高校受験のモチベーションが低くなったり高校の友人関係が希薄になったりすることも考えられます。大学受験の準備も短くなることを留意しなければいけませんが、2年以上海外での英語学習経験があるなら帰国子女枠で大学に進学することもできます。

仕事の都合もあると思いますが、中学2年から高校1年までに海外に行くことを軸に具体的に渡航を検討してみてください。お子さんにとっては素晴らしい機会です。よくご検討ください。応援しています。

Q.076


30代 メーカー勤務

TOEIC L&Rが高得点でも英語を話せない場合は、どのような学習が必要ですか?

TOEIC L&Rが700点台以下でも英会話できる人がいる一方、900点以上でも英語でコミュニケーションを取れない人もいます。TOEIC L&Rが高得点でも実務で英語を話せない人は、どのような学習やトレーニングが必要でしょうか?

A.

結論:話す能力を身につけるには、心理言語学的能力(流暢さ)、談話能力、社会言語学的能力、方略的能力が必要です。シャドーイング、パターンプラクティス、生身の人間との英会話レッスンを1日数時間行えば、3〜6カ月で成長を実感できるでしょう。

TOEIC L&Rが測る能力の限界
TOEIC L&Rで測っている能力は「英語を話せる(英語でコミュニケーションできる)かどうか」ではありません。
TOEIC L&Rで英会話スキルを知ろうとするのは、体重を知るために身長を測るようなものです。「身長が高い人は体重も重いことが多い」という一定の相関はありますが、体重を知りたいなら身長ではなく体重を測るべきですよね。

もし英語を話す能力を測りたいなら、TOEIC L&RではなくTOEIC Speaking & Writing Tests(TOEIC S&W)を受けるのが適切です。TOEIC S&Wは「話す」「書く」能力を測定するテストで、Speaking Testのみの受験も可能です。試験は実際のビジネスシーンに即した問題が中心で、円滑なコミュニケーション能力を複数の人間が評価します。

英語の実力を知るために大事なポイントは「目的に合わせてテストを選ぶこと」です。

コミュニカティブ・コンピタンスの5要素
TOEIC L&Rでどのような能力が測定できるかを知るには、米国の社会言語学者デル・ハイムズが提唱した「コミュニカティブ・コンピタンス」という考えが参考になります。これはシーンや会話内容によって適切な言葉を使いこなす能力のことで、主に以下の要素で成り立っています。

  • 1.文法能力: 多くの語彙や正しい文法、発音などを学び使いこなす能力
  • 2.心理言語学的能力: 話を聞いて即時に理解し発話して、違和感なく流暢に会話する能力
  • 3.談話能力: 単なる文の羅列ではなく、まとまっていて意味のある談話ができる能力。会話の中で空気を読んだり、会話の最後に「まとめると」で締めくくったりなど、自然な会話の流れをつくれるか
  • 4.社会言語学的能力: 特定の環境に合った適切な言葉を選択し使える能力
  • 5.方略的能力: 限られた文法能力でもコミュニケーションを円滑に行う能力。言いたいことを直接に示す単語が思い出せないとき、別の単語で言い換えたり、「それは〇〇ということですか」と聞き直したりできるか

この観点からすると、TOEIC L&Rが測定している能力は「1.文法能力」だと考えられるため、「話せる=コミュニケーションできる」の一部しか測定していないといえます。これがTOEIC L&Rで700点台以下でも英語を話せる人がいる一方、900点以上取っていても英語でコミュニケーションを取れない人がいる理由の1つです。

必要な学習法
すでに身につけている文法能力以外、つまり心理言語学的能力、談話能力、社会言語学的能力、方略的能力を習得する必要があります。

まず心理言語学的能力で大事なのは流暢に話せる能力で、シャドーイングやパターンプラクティスが有効です。
過去のQ&Aでそれぞれの学習法を紹介していますので、ぜひご覧ください。
Q&A「シャドーイングについていけません。効果を感じるのにどのくらい時間がかかりますか?
Q&A「ITのプロジェクトマネジメントを英語で行う自信がありません

よく課題として上がるのは談話能力、社会言語学的能力、方略的能力を身につける学習法です。これらの能力習得にAI(人工知能)を活用したサービスでチャットボットと英会話練習することも可能ですが、ビジネス英語レベルの学習ができるかは疑問です。

なぜならチャットボットが会話を理解できずに不機嫌になったり複雑な感情を持ったりする1つの人格として振る舞うことが難しいからです。

ビジネスシーンでも通用する英会話力を習得するには、さまざまなバックグラウンドを持つ「生身の人間」と自分が掲げている英語学習の目標にマッチした内容の英会話レッスンを受けることが大切なのです。

TOEIC L&Rが900点以上なら文法能力は十分あるので、これらの能力を身につけるにはそれほど時間はかからないでしょう。シャドーイング、パターンプラクティス、英会話レッスンなどの学習に1日あたり数時間ほど費やしたら、3カ月から半年で成長を感じられると思います。

ぜひこれを機にコミュニケーションを意識した英語習得にトライしてみてください。応援しています。

Q.077


20代 メーカー勤務

英語長文の速読力を上げるには、どのような学習が効果的ですか?

研究職で英語論文を頻繁に読みますが、将来は海外大学院に留学したくIELTS受験を予定しています。実務レベルの英語力向上とIELTS対策のため、英語長文を速読できるようになりたいです。どのような学習が効果的でしょうか?

A.

結論:ネイティブ話者の平均200〜250WPM(1分間に読める単語数)を目標にしましょう。効果的な学習は4つ: IELTS単語帳の丸暗記、スラッシュリーディング(返り読みをやめる)、スキミング(斜め読みで全体把握)、スキャニング(拾い読みで必要箇所を探す)です。これらを組み合わせれば実務とIELTSの両方で成果が出ます。

自分の速読レベルを把握する
速読はどれくらいの速さをイメージしていますか。英語の長文を読む速さはWPMという指標で表されます。「Words Per Minute」の略で、1分間に読める単語数のことです。例えば「200 WPM」なら1分間に200単語を読めるということです。

一般的にネイティブ話者の平均的なWPMは200〜250といわれています。一方、英語がネイティブでない日本人の平均的なWPMは80〜100です。

自分のWPMを知る簡単な方法は、WPM計測できる無料のWebサイトを利用することです。もし専門分野に関連する長文英語を読むWPMを知りたいなら、マイクロソフトのWordを使う手もあります。

手順は、WPMを測りたい長文をWordにコピー&ペーストし、「文字カウント」機能で「単語数」を把握します。長文を読み終えるまでの時間をストップウォッチで測り、最後に「単語数÷読了までかかった分数」を計算すればWPMが分かります。まずは自分のWPMを理解しましょう。

目標はネイティブ話者レベルの200〜250WPM
日本人はネイティブ話者の平均と同じ200〜250を目標にすることをおすすめします。このレベルに達していれば、IELTSのリーディングセクションの問題を試験時間内に終え、スコアアップする可能性があるからです。

自分の速読レベルを理解して明確な目標が見えたら、次は「どうすれば今のレベルと目標のギャップを埋められるか」を考えましょう。そのためには4つのポイントがあります。

速読力向上の4つのポイント
1. 必要最低限の単語を覚える
スピーキング力向上が目標なら、あえて単語暗記はおすすめしません。英会話レッスン中に分からない単語があったら聞き返して確認しながら覚えるからです。実際に使って覚えるほうが効率的です。

しかし英語長文のリーディングは英会話レッスンのように聞き返したり確認したりできません。辞書で逐一調べるとリーディング速度が遅くなり、WPM向上のトレーニングではなくなってしまいます。

IELTSの問題はさまざまな専門分野から出されるので、過去問を解いてもさまざまな専門分野の単語を自然に覚えるのは難しいでしょう。また、IELTSは難易度の高い単語がキーワードになっていることも多いため、その単語の意味が分からないと全体の文意が読み取れない場合もあります。

IELTS対策には、IELTS専門の単語帳を1冊丸ごと覚えるのが得点アップの近道です。例えば『実践IELTS英単語3500』(旺文社)は過去にIELTSで使われた単語を統計的に計算し、優先順位の高い3500単語を抽出しているため、丸暗記する単語集としておすすめです。

2. スラッシュリーディング 英語の文章の返り読みをやめるトレーニングです。英文の構造にしたがって接続詞や前置詞などでスラッシュを入れて英文を区切り、英文を前から意味のまとまりごとに読むトレーニングです。

例: I finally found the old house/ where my father was born and raised/ in very deep mountains.
訳: 私は古い家を見つけた/私の父が生まれ育った/深い山の中で

スラッシュリーディングをすることで、読むときの目線が行ったり来たりすることなく、前から後ろへ一方向に読み進められるためWPM向上が期待できます。さらに文章の構造を前提に読んでいくので、英文の根幹となる主語と動詞を明確に認識でき、英文の意味も把握しやすくなります。

3. スキミング
文章をざっと斜め読みして全体の流れをざっくりつかむ技術です。スキミングすると500WPM以上の結果が出ることもありますが、文脈を読み取れていない箇所もあります。

4. スキャニング
文章の中で自分の知りたい部分を探し出して拾い読みをし、該当する文脈をしっかり読み込む技術です。スキャニングはIELTSでかなり有効なテクニックです。試験問題の中に大文字で表記されている人名や固有名詞を探して、文章のキーとなる部分を把握したい場合に活用できるからです。

日本語でもキーワードになる漢字の部分だけを見て、文章の大意をつかんで速読するテクニックがあります。これと同じように、英語でもスキミングとスキャニングをうまく使いこなすことが仕事の効率を上げ、IELTSなどのテストスコアを上げるために有効なのです。

これら4つのポイントに気をつけて学習すると、求めている結果につながるでしょう。応援しています。

Q.078


40代 メーカー勤務

対面での質疑応答や雑談に自信がありません。どう対応すればよいでしょうか?

海外営業を担当しており、英語でのプレゼンは準備して対応できますが、質疑応答やプレゼン後の雑談、会食には自信を持てません。オンライン会議ではメモを見ながら対応できましたが、対面が増えて困っています。どうすればいいでしょうか?

A.

結論:質疑応答はハイブリッド型会議にしてQ&A機能で質問を受け付けましょう。テキストなら内容を理解しやすく、想定回答も確認できます。雑談や会食では自分から会話テーマを設定し、事前に単語やフレーズを準備。生成AIを使って英文を生成してキーワードをリスト化すれば、臨機応変に対応できます。

ハイブリッド型会議でQ&A機能を活用
プレゼン後の質疑応答には、オンライン会議のやり方を活用する方法をおすすめします。プレゼン中にオンライン会議ツールやチャットツールのQ&A機能で質問を受け付けるのです。

最近の会議は、会場で対面で行う場合でもオンライン配信を並行実施する「ハイブリッド型」が増えています。可能であれば会議主催者に「対面の会議での質問もオンライン会議で使用するQ&A機能で受け付けたい」と事前に申し入れましょう。そしてプレゼンの冒頭で「全ての質問をQ&A機能で受け付ける」と宣言するのです。

このやり方は英語だけでなく日本語でのプレゼンでも有効で、3つのメリットがあります。

  • 1.意見を言うハードルが手を挙げるより低いため、多くの質問が出る可能性が高い
  • 2.その場で質問を受け付ける場合、どのような質問内容かは指名してみるまで分からない。Q&A機能なら事前に質問内容を確認でき、どの質問から回答するか優先度を決められる
  • 3.似た内容の質問にまとめて答えられるので、質疑応答の時間を効率よく使える

英語でプレゼンする場合は、さらに多くの利点があります。
  • 1.口頭による質疑応答だと、なまりや話す速さなど教科書的でない英語のリスニングをこなさなくてはならない。日本人はそれが苦手。質問をテキストで受け付ければ内容を理解しやすい
  • 2.口頭では質問者が思いつくままに話すので内容がまとまっていないことがある。テキストなら口頭より整理され分かりやすくなることが多いので回答しやすい
  • 3.テキストによる質問なら内容を読みながら、さりげなく用意しておいた想定回答も確認できる

すでに英語でプレゼンができる程度のスキルがあるなら、この方法を活用することで自信を持って質疑応答にも対応できるようになるでしょう。

雑談は自分でテーマ設定する
英語での雑談と会食は、プレゼンの質疑応答とは異なる準備が重要です。事前に自分の持ちネタをつくっておくことを推奨します。なぜなら会話のテーマを受け身の状態で設定されたら、対応が難しくなるからです。

例えば、日本ではあまりなじみのない「クリケット」に関する話題を英語で突然振られて、即座に気の利いた返事をできる日本人はほとんどいないでしょう。プレー方法もルールも有名なチームも選手も分からないからです。

だから雑談や会食では、何を話すか受け身で待つのではなく、自分から会話のテーマ設定をしてしまうのです。例えば「業界の最新動向」「日本の最新トピック」「自分自身や家族について」など。これらについては事前にある程度の単語や言い回しを確認できる文章をつくっておくとなおよいです。

生成AIを使って準備を効率化
一から英文を自分で考える必要はありません。ChatGPTなどの生成AIを使えば設定したテーマで英文をつくってくれますし、その文章の中から単語やフレーズを抽出し、キーワードをリスト化することもできます。

実際、TORAIZでも一部のプログラムではChatGPTを活用し専門分野を学ぶレッスンを開始しています。例えばサッカー選手向けプログラムでは、ピッチ上でよく使うフレーズを100フレーズほどChatGPTで生成し、その中からさらに頻出する単語を単語集として教材化しています。

文章をそのまま暗記する必要もありません。むしろ単語やフレーズさえしっかり押さえて臨機応変に対応する心構えでいたほうが英語力の向上につながります。そして徐々に持ちネタのテーマを増やしつつ、使う単語数やフレーズ数も増やしていくのです。

これらを取り入れたら、自信を持って英語でのプレゼンや、それに伴う雑談、会食に臨めるのではないでしょうか。応援しています。

Q.079


30代 編集プロダクション勤務

大学受験以来英語に触れていませんが、外資系への転職は可能でしょうか?

外資系企業に転職したいのですが、大学では日本文学を専攻し、英語には大学受験以来ほとんど触れていません。こんな私でも外資系企業に転職することは可能でしょうか?

A.

結論:十分可能です。大学受験レベルの英語力があれば、1年1000時間の学習で日本にある外資系企業への転職が可能なレベルに到達できます。重要なのは明確なビジョンを持つこと、仕事以外の時間を英語にあてること、自分のレベルよりワンランク高い環境に身を置くことです。実務に生かせる教材選びも成功の鍵となります。

TOEIC550点台から1年で転職成功した実例
同様の悩みを持っていた学習者Mさん(仮名、20代)の実例を紹介します。本格的な英語学習を始める前、Mさんの英語力は決して高くありませんでした。英検2級、TOEIC550点ほどで、大学受験のために英語を学習し、その後は継続していない社会人の典型例といえるでしょう。

学習開始時に受けた英語スピーキングテスト「VERSANT(ヴァーサント)」のスコアは33点(GSE28点)でした。このレベルは自己紹介を英語ですることもおぼつかず、英語で会話のキャッチボールをするには難しいレベルです。

実際、転職を考えて学習を始めたときは英会話のグループレッスンについていけず、レッスン後に泣いてしまい精神的に落ち込んでいたようです。

しかし学習開始から1年後には英語の面接を突破し、外資系通信社への転職を成功させました。

成功のための3つのポイント
1.明確なビジョンを持つ
「将来、自分はどのようなビジネスパーソンになりたいか、明確なビジョンを持つこと」です。将来のビジョンが明確になるほど学習効率が向上することは、研究でも明らかになっています。

2.仕事以外の時間の多くを英語にあてる
Mさんは残業の多い職場でしたが、英語の学習時間を確保するため午前5時に起きて始業の午前9時まで勉強していました。ランチの時間を単語の暗記にあて、平日の就業後も休日も基本的に英語学習に費やしました。こうした生活を1年続けたのです。

3.コンフォートゾーンから抜け出す
英会話のレッスンは、自分のレベルよりワンランク高いレベルのクラスに出続けたそうです。このやり方は第2言語習得論でいう「i+1」理論と同じ考え方です。「i」は学習者の現在のレベルで「+1」はそれに加えてちょっと難しいレベルを学ぶべきだということ。この学習法は言語学習において理にかなっています。

実務に生かせる教材選び
単にTOEICやVERSANTテストのスコアを上げるためでなく、英語を使う職場への転職を前提に教材を選択することが大切です。

Mさんが使った教材は以下の通りです。
単語: 『新ゼロからスタート英単語 BASIC 1200』(Jリサーチ出版) - ネイティブ話者が使う実用的な単語
文法: 『深めて解ける! 英文法 INPUT』(学研プラス) - ネイティブ話者の思考レベルまで掘り下げた文法書
シャドーイング: 『瞬時にわかる英語リスニング大特訓』(ジェイ・リサーチ出版) - リンキングなどネイティブ発音を学ぶ
パターンプラクティス: 『英会話1000本ノック』(コスモピア) - 瞬発的に会話のキャッチボールをする訓練
英会話レッスン: 『StartUp Level 3 Student Book with Digital Resources & Mobile App』(ピアソン) - 日常会話やチャットなどインフォーマルなコミュニケーション

英語力向上に重要なマインドセット
Mさんは学ぶ姿勢以外にも重要なことがあると言います。
・英語を話すとき、間違っていても気にしない
・他の人が英語を話しているとき「この発音ができてない」など否定しない
・英語でディスカッションするとき、反対意見を言われてもネガティブに捉えない

お互いに発話することを避けないようにするためです。発音を過度に気にすると声が出にくくなりますし、相手から反対意見を受けたときにネガティブに捉えてしまうと、ますます発言しづらくなってしまいます。外資系企業で英語を使って活躍するためには、何よりも自分の意見に自信を持って発言する姿勢が欠かせません。

そのためにも、まず自分自身のビジョンを明確にすることから始めましょう。そして教材を選ぶ際には、そのビジョンに沿ったものを選ぶことが重要です。そうすることで学習の方向性がぶれず、着実に成果を得られるはずです。応援しています。

Q.080


30代 重電メーカー勤務

実務で英語を使わない今、将来に備えてどう学べばよいでしょうか?

現状、実務で英語を使う機会が全くありません。しかし所属企業は積極的にグローバル展開しています。将来を見据えてビジネス英語を習得するには、何に注意し、どのように取り組めばいいでしょうか?

A.

結論:まず自分のキャリアパスを明確にしましょう。学習ゴールと達成時期を決めることが最重要です。英語資格を追求するなら定期的に試験を受けて進捗を把握。実践重視ならChatGPTで分野別単語集を作成し、実務の音声や資料を教材化します。目標が明確でないと3カ月以上の継続は困難です。

なぜキャリアビジョンが先なのか
英語学習に限らず、何かを学ぶために最も重要なことは、ゴール設定です。行き先が決まらなければ、どの道を進めばいいか分かりません。

将来、グローバル人材として活躍したいなら、まず社内のキャリアパスを調べましょう。海外MBAプログラムへの派遣条件はIELTS7.0(英検1級相当)かもしれません。海外事業部への異動にはTOEIC L&R800点が必要かもしれません。

こうした情報を集めると、「2年後の社内選考までにTOEIC800点」といった具体的な目標が見えてきます。この明確さが、学習を継続させる原動力になるのです。

資格試験で実力を測る方法
目標スコアと期限が決まったら、まず現在地を知りましょう。自宅で過去問を解くのも良いですが、可能なら本番の試験を受けることをお勧めします。試験の雰囲気に慣れることができますし、最新の出題傾向も把握できるからです。
その後は数カ月ごとに定期受験し、学習の進み具合をチェックします。「計画通り進んでいるか」「軌道修正が必要か」を客観的に判断できます。

実務直結の学習アプローチ
資格試験にこだわらない選択肢もあります。試験対策用の単語集には「白血病(leukemia)」のような医学用語が含まれることがありますが、営業職には不要でしょう。

ここで活躍するのがChatGPTなどの生成AIです。「海外営業で商談時に使う頻出英単語100語」と指示すれば、自分の仕事に直結した単語リストが完成します。暗記のコツは、1日15語を完璧にするより、毎日100語を流し読みして1週間で定着させる方法です。

さらに効果的なのは、実際の業務資料を教材にすることです。上司の営業プレゼン資料、商談の議事録音声を文字起こししたもの——これらは「生きた教材」として最高の素材になります。

英会話レッスンでは、自分の業務内容を理解できる講師を選びましょう。毎回違う講師だと自己紹介ばかり上手になり、肝心の実務会話が身につきません。

挫折しないための心構え
学習の最大の敵は、モチベーション低下です。目標が曖昧だと、3カ月後には教材を開かなくなり、学習時間も不規則になります。
「3年後に海外事業部のマネージャーになる」「2年後のMBA留学を実現する」——こうした明確なビジョンがあれば、「そこまでは頑張ろう」と思えます。つらい時も、ゴールが見えているから踏ん張れるのです。

将来のために英語を学ぶなら、「自分自身のキャリアをどうしたいか」をまず考えてください。そうすれば、おのずと学習の道筋が見えてきます。応援しています。